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再会 22 〜アジュレンの内緒話〜


 シュレイノリアに関する魔法力の高さはギルドに報告されてはいたが、専門家を送るまでには至ってなかった。


 報告は、ギルド支部から本部に上がってはいるのだろうが、一般的な魔法との格差が大きいという事から、逆に本当なのか、そんな事は有り得ないなど言われ信じられてなかった。


 報告書の内容が一般的な魔法とかけ離れており、そんな魔法は有り得ないと思われ優先度が逆に下がってしまっていた。


 本部の魔法の専門家としたら、報告書の内容が一般的と比べたら常軌を逸した内容だった事、担当した職員が新人で魔法も使えない事から初めて見た魔法に驚いたのだろうとなっていた。


 その報告書にエリスリーンの添え書きが有れば話は別だったが、あえて、本部に送る報告書に記載はせずメイリルダの報告として上げていた。


 そのお陰で、本部から魔法の専門家が来る事が遅れてしまっていた。


 そして、シュレイノリアは、説明が不得意だった事と、人見知りの性格もあって魔法について聞かれたとしても、周囲は理解が及ばなかった事も本部での不信感をかってしまっていた。




 シュレイノリアは、ジューネスティーンのためにと思って、魔法紋の開発も行った。


 ジューネスティーンが、斬る剣が欲しいと要求したにも関わらず、直剣のレイビアを支給された事で自身で剣を作る事にした後も、シュレイノリアはジューネスティーンとだけは話していた。


 2人は、一日違いで転移して一緒に住んでいた事もあって、ジューネスティーンとは言葉数も多くお互いに意思の疎通も理解も早い。


 ジューネスティーンの魔法についても、シュレイノリアの魔法能力が有ると認識された時は、能力が無かったのだが、しばらく後に魔法を確認すると使える事が分かった。


 ジューネスティーンが、シュレイノリアから魔法の使い方について伝授されたのではないかと、ギルド支部の職員の中で噂されたが真相を知ろうとする者も居なかった。


 それは、そんな事が出来ると誰も思わなかったからであり、シュレイノリアがジューネスティーンに魔法を教えたら使えるようになったという噂話を楽しんでいた。


 それは、娯楽の一環としての噂話で終わっていた。


 しかし、シュレイノリアがジューネスティーンに魔法について教えた事で使えるようになった事は事実だったが、この世界では、魔法は生まれながらの適性が有った人以外使えないと考えられており疑う人は誰もいなかったので、ジューネスティーンとシュレイノリア以外からは、あり得ない話で転移者同士だからだとか面白がって噂話になっていただけだった。


 娯楽の少ない世界なので、面白おかしい噂話というのは尾鰭をつけて楽しむものであって、その真実を知ってしまって噂が終わる事を人々は嫌った。


 噂話の真相を知る事になると、お喋りのネタが無くなってしまう事になるので、その真相を知ろうとする人は誰も居なかった。




 セルレインは、何かを考えていると、アジュレンがセルレインの後ろに立ち肘の辺りを引っ張ったので後ろを向くと、近くにいたストレイライザーとアイカペオラの顔を見るが、身長の低いウサギの亜人であるアジュレンを見過ごしてしまい、何か有ったのかという表情をした。


 アジュレンは、少しムッとした表情をして今度は下に向かって袖口を引っ張った。


 アジュレンは、立てた人差し指を自身の口に当ててから顔を近づけるようにというジェスチャーをした。


 その様子に気がついたストレイライザーとアイカペオラが近寄ってきて、3人は背の小さいアジュレンの高さに合わせるように腰を屈めた。


「なあ、さっきの斬れ味、半端なかったな」


「ああ、確かに、そうだったな」


「あの斬り方だと、半分斬れたら、棒が縦に避けるように折れただろうな」


 アジュレンの言葉に、セルレインは納得したように答えるが、ストレイライザーは、ジューネスティーンの斬り方を解析した結果を述べた。


 その様子をアイカペオラは、ただ、聞くだけだったのだが、自分まで呼ばれた意味が気になっているようだ。


「今、メイリルダは、報告はこれからだと言っていたよな」


「まあ、そうだったわね」


 アイカペオラは、黙っているのも何かと思ったのか、アジュレンの言葉に同意した。


 それは、セルレインもストレイライザーも一緒だった。


「あの魔法紋は、魔法で印刷したと言っていたな。だったら、俺たちの武器にも、その魔法紋を印刷してもらえれば、俺達の武器もあんな斬れ味になるんじゃないのか?」


 その話を聞いて、ハッとするような表情をして、3人ともその通りだというようにアジュレンを見た。


「あの魔法紋の事、メイリルダがギルド報告したら、どうなる? ギルドは、あの娘に、無闇矢鱈に魔法紋を付けちゃいけないって言われないか?」


 アジュレンの言葉を聞いて、3人とも、その通りだと思ったようだ。


 魔法で魔法紋を描けるというなら、今まで、手作業で行なっている魔法紋の業界が影響を受ける可能性がある。


 しかも、魔法紋の書き換えも可能となったら、魔法紋の業界は大騒ぎになりかねない。


 3人は、魔法で魔法紋を描く事の重大さが気になり始めた。


 そして、2人の転移前に現れたジェスティエンの事を考えた。


 ジェスティエンは、火薬と銃という画期的な発明をしたが、世界が大きく変わるかもしれないということで、ギルドがジェスティエンにパーティーメンバーという護衛を付けて、他のパーティーとの接触をガードしているので、セルレイン達も噂は聞くが、出会う事もなく、出会ったとしても言葉を交わせるとは思えないのだ。


 その事を考えながら、シュレイノリアを見ると、全員が、マズイというような表情をしてメイリルダを見た。


 このシュレイノリアの魔法紋についてセルレイン達は喉から手が出るほど欲しいと思えた。


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