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再会 21  〜ウィルザイアの思い〜


 シュレイノリアは、剣に5ミリ程度の大きさの魔法紋を魔法で描いていると言った事だけでも、魔法職のウィルザイアだけでなくセルレイン達にとっても初耳だった。


「ねえ、魔法紋って、とてもデリケートなのよ。下地にだって最新の注意を払う必要があるのよ」


 真剣な表情でウィルザイアはシュレイノリアに言うが、シュレイノリアは何を言っているといった表情で聞いていた。


「問題無い。剣は鏡面仕上げをされているから、下地については、何も考える必要も無い。それに、必要なら錬成魔法で表面の目に見えない傷も治してから魔法で魔法紋を印刷する」


 シュレイノリアは、そんな指摘は織り込み済みだと、当たり前のように答えたので、ウィルザイアには、あまりに完璧すぎると思ったようだ。


 シュレイノリアの魔法紋の描き方についての解説は、セルレイン達メンバーにも初耳ではあるが、魔法に詳しく無いことから新しい魔法が作れたのか程度にしか思えず、ウィルザイア程驚く様子は無く、そんな事ができるのか程度に聞いていた。


 ただ、一番若いメイノーマだけは少し面白くなさそうな表情をしてウィルザイアとシュレイノリアを見ていた。


 メイノーマは、シュレイノリア見て直ぐに仲良くなろうとしたのだが、メイリルダの後ろに隠れられて警戒されてしまったのに、今は、ウィルザイアに手を握らせている事が羨ましく思っていた。


 しかし、魔法紋についての話を聞いている事もあり、ここで自分のわがままを言う事もできずに黙って様子を伺っていた。




 一方、ウィルザイアとしたら、メイノーマの様子など知ることはなく、シュレイノリアから魔法紋についての考え方を詳しく聞きたいと真剣な様子で伺っていた。


 魔法紋を書き換える方法について、後から魔法紋を描き変えてしまうと発動しない事の理由を聞き、そして、魔法で印刷する魔法紋によって、魔法紋の小型化ができたことにも驚きが隠せない。


 通常の10分の1以下の魔法紋ができるのであれば、今まで魔法紋を刻む事が出来なかったものにも刻むことが出来るなら魔法の利用方法が大きく変わる事になる。


 魔法を使えない人にとって、魔法紋や魔法スクロールは魔法を発動させるための手段として大変重宝するが、人の手によって作られる魔法紋も魔法スクロールも高額で取引されている中の魔法紋について、シュレイノリアは、魔法で印刷するとい方法を開発してしていた。


(ねえ、魔法紋が5ミリって、それだけでも魔法スクロールを小さく出来る事になるし、魔法紋を刻めなかった武具や防具にも使える事になるわ。それに、魔法で描けるなら手間も減るから、場合によっては戦闘中に刻む事も可能になる。今の魔法紋に対する考え方が大きく変わってしまうわ)


 ウィルザイアは、真剣に考える表情でシュレイノリアを見ていた。


(今は、私達の戦力も大した事はないから、この始まりの村周辺で魔物を狩っているけど、この魔法紋を刻む魔法を私が覚えたら、ストレイライザーの剣に刻んで、いえ、全員の武器に刻めるなら、剣も槍も強力になるわ。あの子の体力でも太い試し斬りの棒を簡単に斬ってしまうなら、うちのメンバー達なら一撃で魔物を撃ち倒せる。なら、ここを出て、王都なり他国に渡って大きく稼げる事になるわ)


 ウィルザイアは、一度試し斬りをする場所を見てからシュレイノリアを見た。


 その時も、シュレイノリアの手を離す事は無かった。


(稼げるようになって装備も良くなれば、私達にだって東の森の魔物を倒す事だって出来るかもしれないわ)


 東の森とは、この大陸の東に大きく広がっている森の事を指している。


 以前は、この森に生息する東の森の魔物により、この森の脇を通った南の王国と北の王国を結ぶ街道が使えなくなっていた事から、北の王国と南の王国を行き来するには大きく迂回して大陸の西側の街道を使っていた。


 それには、何国もの街道沿いの国を経由する事になり、国境を通る度に関税を支払う事になるので、南の王国にあるギルド本部の開発した魔道具等は北へ行く程高額になっていた。


 歴史上、この大陸東部の森林地帯に生息するという東の森の魔物は、現在の大ツ・バール帝国の建国者であるツ・エイワン・クインクヲンの魔道具によって森に追い返す事が出来るようになったが討伐には至ってない。


 ツ・エイワン・クインクヲンは、その魔道具によって北の王国と南の王国を繋ぐ街道に出没する東の森の魔物を追い払う事により、街道を使えるようにした功績によって、北の王国の庇護下でツ・バール国を建国し街道の警護と広大な未開地の開墾によって国の基盤を作り、今では大陸の穀倉地帯として穀物の輸出で潤っている。


 ツ・バール国を建国後に、何度か討伐を試みた事もあるが、体長2.5メートルで全身を鱗で覆われた人型の魔物には、剣の刃も弓矢も跳ね返してしまい討伐した実績が無い。


(この娘の魔法力はギルドも強いと言っていたし、それに今の魔法紋を刻む魔法を独自に考えてしまうなら、東の森の魔物を倒す事も可能? ……。でも、海や砂漠に向かって試させろとかなら、魔物だけでなく森ごと破壊してしまうのかしら)


 ウィルザイアは、シュレイノリアを見ながらゾッとしたような表情をした。


(討伐できたとしても、森が焼け野原になってしまったり、洪水で押し流されたり、凍りついてしまって溶けなくなってしまったら、周辺の土地まで使えなくなってしまう可能性もあるのか)


 ウィルザイアは、真剣な表情でシュレイノリアを見つめるだけだった。


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