再会 10 〜剣の違い〜
ストレイライザーは、ジューネスティーンの剣をかざすように見ると、その研ぎ澄まされた表面に歪みも無く、鏡面仕上げの面に反射する景色を魅入られるように見てから上段に構えると一度素振りをした。
「うん、やっぱり軽い分早いな。それに、この刃の鋭さなら引くようにだから、斜めに刃を入れるようにするなら」
そう言うと、今度は、ゆっくりと手首曲げたまま振り下ろし、そして、振り下ろしきる寸前に手首を返すようにした。
ストレイライザーは、振り下ろした剣が試し斬りの棒に当たる角度を考えつつ、そして、最後の振り抜く時の事を考えて剣をどのように動かし、初めて使うジューネスティーンを大事に使うため、剣の特性を十分に生かそうと剣を観察して自分なりに特性を考察していた。
刃というものは、よく斬れると言っても押しただけでは力がいるが、刃は引いて切るなら力はそれほど要らない。
良く斬れる剣を使い引いて斬ることができたら、硬いものでも力を使わずに斬る事ができる。
ストレイライザーは、一般的な剣を使っていた事もあったので、斬るのではなく剣を叩き落とすようにしていたが、置いてあった試し斬りを終わった後の棒を見て自分の剣の使い方とは違うと理解していた。
ストレイライザーは、斬るというより叩き潰すように力で断つように斬っていたが、ジューネスティーンの剣は全く違うコンセプトで作られたのだと、焚き付けの薪の所に残っていた使い終わった試し斬りの棒の斬り口を見てストレイライザーは気がついた。
「なるほど、これは、常識を覆してしまう剣なのかもしれないな」
一言呟くと試し斬りの棒の前に立ち、先程と同じように斜め上段に振り上げると一気に試し斬りの棒に斬りつけると、先程とは違う音と共に振り抜かれると、地面に斬った棒のが地面に落ち、台座の石に当たると先程とは違い甲高い音が何度かして止まった。
さっき、自分の剣で斬った時は途中で折れてしまったのだが、今度は、折れる事なく綺麗に切断されて地面に落ちた棒をストレイライザーは見ると納得したような表情をした。
「ほーっ!」
ストレイライザーは、嬉しそうに鼻を鳴らすと姿勢を戻し、右手で剣を上空に掲げるように持ち上げた。
「思った通りだ。これだけの斬れ味の剣なら斬った棒の断面も違うって事なんだな」
ストレイライザーは、子供か新しいおもちゃを与えられたように嬉しそうな表情で剣を掲げると惚れ惚れするように見た。
その様子をセルレインとメンバー達はボーっと見ていた。
ストレイライザーは、掲げた剣を下げると、地面に落ちている自分が斬った試し斬り用の棒を拾いセルレインの方に移動した。
セルレインには、さっき渡したストレイライザーの剣で斬った試し斬りの棒とジューネスティーンの剣の鞘を両手に持っていたので隣にいるウィルザイアを見た。
「すまないが、これを持っててくれないか」
そう言うと、ストレイライザーが今斬った試し斬りの棒を渡した。
ウィルザイアは受け取ると、ストレイライザーは、ボーッとしているセルレインの手に持っている鞘をよこせというように左手を出した。
「おい、鞘をもらえないか」
「あ、ああ」
セルレインは、言われるがままストレイライザーの手のひらに鞘を置いたので、受け取ると剣を鞘に収めた。
剣は、引っ掛かる様子もなく鞘に収まっていくが、最後のハバキだけは、引っ掛かるので、少し力を入れて鍔のところまで収めた。
「成る程、なかなか、面白い作りになっているな」
ハバキを使うことで、そこで固定されるのだと理解するように、ストレイライザーは言った。
抜く時には、剣の斬れ味が気になっていたので、引き抜く時はハバキというパーツに気が付かなかったようだが、斬れ味を実感して気持ちが落ち着いた事もあって、ハバキが剣を鞘の中に治るように固定される事に気が付いた。
この世界の一般的な剣は、剣、鍔、柄を、一体型で作るので、剣と鞘を固定するためには革紐などで鍔に引っ掛けて鞘に固定する事が多い事から、鞘に収めただけで固定される事はない。
鍔を固定するときに剣側に取り付ける小さな金属であるハバキは、鞘との嵌合をさせる為にも有効なパーツであり、剣から柄まで一体で作る一般的な剣では加工が難しいものになってしまうが、多くのパーツから作られている日本刀ならば可能となる。
「見た事も無い剣だが、こんな斬れ味は初めて味わうよ」
ストレイライザーが高い評価をしたので、セルレイン達は自分達が剣の試し斬りをしに来たのだと認識が戻った。
「ねえ、私も試し斬りしてみたい」
そんな中、メイノーマが言い出したのだが、ストレイライザーは嫌そうな表情でメイノーマを見た。
「お前が? ……。この剣は、繊細だぞ。お前だと下手をすると刃こぼれどころか折ってしまいそうだから、やめておけ」
ストレイライザー若いメイノーマに少し大袈裟に言うと、面白く無いと露骨に表情に出した。
「それって、私は剣が下手くそだって言いたいって事よね」
そう言うと頬を膨らませた。
「ああ、まだ、一度試し斬りをしただけだから良く分からないが、これは、使う側の技量も試されるかもしれないと思う。特に剣の薄さは、今までの剣とは違うし、叩くのではなくて引くようにしながら振り下ろせば、刃の鋭さから勝手に斬ってくれるってわけだ」
その説明にメイノーマは、難しい表情をしていた。
「要するに、ぶっ叩くんじゃなく剣の刃を入れるって感じ、いや、刃を滑らせるって事だな」
ストレイライザーの話にアジュレンが割り込んできた。
アジュレンは、試し斬りの台座に残っている試し斬りの棒の切り口を覗きながら言ってきた。