再会 12 〜メイノーマ 2〜
セルレインは、ギルドから依頼を受けたジューネスティーンとシュレイノリアの2人が、自分のパーティーに入ることで、一番下だったメイノーマの後輩を作ることができるのではないかと考えていた。
そんな中で問題になるのは、ジューネスティーンとシュレイノリアの魔法力の高さは、パーティー戦を行った際に誰よりも攻撃力が高く、どんな魔法士を凌駕するほどの実力がある。
それだけを考えたら攻撃力はメンバーの誰よりも強い事になる。
しかし、魔物と対峙した際の戦略や戦術に対する考え方はどうだろうかと考えれば、ただ強いだけの2人が戦って勝利をおさめる事は難しい。
魔物は、人や動物を襲う害獣となれば、ただ攻撃を受ける的にはならず反撃される事も考慮に入れる必要があり、そして2人は11歳の子供となれば身体能力も劣るなら場合によっては反撃されて負傷する。
新人冒険者には、魔物と対戦した経験が無いなら、どんなに強いといえども対戦した経験が無ければ魔物と戦って勝つ事は大変困難になる。
魔物を倒すということは、お互いに命のやり取りをしている。
命懸けの戦いというのは、時として思わぬ反撃をする事があり意表を突かれる可能性が高いので、新人が戦う事になった場合、必死で反撃してくる魔物から自身を守る事は難しい。
冒険者としての経験は、2人に対して優位性を持てる事は多くあるのだが、1年で剣まで作ってしまったジューネスティーンなら、腕力は同じ年齢の子供と思っていたら大間違いのように思えるが、経験と技術が無い2人では無傷で帰る事は難しい。
そんな2人にメンバーの中で一番下のメイノーマはどう思うか気になり出していた。
「この2人を使えば、……」
(今のメイノーマは、一番下なのでメンバーのフォローは出来ても守って戦うなんて経験は無かった。新人の面倒を見させる事で、守りながら戦う難しさを覚えさせる良い機会なのかもしれない。それに考える機会を与えられれば成長につながる)
セルレインは、メイノーマを見つつ考えをまとめていた。
「おーい、メイノーマ」
セルレインは、自分のアイデアを試そうと思った様子で、少し嬉しそうな表情でメイノーマを呼んだので、メイノーマは何だというような表情でセルレインを見た。
「お前、自分の剣でストレイライザーと同じように試し切りしてみろ」
セルレインは、嬉しそうにメイノーマに言うと、メイノーマは何で自分なんだというような表情をした。
「え? 何、私も試し切りするの? ……。うん。じゃあ」
メイノーマは、驚いてセルレインを見て一瞬断ろうと思ったようだが、セルレインの表情から試し切りをしなければ、何を言われるか分からないと思ったようだ。
仕方なさそうに、スタスタと歩いて行き、試し切り用の棒を自分でセットしていた。
メイノーマとしたら、まだ、自分の剣に自信はなかったが、リーダーのセルレインに言われては仕方がないというように少し不貞腐れた表情をした。
メンバーの中には、ストレイライザーのような大剣を使う達人級のメンバーもおり、周囲の剣技を見ていたら自分の剣技は下手だと実感していたので、メンバーの前で自分の剣技を見せる事も、そして、ジューネスティーンやシュレイノリアの前で自分の下手な剣技を見せる事は恥ずかしいと思ったようだ。
そんな、セルレインの指示を聞いていたウィルザイアも、セルレインが何をしようとしているのか理解できたのか納得した表情でメイノーマの様子を眺め、ストレイライザーとアジュレンは、結果が見えているというようにニヤニヤとしていた。
ただ、アイカペオラだけは不安そうにメイノーマを見ていた。
どう考えてもメイノーマが試し斬りをしても、さっき、ストレイライザーがジューネスティーンの剣で斬ったようにはならないと分かっている様子でメイノーマを伺っていた。
そんなメンバー達の思惑を考えることもなく、メイノーマは自分の持っている剣を引き抜いた。
その剣は、ジューネスティーンの剣より、刃幅は2倍程あり刃厚については3倍は有った。
その長細い板状の双刃の剣は、先端にいくと細くなっており、そして、先端は双方の刃から45度に切られて先端が尖っていた。
ストレイライザーほどではないが、女性が持つ剣としては重い部類になり、その剣をヒョウの亜人であるメイノーマは軽々と持っていた。
一般的にヒョウの亜人は、速度に特化した方が得意なのだろうが、メイノーマは、自分の走る速さも他のヒョウの亜人と比べると、劣っていたこともあり自分は別の道に進もうと考えていた。
一般的なヒョウの亜人には、速度を重視した一撃必殺の攻撃を加えさせる先鋒として使われる事が多いのだが、足が遅かったメイノーマでは、そのような攻撃手段では他に引けをとってしまうことから、自分は剣で生きようと走り回るより剣を扱う力を付けていた。
だが、今のメイノーマは道の途中であって素人とは言わないが剣が普通に使える程度の腕でしか無い。
そんなメイノーマは、剣を横に構えてしまった。
メイノーマは、試し切りをと言われて、試し切り用の棒の木目なども気にする事なく、抜いた剣を自分の右側に構えると、そのまま切先を後ろに向くように腕を後ろに引くと一気に試し切りの棒を横から斬りつけた。
剣が、試し斬り用の棒に当たると、試し斬り用の棒は斬れる音ではなく木が折れる音を立て、そして、斬りつけた試し斬り用の棒の上側がメイノーマの斜め左後ろ方向に飛んでいった。
その近くに居たストレイライザーは、それを簡単に避けながら手刀で撃ち落としていた。
「おいおい、メイノーマ。試し斬りなんだから、その後の事も考えてくれよ」
ストレイライザーは、余裕そうというより、予めどうなるのか分かっていて、その後の行動と言動を行ったようだ。
それは、セルレインもアジュレンにも分かっていた事だというような表情で、ちゃんと、後始末はストレイライザーがしてくれたというような表情で2人を見ていた。
そして、ウィルザイアとアイカペオラは、ヤレヤレといった表情で様子を見ていたが、試し斬りをしたメイノーマは、ストレイライザーに試し斬りの切れてしまった棒が飛んでいった事で青い顔をしてストレイライザーを見た。




