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再会 21 〜魔法紋を刻む魔法とギルド〜


 ウィルザイアがシュレイノリアの手を取り黙って見つめている間、誰も話をする事も無く様子を伺っていると、ストレイライザーが何かに気がついたような表情をするとメイリルダを見た。


「なあ、ギルドとして今の魔法紋と刻む魔法について、どんな方針を出しているんだ?」


 本来なら、セルレインが聞くべきだろうが、セルレインも黙ったまま周囲の様子を伺うだけだったのを見ていたストレイライザーがメイリルダに話しかけた。


 突然、自分に話を振られたメイリルダは焦ったような表情をした。


「えっ! あ、あのー、どうなんでしょう」


 メイリルダとしても自身が魔法を使えなかった事もあり、2人の話を聞いていたとしても、その魔法が既存の魔法なのか新規の魔法なのかの判断はできない。


 ジューネスティーンとシュレイノリアは魔法が使えるが、メイリルダとしたら見たままを報告するだけで、その魔法に対する評価は出来ていなかった事もあり、今の魔法紋について2人が話していたとしても重要性に気が付かず聞き流してしまっていた。


(やっぱり、この娘はボンクラだったか)


 ストレイライザーは僅かに面白く無さそうな表情の後、仕方なさそうな表情をしてから何かを思い付いた表情をした。


(まあ、魔法が使えるならギルドの受付嬢なんて仕事にはつかないのか。……。いや、これはチャンスかもしれない)


 すると、視線だけをウィルザイアとメイリルダの後ろに隠れているシュレイノリアに向けると、直ぐに視線を窓に向けた。


(新規の魔法なら、その重要性によってギルドに秘匿されてしまう。現にジェスティエンのカヤクとジュウについては、話に聞くだけで販売されるような事も無い)


 一瞬、ニヤけた表情をするとストレイライザーは元の表情に戻った。


(ギルドが知る前にウィルザイアが気付いてくれた事に感謝だな。魔法で描く魔法紋の呪文を知る事ができれば俺達の装備にも付与可能だって事なら、雲の上の金額の魔法装備が手に入るかもしれないって事だ)


 その表情の変化はメンバー達なら気がつく程度だったが、メンバー達はメイリルダの反応を見ている者とウィルザイアの様子を伺っていたのでストレイライザーの表情の変化に気付く者はいなかった。


 そして、ウサギの亜人であるアジュレンは、真剣に考え事をするようにシュレイノリアの様子を伺っていた。


 ストレイライザーの様子に誰も気付く様子も無い中、メイリルダはシュレイノリアの魔法紋の小ささも付与の魔法を開発していた事も気付いていなかった事が気掛かりでいた。


 メイリルダは、今のセルレイン達の様子から、シュレイノリアの魔法紋とその付与魔法について報告を怠っていた事をギルドに報告する前にセルレイン達に知られてしまった事をエリスリーンに報告した時の事を考えてしまい困ったような表情をしていた。


「一応、報告はしておきます。ですが、今の魔法紋についてはギルドとしても知らなかった事ですから、これから検討する事になると思います」


 メイリルダ自身も、シュレイノリアがジューネスティーンの剣に魔法紋を施していたと言うのは初耳だったので申し訳なさそうに答えた。


 メイリルダとしたら可能な限り2人と接し状況を確認していたが、言葉を覚えてしまった2人に転移してきた当時のように四六時中付き添うような事は無くなっていた事から色々と見落としが多くなっていた。


 特に、シュレイノリアの魔法に関する知識の吸収と、その応用については魔法の使えないメイリルダとしたら自分の理解を超えたところで行われているので重要性に気がついていなかった事も大きい。


 もっと、早い段階でメイリルダ以外に専門家を2人に付ける必要が有ったはずなのだがギルドも見落としていた。




 誘拐の危険性について、ギルドは非常に高い警戒を行っていたのだが、前回のジェスティエン以前の転移者の事を考えたら、ジェスティエンが異常だったので今回も天才的な能力を示すとは思っていなかった。


 そして、ジェスティエンの前はウサギの亜人女性であり、身体能力は、それなりのものを示したが魔法も使えず何か発明をするような事もなく、更にその前においても、エルフの男女が、珍しく2人一度に転移してきた。


 2人は、エルフにしては珍しい二卵性双生児じゃないかと言われた程度で能力的なものを示す事は何も無かった。


 そんな事から、ジェスティエンの示した火薬と銃はイレギュラー的に世界に示されただけで、ギルドが創設されて約800年になる時に革新的な発明をもたらせたのであれば、ジェスティエンの次の転移者には発明や発見に関する新たな技術を示される事は難しいだろうと思われていた。


 おおかた、ジェスティエン以前の転移者同様、冒険者として成果を上げる程度の存在であろうと見解をまとめていたので、2人が何らかの能力を示した後に対応を考える事になっていた。


 シュレイノリアについては、魔法力の高さが際立っていたが、冒険者としてジューネスティーンと共に歩むと方向性は見えていた事から、冒険者として独り立ち出来てしまえば大魔法使いとして一目を置かれる事になると思われていたが、2人で冒険者の道を進むのであればギルドとの関与は大きい事から成人まで誘拐の危険から守る程度に考えられていた。


 ギルドは、シュレイノリアが、転移して1年程度で新たな魔法の開発を行えるようになるとは考えていなかった事もあり対応に遅れており、メイリルダとしても、ジューネスティーンの剣に魔法紋を付与しているという話は初耳だった。


 この事に関してギルド支部にもギルドマスターであるエリスリーンにも報告などしてはいない事なので、今、見て聞いた事を、これから報告してからの話になる。


 メイリルダにシュレイノリアの魔法紋について判断を仰いでも何も答えられる訳がない。


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