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再会 11  〜試し斬りの評価〜


 アジュレンは、試し斬りで残った棒の切り口を興味深そうに見ていた。


「ここまで綺麗に斬れるとは、……。うん、正に名刀と呼ばれる剣にふさわしいな」


 そう言うと台座に刺さったままだった試し斬りの棒を引き抜き、斬られた断面を凝視した。


「俺が使う剣は、振り回して勢いで、ぶっ叩くから、要するに棍棒で叩いている方法と同じなんだ。俺達が使っている剣は、坊主の剣とは違って刃が鋭角じゃ無いだろう。だから、斬るじゃなくて叩くなんだ。俺たちの剣の使い方は、棍棒を叩くのと一緒なんだ」


 それを聞くメンバー達は、まだ、理解できないような表情をしており、特に女子達には難しすぎた。


「さっき、ストレイライザーが、手首を立てた状態で腕を振って、最後に手首を返しただろう。あれが、刃を滑らすようにして、最後に一気に振り抜くんだ。だから、こんな綺麗な切り口になる」


 この説明によって、ボーッとしていたり、何となく理解できたかというような表情に変わってきた事を確認すると、アジュレンは一つ咳払いをした。


 すると、手に持っていた角材の角を指差した。


「きっと、剣を考えた古代の人達は、こんな感じで金属の角で叩く、それが発展していったと思うんだ。それが、薄くなって、今の剣になったと言っていいだろうな。だから、俺たちの使う剣というのは、棍棒の延長線上にあって、要するに、ぶっ叩くにしても先端が細い方が効果が高いから今の形になったと言って良い。それが、更に発展したら、坊主の作った剣じゃないか?」


 ジューネスティーンの剣を指差した。


「さっき、切り方は刃を棒に這わせるように引いたんじゃ無いのか? おい、ストレイライザー。お前は俺が解説した内容の通りだったんじゃ無いのか?」


 ストレイライザーは、アジュレンに言われて見抜かれていたのかと思ったようだ。


「それに、坊主に言ってた内容を聞けば、お前がどんな事をしていたのかは大凡見当がついた」


「ああ、そうさ。俺は、さっき、薪の上に置いてあった試し斬りの棒の残りを見たんだ。その切り口を見た時、昔、師匠に、引いて斬った方が楽だと言われた事を思い出したんだ」


 ストレイライザーは、自分の言いたい事を全て言ってもらったので、口下手な自身が説明する以上の事を聞いて助かったと思ったように表情を和らげると、アジュレンは、やっぱりといった表情をした。


 そして、アイカペオラを見た。


「なあ、お前は、料理をよくするけど、切りにくい素材とかは、包丁を前後に引いたり押したりするだろう。あれは、切れないから、そうやって前後に包丁を動かすんだろ」


 料理が趣味のアイカペオラは、料理をする時の事を思い出した。


「そうね、鶏肉なんて皮がついているから、結構、大変なのよ。そんな時は、言われた通り、押したり引いたりして切るわ」


 アジュレンは、今の答えを聞いて、うんうんと頷いていた。


「そうだろう、だから、それは剣も一緒なんだ。この坊主の剣は、よく斬れる。それを、今のように使えば、簡単に分断してしまうんだ。まあ、剣だと、押したり引いたりなんてできないからな。だから、今のように手首をうまく使って、剣の刃が引くように、刃が獲物の切り口を順々に移動しながら斬るんだ」


 アイカペオラが言っていることが何となく理解できたというように何度か頷くと、アジュレンは、ジューネスティーンの剣が、どんな物なのか理解できたメンバーが一人増えたと思い表情にゆとりが見えた。


「この剣は、本当に斬れる剣だから、今のストレイライザーのように斬るに特化した斬り方をマスターしておかないと剣を痛めてしまうだろうな」


 剣の細さも刃の鋭さもあり、一般的な剣の叩くような方法とは違うことをアジュレンは示唆したが、メイノーマだけ面白くなさそうな表情をしていた。


「ねえ、剣でも包丁でも刃に当たればキレるでしょ。一気にバッサリだったら、斬れる剣なら余計に斬れるだけじゃないの?」


 未だに理解できていないメイノーマに、話を台無しにされたアジュレンは面白くなさそうにし、他の4人はメイノーマに今の話は難しすぎたようだと諦め気味の表情をした。


 そんな中セルレインは、アジュレンの表情を窺っていた。


「メイノーマは、少し黙っていろ!」


 これ以上、メイノーマに何かを言わせたら、何の話になるか分からなそうだと思ったのか慌てて止め、上手い解説をしたはずのアジュレンが、話をぶち壊されて不機嫌にしているのを、これ以上能天気な話をさせたら大騒ぎになる可能性もあると判断したようだ。


「ダメよ。後でちゃんと説明してあげるから、今は少し黙っていてね」


 ウィルザイアが、メイノーマをフォローするつもりで言ったが、そう言われてもメイノーマは、不服そうに頬を膨らませてウィルザイアを見た。


「あなただって、もう少し経験を積んだら、アジュレンの話の重要性が理解できると思うわよ。まだ、成長段階なんだから焦らないで今の話を覚える事だけに意識して! あなたは、まだまだ、これからの人なのよ」


 不服そうにしていたメイノーマは、今の言葉を聞いて今度は恥ずかしそうな表情になったので、メンバー達は毎度のウィルザイアのメイノーマの扱いにに感服しているようだった。


 一番年下であるメイノーマは、歳も若くセルレインのパーティーに入った経歴も誰よりも短い。


 後輩が居ないことから他のメンバーとは違い、能力的に追いかけられているという感覚に欠けている事をセルレインは感じていた。


(これは、ひょっとすると、メイノーマの成長のための良い刺激になるのかもしれない)


 セルレインは、思わずジューネスティーンとシュレイノリアを見てからメイノーマを見た。


 セルレインは、メイノーマ、ジューネスティーン、シュレイノリアの3人を見て何かを閃いたような表情をした。


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