セルレイン達の常識 19
セルレインは、強すぎる魔法を持つシュレイノリアに対して、その能力より遥かに低いウィルザイアでも指導が出来るような事を言った事に対して、メンバー達は不思議そうに何でなのかというような表情でセルレインを見た。
圧倒的な魔法力の違いがあるシュレイノリアに対して、ウィルザイアが何を教えられるのか気になったが、メンバー達の不思議そうな表情とは裏腹に、セルレインの表情には余裕がうかがえた。
「ほら、そんな大きな魔法は、俺達がよく行く地下遺跡のように限られた空間でもだけど、料理をするための種火を作る時にも使えないだろう。要するに魔法も使い方によっては害にもなるし利にもなるって事さ」
それを聞いていたメンバー達は、何を当たり前の事をいうのかというような表情をしていたのだが、ストレイライザーだけは納得した表情をした。
「狭い場所での大魔法は、空間全部を飲み込んでしまうって事か。……。確かに、使えない魔法じゃ意味がないからな」
その一言を聞くと、アジュレンが何か閃いたような表情をした。
「ああ、そう言うことか。その子の魔法が魔物を倒すだけじゃなくて、自分にも被害が出るようだと全く無意味だよな。ああ、無意味と言うより害にしかならないって事か」
アジュレンも納得できたようだ。
2人の話を聞いて、エリスリーンの話を聞いていなかった残りの女子2人も何かに気がついた。
「そうね。私達の戦っている魔物って、大きくても私達と同じ位の背丈か、むしろ、それよりも小さいものが多いのだから、そんな魔物に100メートル級の火球なんて不要よね」
「そうよね。言う通りよね。そんな魔法だと自爆の可能性のあるから怖くて使えないわね」
メイノーマも、アイカペオラの話を聞いて、自分達のよく行く地下遺跡の空間を思い出して納得していた。
メンバーの4人が気がついてくれたことで、セルレインも落ち着いた。
「そうなんだ。俺たちは、その強力すぎる魔法を抑えて使う必要性を伝えるんだ。力というのは、強ければ強いほど使いたいと思うだろうけど、それを抑える事も重要な事だと教える」
「驕り昂ぶりを抑えるってことか。強い奴に偉そうにされるのって、ムカつくからな」
セルレインの言葉に最初に反応したのは今度もストレイライザーだった。
「なるほどな。強すぎる力って、どうしても最大限の力を出したいって思うけど、見せびらかすような使い方をさせないための教育か」
「ああ、そうだな。新しい武器とかって、どうしても直ぐに使いたくなるし、それを抑えるのって、……。そうだな。新人の頃って気持ちを抑える事が難しかったな」
セルレインの言葉を受けて、アジュレンも自分の事を思い出したように話し出したので、ウィルザイアも、徐々に気持ちが落ち着いてきたのか表情が柔らかくなってきた。
「そうよね。強いだけじゃダメなのかもね。使い方が大事なのよね」
ウィルザイアが、ポロリと言うので、メンバー達はウィルザイアの気持ちが落ち着いてきたと思いホッとした。
「そうよね。魔法に関しては、ウィルザイアに指導してもらう事が一番いいよね」
「私らは魔法が使えないから、魔法に関しては姉さんに言ってもらえる方がありがたいわ」
シュレイノリアと自分の魔法力の違いを気にしていたウィルザイアに、アイカペオラとメイノーマが凹んだ気持ちを庇うように話をすると、ウィルザイアも希望が見えてきた。
「そうよね。これから先、そんな魔法力を持っているのなら、使い方を間違ってしまったら、国から目をつけられたり悪い人達に利用される可能性もあるわね」
「それだけじゃないさ。自制心を抑える事を学ばなければ、周りの人達の心は離れてしまう。俺達は、2人の力を良い方向に導くためにあるんだ」
納得してきたウィルザイアに、セルレインはジューネスティーン達へ伝える内容を話した。
「そうよね。小さい時から悪い事と良い事を教わるって大事よね」
セルレインの話を聞いていたアイカペオラは子供の情操教育が大事なことを思い出したように言ったので、その話を聞いていたメイノーマも遊んでいる子供達の事を思い出していた。
「うん。私も子供達と遊ぶけど、その子供達の性格って、お父さんやお母さんの考え方が子供に出ているわ。だから、兄弟姉妹は考え方も、よく似ているけど、あの子達って転移者だから親が居ないのよね」
メイノーマは遊んでいる子供達の事を思い出したことで、ジューネスティーン達に親が居ない事によって、親から当たり前に教えてもらう事が教わる事も出来ない環境に気がついた。
そのメイノーマの一言が、他のメンバーにもジューネスティーンとシュレイノリアに親が居ない事を気付かされた。
「なあ、俺達って2人の親代わりって事にもなるのか?」
アジュレンが、ポロリと言葉にすると周りもその事に気がついていたが、改めて言葉にされると、誰も子供を持った事が無い事から、自分に親代わりができるのか心配になった。
「そ、そうなるのかしら」
メンバー達に重い空気が立ち込めてしまった。