再会 25 〜メイノーマとアイカペオラ〜
ジューネスティーンとシュレイノリアに技術的な担当を付けたからといって、メンバーの2人だけが指導に当たる訳ではなく全員が指導にあたる事になる。
ストレイライザーに剣を教えるのは、ギルドとの契約に沿っているが、ウィルザイアを技術的な担当としたのは、シュレイノリアの魔法紋のノウハウについては吸収したいという思いがあった。
そして、ストレイライザーは、子供が苦手というのはコミュニュケーション能力が低い事によるとセルレインは考えていた事もあり、ジューネスティーンと会話をする機会を増やしコミュニケーション能力を上げたいと剣の担当にした。
もし、ストレイライザーがジューネスティーンと全く話ができなかったなら、セルレインは、ジューネスティーンの担当にさせることは無かっただろうが、剣の試し斬りをする際に声をかけていたので、ジューネスティーンの剣を通じて話をするだろうと考えた。
2人には、剣という共通の話題があるなら、それを通じてストレライザーは、ジューネスティーンと言葉を交わす機会が増えると思われる。
先程のアジュレンのように、巧みな話術でメイリルダを納得させてしまうのも困りものなのだが、ストレイライザーは、目的の言葉は明確に言うのだが、どちらかというと報告的な事なら話すが雑談的な話は他のメンバーに比べると少ない。
そのような状態ではストレスが溜まるのではないか、話をさせることで発散させた方が良いとセルレインは考えていた。
メンバーの中でも大剣を使う事もあって、切込隊長としての役割が強いストレイライザーの精神状態を常に確認するためにも言葉数を多くさせれば微妙な変化も感じやすくなる。
言葉数の少ないストレイライザーを、ジューネスティーンと話をさせることによって、今までより話をさせられるようにする。
セルレインとしたら、黙っていられるメンバーより、少しでも言葉を発するメンバーの方が、精神状態を把握し易いこともあり、これを機会に多少の無駄話にも付き合うようなストレイライザーにしたいと思っていた。
それに完全に言葉を発しないわけではないので、今のストレイライザーの状況なら少しでも話す機会を増やすことで、少し位の無駄話にも付き合うようになってくれて、苦手意識を持っているなら多少でも緩和するのではないかと考えての人選だとメンバー達も納得した様子で聞いていた。
しかし、メイノーマだけは面白くなさそうに聞いていた。
子供好きのメイノーマとしたら、この決定は面白いものではなかった。
先程、自分が2人の担当するようにと言われたのに、魔法と剣について教えるようにと細かな担当を決められてしまったので、なんだか、自分の役目が薄くなってしまったように思えていた。
メイノーマは納得いかないという表情でセルレインを見ていた。
今まで、メイノーマは、2人に面会できるようにギルドに頼んでも全て断られていた事もあり、今回の依頼で念願の2人との再会となるので、2人と話す機会が増えて嬉しく思ったが、パーティーの戦闘に関する事については別の担当を付けられてしまったことで、自分は何を考えて接していけば良いのか気になっていた。
メイノーマは、自分が担当する事になったのに、剣と魔法については、別の担当が付いた事でガッカリした様子をしていたが、アイカペオラは、そんなメイノーマを困った様子で見ていたが、直ぐに近寄ってメイノーマの肩に手を置いた。
「メイノーマ」
声をかけると、悲壮感が漂う表情でメイノーマが視線を向けた。
なんとか我慢していたが、声を掛けられた事で自分の中で思っていた事が表情に現れてしまったようなので、アイカペオラは声をかけた事が失敗したかもしれないと思ったように表情を変えた。
ここまで落ち込んだようなメイノーマを落ちつかせる事ができるのか自信が無く、むしろ他のメンバーに変わってもらいたいとも思ったようだが、声をかけてしまった以上、ここで逃げるわけにはいかないと軽い決心をした様子で言葉を続けた。
「メイノーマは魔法も出来ないし、剣だってストレイライザーの方が上でしょ。これはギルドからの依頼をパーティーで引き受けているのよ。だから、それぞれの専門分野について担当を分けたら、あなたの負担は減ってくるわ。それに、戦うだけが魔物の狩じゃなくて、移動や休憩だって大事な事なのよ。あなたは、休憩の時とか食事の時とか気を回してくれるでしょ。あれって、結構、みんな助かっているのよ」
メイノーマは、アイカペオラに言われて少し納得するような表情になった。
「専門的な事は2人に任せて、あなたは、それ以外の事を見てあげないといけないのよ。一度に2人も担当するのだから、武器と魔法は2人に任せた方がいいわ」
アイカペオラは、最初は不安そうに話をしていたが、最後の方はメイノーマの様子が希望に満ちたような表情に変わってきたので、自分の言葉が伝わったと思いほっとした表情をした。
(まあ、メイノーマだから、こんな私の話でも納得してくれるんでしょうね)
そんなメイノーマを、チョロすぎると思ったようだが、メイノーマの表情が変わっていく事が気になった。
(えっ! 何? メイノーマの様子が変! ひょっとして、気持ちを戻しすぎた?)
メイノーマは、獲物を狩るハンターのような眼差しをしたり、イヤラシそうな笑みを浮かべるとジューネスティーンとシュレイノリアを交互に見たのでアイカペオラは慌てた。
「ちょ、ちょっと、そんな睨むように2人を見たら、まずいわよ! そんな目で見たらメイノーマに近づいてなんて、できなくなるでしょ!」
そう言われて、メイノーマも納得したのか、今度は、笑顔で2人の方を見た。
(まったくもう! この娘は、直ぐに調子に乗るんだから! もう、いい加減、良い歳なんだから、少し自制心を持って欲しいわね!)
その様子をアイカペオラは、困ったような苦笑いを浮かべた。
「何だか、新人を3人扱うことになりそうだわ」
アイカペオラは本音が漏れたようだが、小さな声だったのでメイノーマは気が付いていなかった。
メイノーマとしたら、剣と魔法に関する担当にならなかったことで、好きな時にどちらかとだったり、または、2人一緒に話ができるのかもと、これからの事を思うと嬉しそうにしていたが、そんなメイノーマをアイカペオラは心配そうに見ていた。




