再会 24 〜担当決め〜
アジュレンは、メイリルダが納得したぞと言うようにウィルザイアを見た。
(よし、これで、ギルドが魔法紋を付与する魔法について知るまでの時間が稼げた。後は、ウィルザイアが魔法を覚えられるかどうかだな。この魔法は応用が効くだろうから俺達の装備が向上するはずだ)
そのアジュレンの表情は、言葉には出さないが理解しろというような表情をしていた。
「じゃあ、ウィルザイア。その娘の魔法紋について詳しい話を聞くようになるから、お前が担当した方がいいな。魔法紋の話も色々教えてあげれば、その娘の為にもなるはずだ」
アジュレンは何か違うという表情をした。
「ああ、違うな。魔法紋を教えるじゃなくて、世の中にはこんな魔法紋が有ると、知っている魔法紋の名前と効果を教えてあげればいいのか。きっと、既存の魔法紋なら自分で作ってしまうはずだ。それも通常より小さくできるはずだ」
そこまで言うとアジュレンは、苦虫を噛みしめたような表情をした。
(あ、担当決めって、セルレインの領分だった。流れで、つい)
アジュレンは、ウィルザイアを見て話の流れとして思わず言ってしまった事なのだが、リーダーでない自分が出しゃばっていることに気が付き申し訳なさそうな表情をして後ろに振り向いた。
「すまない、セルレイン。出しゃばってしまった」
担当を決めるなどは、アジュレンではなく本来ならリーダーであるセルレインが行うことなので、セルレインの職責をアジュレンは侵していた事になると思った。
「あ、いや、かまわないさ。その娘は、魔法が使えるし、魔法紋の事を考えたらウィルザイアが魔法に関して面倒を見る事になる。誰だって同じ判断をするさ。それより、俺の代わりに言ってくれて、ありがとうよ」
セルレインは、アジュレンの決めてしまったことを肯定した事で、アジュレンの心の負担を負わせないようにした。
セルレインとしたら、5人に対して精神的な面でも負担にならないように注意をしている。
そして、リーダーとして行う必要のある事についても、大きな問題にならない限りメンバーの思う通りに行わせ、失敗したとしてもリーダーである自分がフォローできる範囲での失敗であれば、それは、メンバー達の経験値になるので余程の事がない限り否定するようなことはない。
セルレインは、メンバー達が独立した時、自分のパーティーを作る事も考えつつメンバーの心の成長も促すようにしていたので、アジュレンとしてもリーダーとして尊敬しているセルレインには礼を尽くすようにしていた。
人の心の内は、本を読むように手に取るようには理解できない事が多い。
セルレインのリーダーシップは、そんな細かな一言を添えるようにさせていた。
些細な一言が、お互いの気持ちの疎通をさせる事になるので、この位理解できるだろうと思う事を言うようにしていた。
メンバー内の不和は、そのような些細な一言が無い事で誤解が招いている事が多いとセルレインは常に指導していた事もあり、アジュレンの一言もその返事も、僅かな亀裂を生まない為に染み付かせるように指導していた。
そんなアジュレンの一言を、セルレインは心地よく思いつつ返事をしていた。
そしてセルレインは、感心するような表情をして今の会話を聞いていたジューネスティーンを見てからストレイライザーを見た。
「それじゃあ、少年の剣の指導担当はストレイライザーだな」
セルレインは、また、ジューネスティーンを見ると、納得したような笑顔を向けてからストレイライザーに視線を向け軽くお辞儀をした。
(ふーん、お辞儀とは律儀だな)
ストレイライザーは、少し驚いたような、あまり嬉しくないといった表情なのか微妙な表情を浮かべていた。
それは、積極的に子供と話をするメイノーマとは違い、子供に対して苦手意識があるので、セルレインは、それを払拭しようと考えていた。
この機会にストレイライザーにも子供と接触する機会を与えた方が良いと考えたようだが、当のストレイライザーは、苦手意識のある子供達だったので、今回は少し離れたところで見守るようにしていたいと思っていたのに当てが外れたと思ったようだ。
セルレインは、そんな事も含めてジューネスティーンとストレイライザーの接触する機会を増やそうと考えていた。
「ああ、わかったよ」
ストレイライザーは、仕方ないなといった様子で了解した。
(少しの苦手意識は、早めの対処を行うことで払拭できることが多い。それに剣は2本だけじゃなかったからな。ストレイライザーなら、全部の剣を試し斬りをするだろうし、剣の秘密も探ってくれるはずだ)
それが後になればなるほど、苦手だと思う気持ちは増殖される事があるので、浅いうちに対処した方が良い。
その際には、万一の事も考慮しておく必要がある。
メンバーと一緒に行動する事になるなら、様子を確認しつつストレイライザーが困ったような状況になったら、その時にセルレインでもメンバー達でもフォローする事で対処可能となる。
そして、アジュレンの際どい発言について、メイリルダから注意を逸らすようにも動いていた。
そんな様子をジューネスティーンは、黙って見守るようだった。




