セルレイン達の常識 13
セルレイン達は、ギルドに前金の中銀貨1枚をギルドの個人口座に預けると、時間的にも丁度いいかと食堂に移動した。
それぞれが、自分の食べるものを頼むとセルレインを見た。
「リーダー、それで、さっきのお金について教えてくれませんか?」
最初に口を開いたのは、弓使いのアイカペオラだった。
そして、高額な前金が気になったのは、残りのアジュレンとストレイライザーとメイノーマの3人も一緒だった。
アイカペオラが聞くと自分達も知りたいとセルレインの顔を見た。
「なあ、去年、助けた転移者がいただろう」
「あっ! あの股間を立たせていた子と、瀕死の重症だった女の子よね。女の子も無事だったんだ」
セルレインの言葉を聞いて、直ぐに反応したのはメイノーマだった。
メイノーマは、2人の事を気にしていたのだが、ギルド側の意向で会うことができなかった事が、とても残念に思っていた。
「そうか、あの2人、元気だったんだ」
嬉しそうに言うのだが、周りは、そんなメイノーマをジト目で見ていた。
「メイノーマ。あの男の子の顔より股間を覚えているのね。子供好きだと思っていたけど、実は、そっちの方に興味があったのかしら」
「それって、犯罪だぞ」
メイノーマの言葉に、アキカペオラとストレイライザーが反応した。
「ひょっとすると、メイノーマは、顔じゃなくて股間の形で覚えているのか?」
ウサギの亜人でもあるアジュレンが、不思議そうにぼやいたのを聞いてメイノーマは顔を真っ赤にした。
「ヒョウの亜人は、顔貌より股間を見て誰か判断しているのか?」
アジュレンの言葉には、メイノーマもイラっとし、真っ赤にした顔のままアジュレンを睨んだ。
「何言っているの! 転移してきた時は、スッポンポンだったじゃないの! あの状態で岩の上に立って、こっちを見ていたら目に入らないわけないでしょ!」
メイノーマは言い訳をするが、アジュレンとしたら揶揄っているだけだったが、揶揄われたメイノーマとしたら、アジュレンのセクハラ発言を聞いて、たまったものではないので鬼気迫る表情で睨みつけた。
アジュレンとしたら10歳の少年の丸裸を見た事を揶揄っただけだったが、メイノーマの表情から少し揶揄いすぎたと反省気味になった。
「あ、いや、すまない」
アジュレンは、少し焦ったように答えた。
「アジュレン。女の子に、その言い方は失礼よ」
アイカペオラは、自分の言った事を忘れてしまったというように、アジュレンを非難したので、アジュレンは、お前が、それをいうのかという表情でアイカペオラを見たが、その様子を見ていたウィルザイアは話を止めなければと思ったようだ。
「全く、アジュレンは女心が分かってません。それに、メイノーマも女の子なのだから言動には気をつけるのよ。あなたが、変な事を言わなければ、アジュレンもアイカペオラだって変なツッコミを入れる事は無かったのだからね」
確かに、メイノーマの発言がスタートで周りが反応したことは事実であり、アジュレンは調子に乗りすぎた。
このまま放っておいたら、3人にメイノーマがいじられまくり話が進まなくなる可能性を感じたようだ。
「今日は、そんな話をするためじゃ無いのよ」
ウィルザイアは、そう言うとセルレインを見た。
「あんた、リーダーでしょ。話が変な方向に進んだら、戻す位の事はしてよね。それが、リーダーの役割でしょ!」
「あ、ああ、そうだったな。ありがとう、ウイルザイア」
ウィルザイアは、少し面白く無さそうにセルレインを見て言ったので、セルレインは少し申し訳なさそうな表情で答えた。
本来であれば、セルレインが言わなければならないのだろうが、ウィルザイアに言われてしまったので出遅れてしまったことへの後ろめたさもあったようだ。
すると、セルレインは一つ咳払いをした。
「ああ、俺達の依頼されたのは、去年、俺達が助けた2人の少年と少女が冒険者として一人前になるように指導することだ」
それを聞いた4人は、いまいち納得が出来ないようだ。
「ああ、中銀貨1枚を、さっき、渡したが、あれは、前金で、終わった時は、その10倍の金貨1枚が支払われる」
さらに高額な金額を提示されて、驚くと同時に疑問も浮かんだようだ。
「ねえ、セルレイン。なんで、そんなに高額なの?」
「そうよ。新人の訓練に、そんな高額な金額なんて考えられないわ」
最初に口を開いたのは、アイカペオラだった。
そして、その話にメイノーマが乗ってきた。
だが、アジュレンとストレイライザーは、ただ、黙って話を聞いているだけだった。
「この報酬には、2人の護衛も兼ねているが、対人戦の必要は少ないと思ってくれ。そういった事に関しては、ギルドが行う事になっている」
アジュレンとストレイライザーは、セルレインの話を聞いて、最初は神妙な表情をしたが話を最後まで聞いて表情が緩んでいた。
「それに、2人は魔法を使えて、シュレイノリアの魔法は、我々が知りうる魔法を遥かに凌駕する程の能力を持っているという話だ」
それを聞いて、女子2人は魔法が使えるなら冒険者として成功するだろう程度に思ったようだが、男子2人は解せないといった表情をした。
男子2人には、そんな圧倒的な魔法を扱う転移者を何で自分達のパーティーで指導するのかと思ったようだ。