再会 16 〜高周波振動〜
セルレインは、台座に残っていた試し斬りの棒を見ていると、ストレイライザーがズカズカと歩いてジューネティーンの斬った試し斬りの棒が残っている台座の前に行くとつられて一緒に来てしまった。
パーティーを組んでいると1人での行動を嫌う事もあり、ストレイライザーが、急に動き出してしまったので、ギルド支部の中庭なので安全であっても、その勢いにつられて歩き出してしまった。
狩りをする時などは、1人になるような事を減らそうとメンバー同士がフォローできるように行動するので、誰か1人が動けば、誰かがフォローに入る事から1人での行動は少なくなる。
そうする事によって、離れた1人が危険に遭遇しないように配慮するので、セルレインは思わずストレイライザーにつられて、後を追って試し斬りの棒のところに行ったのは、そんな癖が出てしまったからなのだ。
「おい、あの剣は、そんなに斬れる剣だったのか?」
セルレインは、斬り口を見つつストレイライザーに聞いた。
すると、ストレイライザーは、その斬り口に手を当てて斬り口の滑らかさを確認した。
「できるかもしれないが、……。多分、何回か失敗するかもしれないな」
ストレイライザーは、先程、ジューネスティーンの剣で試し斬りをしている事もあり斬れ味を知っていた。
その時は、3センチ角の角材だったのだがジューネスティーンの斬った角材は8センチと大きなものだったので、ストレイライザーは自分が斬った時の事を考えつつジューネスティーンの斬った角材を見ていた。
「なあ、セルレイン。お前なら、同じ事ができるか?」
斬り口を触りつつ、ストレイライザーが聞くのだが、セルレインは不安そうな表情をした。
「いや。俺なら、さっき、お前の斬った3センチでも綺麗に斬れるか分かったもんじゃない。……。いや、半分は斬れても、残りの半分が縦に割れてしまうだろうな」
ストレイライザーは、セルレインの答えを聞いて納得したような表情をした。
それは、ストレイライザーも、セルレインの腕なら、そうだろうと思ったようだが、目の前には8センチの角材を綺麗に斬っている。
通常なら、最初は勢いで綺麗に斬れるだろうが、刃が入ると、その抵抗によって刃の速度は大きく落ちる。
その速度が落ちて仕舞えば、刃の入る力も落ちてしまう。
力が落ちれば斬り裂く事ができなくなり、刃が角材を押す事で縦に裂けるようになるが、この8センチという太い角材には、縦に裂けるような傷跡は無く綺麗に斬り落とされていた。
「ああ、そういえば、アジュレンとメイノーマが、耳を押さえていたな。あれは何だったんだ?」
セルレインは、ストレイライザーに聞くと、一瞬、固まったような表情をした。
「俺が、知るわけないだろ」
ストレイライザーは、振り返りながらセルレインに答えた。
「ああ、でも、剣を抜いた後、何だか嫌な気分にはなったと思う」
「そういえば、俺のその時、何だか背筋がゾクってしたかもしれない」
そう言うとセルレインとストレイライザーは目を合わせると、その視線をメイノーマに向けた。
「なあ、お前、さっき、耳を塞いでいたな。あれは何でなんだ?」
セルレインに尋ねられたメイノーマは、何を言っているんだと言うような表情をした。
「えーっ、さっきの音、聞こえなかったの! あんなに大きなキーンって音、初めて聞いたわよ」
ちょっと、不貞腐れたように答えた。
「いやいや、あれは、ツーッていうような高い音だったぞ。犬笛じゃないのか?」
メイノーマの表現が気に食わなかったのか、アジュレンが話に入ってきた。
それを聞いていたセルレインもストレイライザーも何の事を言っているのか、よく分からないといった表情をした。
その様子を見てアジュレンは、ムッとしたような表情をした。
「なんだ、2人とも、さっきの音は聞こえてなかったのか?」
そう言ってアジュレンは、ジューネスティーンの試し斬りをした時の事を思い出していた。
「あんな、酷い音、2人とも聞こえてなかったの? 信じらんない」
メイノーマは自分を基準に考えており、自分に聞こえたのに何でセルレインとストレイライザーには聞こえなかったのか、意味が分からないといったように面白くなさそうな表情をしていた。
「そうだったの? 私にも何も聞こえなかったわよ。アイカペオラはどうだった?」
「私も、……。何も聞こえなかったわ」
メイノーマとアジュレンの言っている事が、何でなのかというようにウィルザイアとアイカペオラも話に加わってきた。
「じゃあ、聞こえたのは、アジュレンとメイノーマだけだったのか」
セルレインは、不思議そうな表情でメンバー達を見た。
「ああ、でも、剣を抜いて斬るまでの間、何だか、変な不快感は有ったわ」
アイカペオラは、その時に何か不快感を覚えたと言うとセルレインにも心当たりがあったようだ。
「あれは、剣が振動した時の音だ」
セルレイン達が、不思議そうにしていると遮るように声がかかった。
その声の方向には、メイリルダの横で手を繋いで立っているシュレイノリアがセルレイン達を睨むように見ていた。