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再会 8  〜中庭での試し斬り〜


 今まで、ジューネスティーンの剣について、セルレイン達が色々意見を出していたのを、シュレイノリアと一緒に黙って聞いていたメイリルダが話をまとめるように試し斬りを進めた。


 セルレイン達もジューネスティーンが作った剣の鋭敏さを考えたら、この世界で売られている斬る剣とは、全く異なるコンセプトで作られている事に気がついた事もあって剣の使い心地を知りたいと思った。


 メイリルダとしたら、ジューネスティーンの評価を上げるためにセルレイン達は都合が良いと思った。


 ギルドの評価としたら、圧倒的な魔法力を示したシュレイノリアに目がいってしまい、ジューネスティーンの魔法力も一般的な魔法士からしたら、遥かに上をいくのに、シュレイノリアの評価が高すぎる事もあってジューネスティーンの魔法力が霞んでしまっていた。


 今回の日本刀の開発においては、この世界での一般的な斬る剣とは大きく異なっており、斬れ味が良いにも関わらず全く受け入れなかった。


 メイリルダ自身も、受付で様々な冒険者を見ていて、最初はジューネスティーンの剣に懐疑的だったのだが、完成後に一度見せてもらった試し斬りでメイリルダの考えも変わった。


 今まで、中庭での観察についても新たなフルメタルアーマーの開発のヒントを得るためだと聞き、ジューネスティーンが何かを思いついて考えをまとめるために行なっていた事を聞いた。


 それについてギルド内で説明を行っても、また、斬る剣について一般的な斬る剣と全く異なっており、説明しても周囲から全く理解されなかった。


 そして、新たなフルメタルアーマーであるパワードスーツについては、論外とされてしまい受け入れられる事は無かった。


 ジェスティエンのような、全く異なる技術である火薬と銃については、理解の範疇を超える超絶技術だった事もあり、試しにやらせてみたら、とんでもない技術だと火薬の爆発を見て分かったのだが、斬る剣にしても、パワードスーツにしても、似たようなものが、この世界に存在していたこともあって、その延長線上の技術であるように周囲からは思えた。


 この世界の人々にとって、現存の技術の延長上にありそうなものだった事もあり、現状を遥かに凌いでいたが既存の印象が強くジューネスティーンの技術が霞んでいた。


 その事が、メイリルダには歯痒いと思っていた。


 しかし、ギルドが用意したジューネスティーンとシュレイノリアの教育係として雇われたセルレイン達がジューネスティーンの技術の高さを証明してくれる可能性が高い事をメイリルダは考えたようだ。


 そのためには、手始めにジューネスティーンの剣の良さをセルレイン達に知ってもらい、ギルドへの報告をしてもらえればジューネスティーンの評価も上がるだろうとメイリルダは考えた。


 セルレイン達は、見ていた剣を鞘に収めると、ジューネスティーンに続いて鍛治工房を出て鍛治工房と隣接している中庭に向かった。


 最後にシュレイノリアの手を繋いでメイリルダも、セルレイン達を追いかけるように鍛治工房を出た。


 中庭は奥の方に試し斬り用の石でできた台座が用意されており、そこに試し斬り用の棒を差し込む穴が幾つも空いていた。


 その穴は、一つ一つ大きさが異なっており、試し斬り用の棒の大きさによって使う穴が違う。


 その穴に刺す試し斬り用の棒は、壁際の少し低く作られた屋根の下に、数種類の角材が置かれていた。


 その木材は、大陸の南部では一般的な木材なので入手が簡単な事と成長が早く、そして、柔らかく軽い素材と言われていた。


 カマドの焚き付けの薪としても使われるので、試し斬りの棒もカマド用の薪と一緒の屋根の下の一角が最近片付けられ、下に木屑が落ちている部分に、試し斬り用の棒は置いてあった。


 使い終わった試し斬り用の棒は、そのまま、薪として使われるようになっているのか、ジューネスティーンが試し斬りをしたであろう短くなった角材も置いてあった。




 セルレイン達は、地面に埋め込まれている台座を確認するように集まった。


「この台座は、よく見るやつだな」


 最初に口を開いたのは、ストレイライザーだった。


 ストレイライザーは剣だけを扱う。


 ウィルザイアは剣を使わないが、他は得意の武器以外に予備として剣も持っている。


 剣を一本だけしか持たないのは、ストレイライザーだけだった。


 そんな事もあったのか、試し斬りをする話に興味がいっているようだ。


 ストレイライザーは、試し斬り用の棒の方を見るのだが、その横に一本だけ短くなった角材が気になったようだ。


 メンバー達は、ストレイライザーが試し斬り用の棒を取りに行ったのかと思ったようだが、ストレイライザーは、薪を置いてある方に行き、そこに残っていた1本の角材を手に取った。


 残っていた角材は、2センチ角の細い角材であり先端が綺麗に切れていた。


 しかし、角材の側面はザラザラして木屑が伸びていたりするが、先端の断面には木屑が出るような事はなく綺麗に切れていたのでストレイライザーには気になったように断面を見ていた。


 そんな中、メイノーマが試し斬りの棒を仕方なさそに取りにきた。


「ねえ、何しているのよ。試し斬りに来たのよ! そんな薪なんて見てないで、こっちの棒を取ってよ」


 メイノーマは、不満そうにストレイライザーに言うと3センチ角の角材の棒を取った、その長さは1メートルより少し長いものだった。



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