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セルレイン達の常識 20


 セルレイン達は、転移者であるジューネスティーン達を預かる事の重大さに気がついた。


 親の居ない転移者ともなれば、親から教わるであろう事も知っていて当たり前の事も知らない可能性があるが、セルレイン達は親になった経験の無い者ばかりなので、ジューネスティーン達の親代わりが出来るのか心配になった。


 そんな中、アイカペオラが何かに気がついたようだ。


「ねえ、今まで、……。って言うか、1年間はギルドが2人の面倒を見ていたのでしょ。だったら、その人と協力しながらなら、何とかなるんじゃないの?」


 それを聞いてウィルザイアがセルレインを見た。


「そう言えば、ギルドで2人の面倒を見ていた職員が居たって言ってたわね」


 その一言を聞いて、セルレインは、微妙な表情を浮かべた。


「ああ、居たな」


 残りのメンバーは2人の会話を聞いて、希望が見えたようにセルレインを見た。


「受付嬢のメイリルダだったはずだ」


 セルレインが、名前を言うとメンバー達は微妙な表情をした。


 パーティーメンバーは、メイリルダと聞いて、あまり良い印象が無かったが、メンバーの1人を除いて表情に現れていた。


 そんな中、最初に口を開いたのはアイカペオラだった。


「ねえ、メイリルダって、受付嬢の中では1番下っ端じゃなかった? 私は、結構ドジっ子ってイメージなんだけどなぁ。結構、テーブルの角とかにぶつかっていたそうにしているって、そんな感じなんだけど」


 アイカペオラは、メンバー全員を代表するように大丈夫なのかと言うと、それに釣られるようにメイノーマが口を開いた。


「ああ、あの子、最近見ない時が有るなと思っていたら、2人の面倒を見ていたのね」


 アイカペオラの言葉に、呑気に反応したメイノーマなのだが、それを見ていたアジュレンは、その発言の中にメイリルダより年下のメイノーマが使うような言葉じゃないと思ったようだ。


「あの子だって。……。メイノーマは、メイリルダとなら気が合いそうだと思っていたんだがな。お姉ちゃん、お姉ちゃんって言って話を聞くみたいになるかと思ってたよ」


 揶揄われたメイノーマは、ムッとして何か言おうとするが、アイカペオラを止めるとアジュレンを睨みつけた。


 ここで、メイノーマとアジュレンの口喧嘩を避けようとした。


「ああ、メイリルダと転移者の少年達だと、親と言うより歳の離れた姉さんだな。子供を育てた事もないだろうから大丈夫だったのか?」


 メイリルダが、話を逸らすように若かった事で転移者の親代わりにはならないのではないかという不安要素が、メンバーの中には上がっている様子なのでセルレインは少し焦り出していた。


 転移者には血の繋がった相手が居ない天涯孤独の身であり、通常の子供であれば、自分が知らなくても周りに自分の親を知る者が居たり親戚とか親の知人が存在する事も有るが、突然、この世界に現れた転移者では絶対に転移者の家族を知る者は居ない。


 それにより、自分達への負担、特に精神的な負担が大きくなってきているように、メイリルダの名前を聞いていた者達に思わせたと考えた。


 セルレインは、メンバー達の表情を確認しつつ、気まずい雰囲気を何とかしようと思った。


「ま、まあ、乳飲み子を育てるわけじゃないんだから、メイリルダだって大丈夫だろうさ。それに、ギルドの職員になる位だから、その辺の親より、しっかり教えてくれているかもしれないぞ」


「そうだな。俺達、冒険者のような誰でもなれるような職業じゃなく、仮にもギルド職員なんだから、道徳面でも俺達より知識は豊富だろう」


 焦った様子のセルレインを、ストレイライザーがフォローするように言ってくれたので周りも納得し始めたようだ。


「いずれにしても、私達は、その転移者達に道徳面も含めて、自制心とかも教えていく必要がありそうよね」


 ウィルザイアは、不安要素が増えた事から心配そうな表情をした。


 そんな表情をすると、セルレインが睨んだので、ウィルザイアはマズいと思った。


 ウィルザイアは、セルレインを補佐する副リーダー的な存在なので、後ろ向きの発言はメンバーに不安を与えるので、それを咎めるように睨んだ事に気がついてマズイと思った。


「ま、まあ、それは、子供なんだから、仕方が無い事よ。どんなにいい新人だって、なんだかんだでメンバーと倫理観の違いとか、道徳感の違いを擦り合わせていくのだからぁ。1年も生活していたのなら、その辺の新人と大差は無いはずよ」


 ウィルザイアは、慌ててフォローする言葉を口に出して、メンバー達の不安を取り除こうとした。


 しかし、ウィルザイアは、数少ない魔法職という事から、メンバーとしても冒険者としても大事に扱われていたが、自身の魔法を遥かに凌駕する魔法職が2人も入ってくる事によって、自分の存在価値が薄れるように思えた。


「私、きっと2人の魔法を見て自分との能力差に凹むでしょうし、教える魔法も無いから、戦略や戦術といった部分は、あなた達に頼むわ。自分より魔法力の弱い私が言うより、剣や槍や弓の腕は、あなた達の方が優れているでしょうし、自分より弱い魔法士より体力的に勝っている人に教えてもらった方が良いはずよ」


 ウィルザイアは、自分には、ほとんど何もする事が無いような話し方をしたので、周囲は困ったような表情をした。


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