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再会 6 〜斬る剣の見解〜


 セルレインは、剣を引き抜くときに引っ掛かる感じがしたのはハバキと鞘の隙間が殆ど無いように作られているから、簡単に抜けないようになっていると理解できた。


「なんだ、随分と沢山のパーツを使って作っているんだな」


 セルレインは、自分の知っている剣とは随分違うと思ったように言った。


 一般的な剣は、剣を作ると一緒に柄も鍔も、その金属で一体型として作ってしまう。


 たまにはつばだけを後から取り付ける事もあるが、剣を使用する者が柄や鍔等を別のパーツで作られていると外れてしまう事を嫌うので一体型になっている剣が一般的なことから、ジューネスティーンの作った剣は多くのパーツから作られている事からセルレインには気になったようだ。


 そして、視線を刃側に向けた。


 その刃は綺麗に研ぎ澄まされており、刃の表面は鏡面仕上げとなっていたので、セルレインは、自分の顔が写るまでになっている事に驚いた。


 メンバー達は、セルレインの態度もだが、抜かれた剣にも気になったようだが、セルレインが剣を抜いているので遠目に見るだけだった。


 ただ、横に避けていたウィルザイアとアジュレンは、セルレインの横顔を確認しているだけだが、刃を見て表情が変わったことは直ぐに分かったようだ。


 その表情から、ウィルザイアもアジュレンも、セルレインが見ている剣に違和感を感じていると伺えた事を気になるように見ていた。


 自分達の剣に対する考えはメンバー達が言っていた通りなのだが、セルレインの表情が変わったことで、その考えに何らかのほころびが生じたように思えた。


 セルレインは、周囲の様子を気にする事は無く、ただひたすら剣に写る自分の顔を見ていたが、自分の方に刃を向けると研ぎ澄まされている事に気がついた。


 そして、切先を窓にかざして光を当てると、ヤイバの頂点が光を反射する事もない。


 一般的な剣なら、光の方向に切先を向けて刃の頂点を見ると、刃の先端に1本の光の線が見える。


 刃の頂点に光が見えるという事は、先端が尖っていない事になる。


 一般的には、斬る剣というのは叩きつける事で骨を砕く事にあるので、剣の刃に鋭敏さは必要としないと思われている事もあり、これ程研ぎ澄まされてはいないが、ジューネスティーンの剣は、刃の頂点に線が見えない程、研ぎ澄まされていた。


「すごいな。こんなに綺麗に研ぎ澄まされている剣を見たのは初めてだ」


 セルレインが、ジューネスティーンの剣を方向を変えながら眺めていると、後ろの方に居たアイカペオラが動かす剣を目で追っていて何かに気がついたような表情をした。


「ねえ、セルレイン。良く切れる包丁は、包丁の重さだけで切れると言うわ。だから、肩にも腕にも力が入らなくて済むのよ。余計な力を入れる必要が無いから、指を切ったりとかしても深く入らないのよ。でも、切れない包丁は、力を入れて切るから、ミスして指に刃を入れると傷が深くなってしまうのよ。だから、良い料理人というのは、道具、つまり、包丁は、その日の仕事が終わると必ず研ぐのよ」


 窓とセルレインの掲げた剣の方向が、後ろにいたアイカペオラと重なった時があったので、その時に、剣の輝き具合が違うと思い、自分が料理をする際に使う包丁に例えて話をし始めた。


「遠目で見ただけだから何とも言えないけど、その剣の刃は研ぎ澄まされているから、きっと、斬れ味が私達が持つ剣とは全く異なると思わ。セルレイン、ちょっといいかしら」


 そう言うとアイカペオラはセルレインの横に行った。


「その剣貸してくれる。ああ、鞘は持っていてね」


 そう言うと、むき出しになっている剣をセルレインから受け取った。


 アイカペオラは、右手で柄を持つと親指を刃の側面に当て、その指を軽く峰側に向けて軽く引いた。


「うん。いい感じよね。刃の先端が綺麗に研ぎ澄まされているから、指紋が軽く引っ掛かるのよ。良く切れる包丁と一緒だわ」


 満足そうな表情でアイカペオラは言うと、ジューネスティーンを見た。


「ねえ、ジュネス君だったわね。これを研いだのは、あなたなの?」


 そのアイカペオラの満足そうな表情が、ジューネスティーンには眩しく見えた様子で少しはにかんだようになっていた。


「ええ、僕のような者では、研ぎに専門の職人に出す事はできないので、自分で研ぎました。それに、ここには、道具もかなり用意されておりましたし、足りない道具を買いに行った時、その道具屋さんに詳しく使い方を教えてもらえたので大変勉強になりました」


 その答えにアイカペオラは満足するような表情をするが、気になることが出てきたようだ。


「ねえ、ジュネス君。君は、ここに来てから1年よね。いつから、この剣を作り出したの?」


 ジューネスティーンは、何でそんな表情をするのかと思ったようにアイカペオラを見た。


「剣は、1ヶ月位前だったかな」


 それを聞いて、アイカペオラだけでなくセルレイン達も驚いた表情をした。


「ねえ、じゃあ、この剣を研いだのって、つい最近よね。それより前に剣を研いだりとか、包丁を研いだりとか、何か研いだことはあったの?」


 ジューネスティーンは、何でそんな事を聞くのかというような表情をした。


「いえ、研いだのは、この剣が初めてです。それまでは、剣を作るつもりは無かったので、鍛治もしていませんでした」


 そのジューネスティーンの答えにセルレイン達は驚いていた。


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