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再会 20 〜シュレイノリアの魔法紋〜


 シュレイノリアの魔法紋の描き直しができない理由を聞いて、ウィルザイアもセルレイン達も納得できたようだ。


 そんな中、ストレイライザーが何か気になるような表情を浮かべていた。


「ちょっと、すまないが、その剣には魔法紋が描かれているのか?」


 ジューネスティーンの剣を見て、ストレイライザーは尋ねたのを聞いて、アイカペオラも気になった様子でジューネスティーンを見た。


「そうよね。そんなに細身の剣なのに、魔法紋が描かれているって事なのよね」


 アイカペオラが不思議そうに呟いた。


「そうよ。魔法紋が描けるような大きさなんて、その剣には無いわね」


 メイノーマもアイカペオラの話を聞いて、思い出したように言った。


 それを聞いて、今まで魔法紋を消して新たに書き直す事にばかりに神経がいってしまっていたので、この細身の剣の何処に魔法紋を刻めるのか、ストレイライザーの持つ大剣なら大金を積めば描けると思えるが簡単に払える金額ではない。


 一般的な魔法紋なら20センチ程になってしまうので、それを大剣に描こうとしても、僅かにはみ出してしまう事から一般的な魔法紋より小さくする必要があり、その大きさの魔法紋を刻むにしても新築の家が建つ程の金額を要求されてしまう。


 それよりも細いレイビア程の剣では魔法紋がはみ出すし、魔法文字を小さく書くにしても限度がある。


 シュレイノリアが子供だからといって、小さく細い指なら文字を書く事に長けているとしても複雑な魔法紋を描く事が出来るとは思えなかった。


 ジューネスティーンの剣の幅に魔法紋を入れるとなれば、国宝級と言っても過言ではない。


 ウィルザイアは、その疑問に気が付くと、少し怖い表情でジューネスティーンを見たので、その様子を見ていたシュレイノリアは少し慌てたようだ。


「魔法紋は、魔法で刻むから大きさは思ように変えられる。ジュネスの剣は、鞘の固定に使う、ハバキの下に直径5ミリの魔法紋を描いた」


 ウィルザイアがジューネスティーンを睨んだように見えたのか慌てて魔法紋についての説明をウィルザイアにした。


 その説明を聞いたウィルザイアは、信じられないという表情で今度はシュレイノリアを見た。


「魔法紋を魔法で?」


 ウィルザイアは、意味が分からないといった様子で言葉にした。


「魔法紋は道具で刻むか、スクロールを貼り付けるかでしょ。魔法って、どういう事なのよ! 魔法紋を刻む魔法なんて聞いた事が無いわ!」


 シュレイノリアは、その勢いに怖いと思ったのか握られている手を引っ込めようとしたがウィルザイアは許さなかった。


「ま、魔法紋をイメージして、それを剣に印刷するつもりで描いた。だから、大きさは、イメージで、大きくも小さくもできる」


 ウィルザイアは驚いた表情でシュレイノリアを見つめた。


(この娘は、自身で魔法を開発したというの?)


 魔法紋を描くのに魔法を使うとは今まで聞いた事が無かった事から、詳しく聞かなければならないと思ったようだ。


(今、この手を離したら、何もかも失ってしまうかもしれないわ)


 自分が握っているシュレイノリアの手を絶対に離してはいけないと逃さないように力を入れた。





 魔法紋は、円と線で基本図形を描き、その内部に発生させたい魔法を専用の魔法文字で描く事になるため、小さな魔法紋を描く事は難しい作業となる。


 スクロールに描くなら細い筆が必要になるし、金属に刻もうと思ったら、針のように細い先端のポンチが必要となる。


 そして、高い集中力を要して少しずつ描く事になるので、魔法紋を描く側は必要以上に小さい魔法紋は描こうとしない、ましてや、ジューネスティーンの剣に魔法紋を描ける程度の大きさの魔法紋となると非常に小さいものになる。


 それは、シュレイノリアの直径5ミリの魔法紋と言ったのだが、そんな小さな魔法紋は、未だに発明されたという話は聞いた事がない。




 ウィルザイアは、ジューネスティーンの剣を、ストレイライザーとジューネスティーンが試し斬りをした時に剣を見ている。


 遠目で見てもおおよその刃幅は分かる。


 その刃幅は3センチ程度しかなく、しかも、刃と峰の中央には鎬と呼ばれる低い山が作られているので剣の断面は薄い五角形に作られている。


 それは、刃を鎬に向かって鋭角に作られており、その為、鎬から峰に向かう面も刃側が鋭角な事もあり、ほぼ同じように作られている。


 そして、峰は刃を作る必要が無いので、面になるように作られている。


 峰では斬る事はできないように鋭利にはなっておらず、ごくわすかではあるが面になっている片刃の剣なのだ。


 また、刃から鎬にかけて、そこに波打つような波紋が現れていた。


 波紋は、焼き入れの際に剣を反らせる為に焼き入れの速度を、刃側と峰側で違いができるように調整を行う。


 刃側に粘土を塗らずにおいた事によって、側面を水蒸気が這い上がる事によって温度差が出来て模様になった事から、刃側に薄く粘土を塗って紋様を調整する事にも成功させていた。


 そして、焼き入れの際に刃と鎬の中間までと残りの部分との泥の厚みを変える事で焼き入れの入り方を変え曲がりを緩くしたり鋭くしたりできると実験結果から分かっていた。


 その泥の厚みの違いによりによって、焼き入れの入り方が変わり素材の変化に違いが出る。


 焼き入れが早いか遅いかで変化に違いが出る事を利用して剣を反らせ、素材が変化する際の違いが光の反射率が変わり、刃に紋様が現れる事は剣を焼き入れによって曲げる事の副産物として現れた。


 そして、紋様ができている刃側に出ている紋様に引っかかるように魔法紋は描けない。


 描いたとしたら、刃の紋様の影響を受けてしまい魔法紋は発動しない。


 魔法紋を描ける場所は、ジューネスティーンの作った日本刀では、かなり、絞られてしまう事になるので、シュレイノリアは影響が出ないように5ミリの大きさの魔法紋を鍔の手前にあるハバキの下に描いた。



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