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再会 7  〜ジューネスティーンの鍛治〜


 アイカペオラが聞いたジューネスティーンの答えは、鍛治を始めて1ヶ月で一般的な剣より細いとはいえ材料を用意しただけで作ってしまった事、その剣には歪みも無く表面も綺麗に仕上げられていた事に驚いていた。


 職人気質の鍛治の世界で、こんなに早く鍛治仕事をするなんて話を聞いたことがなく、そして、金槌を使い始めて、これほど早く剣を仕上げられるとは思っていなかったのだ。


 鍛冶屋に新しく弟子入りした新人は直ぐに工房にも入らせてもらえるのか分かったものではない。


 せいぜい、工房の掃除をするように言われて入る程度で、先輩の指示を受けて掃除を一から教えられ、鍛治の様子を見ながら技術を見て覚えさせ試させて仕事を教えるかどうかを工房の主人が判断し徐々に仕事を任せるので、1人で剣を作れるまでには数年か十数年掛かってしまう。


 しかし、ジューネスティーンは、そんな鍛治の世界とは全く異なる時間で鍛治を行なった事もだが、10本もの剣を作ってしまった事にセルレイン達が知る鍛冶屋の世界とは違うと思わせた。


 ジューネスティーンとしたら、鍛治仕事は金槌で素材を叩き形にするのだろう程度の知識、そして、折り返し鍛錬についても何となくイメージしていたことで作ってしまっていた。


 刀鍛冶の仕事を見様見真似で作ったのではなく、自分の中で何となくイメージした通りに作ってしまった事にセルレイン達は驚いていた。


「ねえ、ジュネス君。君は、鍛治について、誰かに指導してもらったことは本当に無いのか?」


 ストレイライザーが、気になった事を思わず聞いた。


「刀鍛冶とか防具を作っている鍛冶屋は、鍛治をしている所は見せてもらえませんでした」


 それを聞いて、ストレイライザーもセルレイン達も信じられないという表情をした。


「でも、鎌とか包丁とかを扱っている鍛冶屋は役に立ちました」


 ジューネスティーンは、今までの事を思い出して、ストレイライザーに答えたが、ストレイライザーにしたら、その程度で鍛治ができるのか、刃物の鍛治を見ただけで剣が作れるのかと思ったように表情を変えた。


 それは、他のセルレイン達のメンバーにも同様のようだが、ジューネスティーンとしたら周囲の様子が、何でなのかと思ったように確認した。


「あのー、何か?」


 ジューネスティーンは、セルレイン達の様子が気になり思わず聞いてしまうと、その言葉にセルレイン達は苦笑いをしたが、その意味が分からないというように見た。


「ああ、すまないな。君は、何も知らないまま鍛治をしたんだね」


 セルレインが、周りを代表するように答えると、ジューネスティーンとしたら言われた通りなので何でという表情をした。


 そんな様子を見ていたセルレインのメンバー達は、ちょっと違うだろうというようにジューネスティーンを見た。


 変な間合いを嫌ったメイノーマが口を開いた。


「ねえ、セルレイン。これが、転移者の能力じゃないの?」


 その一言が、変な雰囲気になっていたメンバー達にキッカケを与えてくれた。


「そうよ。ほら、なんて言ったっけ。10年前に現れた転移者の事だけど、その人の発明品は、冒険者の狩の方法を変えるどころか世界の考え方を完全に変えてしまうらしいじゃないの。だったら、この子達にだって同じような能力があっても不思議じゃないのかもね」


「ああ、ジェスティエンの事だな。カヤクとジュウとかって言ってたと思うぞ」


 言葉が出てこなかったウィルザイアに助け舟を出すようにアジュレンが言葉にした事で、セルレイン達は、ジューネスティーンを見ると納得したような表情をした。


 セルレイン達にしたら、転移者であれば一般人のように見ただけで終わるのではなく、その作業の意味を考え作業のポイントもコツも理解してしまったのだろうと思ったようだ。


「ジェスティエンのカヤクとジュウは良く分からないし、それに、あれはギルドが完全管理だからな。俺達の手に入るなんて、いつになることやら」


 セルレインは、ヤレヤレといった様子で話した。


「そうよね。それに比べて、ジュネス君の剣は、私達にも恩恵は受けられるかもしれないわね」


「うん。これは、きっと、何かあるのかもしれなわ」


 アイカペオラは、剣の刃の鋭さを新たな可能性を感じたように言うとメイノーマが反応した。


 今まで、ジューネスティーンとシュレイノリアの事は気にかけていたのに、会う事もままならなかったメイノーマが嬉しそうに話に乗ってきた。


 その様子を黙って見ていたメイリルダは、人見知りをしていたシュレイノリアを庇うようにして、黙ってジューネスティーンとセルレイン達の様子を伺っていたのだが、セルレイン達がジューネスティーンの作った剣に対して最初に見た時とは違い評価が高くなった事に喜んでいた。


 メイリルダは、セルレイン達にジューネスティーンとシュレイノリアを知ってほしい、そして、好感を持って欲しいと思っていた。


「ねえ、こんな工房の中で剣を見ているだけじゃなくて、やっぱり、試し斬りをしてみた方が、よろしいのではないですか?」


 メイリルダの言葉で、セルレイン達は自分達が試し斬りをしようと思っていた事を思い出した。


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