再会 2 〜1年ぶりの再会〜
ギルドの寮の門の前では、メイリルダの後に付いて行こうとしたセルレイン達が門番に止められてしまった。
しかし、メイリルダが説明した事で、エリスリーンからの通達された冒険者パーティーだと分かり面倒事になることもなく寮内に入れてもらえた。
セルレイン達にしたら、初めて入るギルドの職員寮なので、少し緊張気味に周囲を確認しながら歩いていた。
ここは、メイリルダのように現地採用の職員だけじゃなく他国から転勤してくる職員も居るので、ギルド支部の隣に職員寮が用意されていた。
ギルドは、大金を扱う事もあり人の出入りについて、厳しい扱いがされていたが、ジューネスティーン達の転移によって、より厳重になっていた。
寮内に入ると、メイリルダは鍛治工房に向かったので、セルレイン達もその後に続いて歩いて門から一番遠くに建てられている鍛治工房まで歩いていった。
鍛治工房に着くと、メイリルダは自分の家に入るように入口の扉を開け中に声をかけた。
「ジュネス、居る? お客さんよ」
メイリルダは、そう言って中に入って行った。
セルレイン達は、工房となれば管理者が居て、その人に許可を得る必要があると思ったので後に続いて入っても良いのかと思ったようだ。
メイリルダは、ギルドの職員なので問題ないだろうが、セルレイン達としたら勝手が分からなかった事もあり続けて入って良いのか気になっていると、中に入って行ったメイリルダが戻ってきて入口から顔を出した。
「何しているの? さ、入って」
戸惑っていたセルレイン達にメイリルダは声を掛けるだけかけると、セルレイン達は心配そうにメンバー達の表情を見ていたが、メイリルダはセルレイン達を気にする事もなく奥に入ってしまった。
セルレインは、周りの様子を確認するが、全員がセルレインが工房に入るのかどうかを確認するように見ていただけだったので、セルレインは仕方なさそうに工房の中に入った。
それを見て残りのメンバー達はホッとした様子で後に続いた。
鍛治工房の中は、全員が入っても十分に広い工房だった。
その奥の方にメイリルダが、少年と話をしている姿が見えた。
そして、その少年の後ろに隠れるように少女が居た。
それは、セルレイン達が助けた少年と少女だった。
少年は気絶したまま背負って、少女はタンカを使ってギルド支部まで運んだので、その時に2人の顔は確認していたので、メンバー達には懐かしい顔だった。
1年経とうが、その時の面影は簡単に忘れられるものではない。
セルレイン達にとっては1年ぶりの再会なのだが、ジューネスティーンもシュレイノリアも面識も無い冒険者パーティーとなる。
ジューネスティーンは、助けられた時気絶してしまい顔を見ていたとしてもセルレインだけだが意識を失う寸前に見ただけなので緊張気味にしていたが、シュレイノリアとしたら、命を失う直前に助けられた事もありセルレイン達の顔は全く覚えが無かったようだ。
そして、シュレイノリアはギルドの職員とならある程度の面識を持っている事もあったが、冒険者のパーティーと話す事も今まで無かったので驚いているようだった。
「この人達は、砂漠で、あなた達を助けてくれた人達だけど、覚えてないかな?」
メイリルダが、ジューネスティーン達に話しかけるのだが、その時の状況を知っているセルレイン達は自分達の事を覚えているのか疑問だったようだ。
「うーん。一番、手前の人は、なんとなく覚えがあるような気がするよ」
ジューネスティーンは、セルレインの顔を見て答えた。
気絶する寸前に見た顔を、なんとなく見た覚えが有ったようなので、セルレインは少しホッとしたようだが、他のメンバー達は、やっぱり見られてないのかと、若干、ガッカリ気味にしていたが、メイノーマだけは、そんな事を気にすることもなくニコニコしていた。
ただ、出会った時の様子を詳しく聞いていなかったメイリルダとしたら以外そうな表情をしていた。
「そうなの?」
「うん。だって、岩の上で倒れた後、気がついたら病室のベットの上だったんだよ。最初に話をしたのだって、僕はメイが一番最初だよ」
ジューネスティーンに言われてメイリルダは、そうなのかと納得したようだ。
「そうだったの。じゃあ、だったら、自己紹介からね」
そう言うと、メイリルダは、ジューネスティーンの横に立って肩に手を置くと、セルレイン達を見た。
「この男の子が、ジューネスティーンよ。いつもは、ジュネスと呼んでいるわ。あなた達が最初に助けてくれた少年ね」
メイリルダが紹介すると、ジューネスティーンは軽く会釈をした。
「よろしくな」
セルレインは会釈に反応するように答えたので、メイリルダは、シュレイノリアを紹介しようと肩に手を置いて、ジューネスティーンの後ろから出そうとしたが、出ようとしないので仕方なさそうな表情をしつつセルレイン達に話しかけた。
「それと、後ろにいる女の子が、シュレイノリア。この子は、シュレと呼んでいるわ。ちょっと、恥ずかしがっているみたいね」
ちょっと困ったように言うと、メイノーマが、セルレインの横を抜けてスタスタとジューネスティーンの前まで来ると、少し屈んでジューネスティーンと視線の高さをそろえた。
「こんにちは。私はメイノーマよ。君が魔物に狙われていた時、一緒に居たのよ。あの時より、少し背が伸びたみたいね。あの時は、簡単に抱けたけど、今は、ちょっと難しいかもしれないわね」
「はい」
ジューネスティーンは、メイノーマの顔が近いと思ったのか少し恥ずかしそうに答えた。
10歳前後となれば、第二次成長期となるので、少し見ないだけで驚くほど変わってしまう事があるのだが、気絶していたジューネスティーンを一度抱えていたメイノーマは、その時の様子を思い出しつつ成長を喜ぶような表情をした。
「後ろは、シュレちゃんね。女の子だから人見知りしちゃったみたいね」
ジューネスティーンの後ろに隠れて、メイノーマをチラ見しているシュレイノリアを可愛いと思った様子で笑顔を向けていた。
本来なら、セルレインが行うことなのだろうが、メイノーマは待ちきれずにセルレインより先に声を掛けていた。