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セルレイン達の常識 9


 セルレインとウィルザイアは、転移者が計算方法を知っている事についての答えが、“何となく知っている”だけだと聞いて気が抜けてしまった。


「ああ、すまないな」


 2人は転移者と、ほとんど面識が無いだろう事を、エリスリーンは、失念していたことに気がついた。


 エリスリーンのように、始まりの村のギルドマスターをしており、エリスリーンは、エルフという事もあり今年で351歳となる事から、長年ギルド支部のギルドマスターをして多くの転移者と接触している。


 エリスリーンは、自分を基準に考えてしまっていたので、セルレインとウィルザイアが、初めて転移者と接した事を忘れていた。


「それより、シュレイノリアの魔法についての話をしよう」


 エリスリーンに言われて、2人は、シュレイノリアの話を聞く事を忘れていたことに気がついた。


「シュレイノリアの魔法は桁違いだ。威力は、とても大きいらしい事も、それに一度に扱える魔法の数も多い」


「え、ちょっと待ってください。複数扱えるって、どういう事何ですか?」


 ウィルザイアが、エリスリーンの言葉を遮った。


 ウィルザイアは、魔法が単体で起こす現象だと思っていた事もあり、エリスリーンの一度に扱える魔法と言われて、そんな事はありえないと言わんばかりに反論した。


「魔法は、一つ一つでしょ!」


 エリスリーンも、その通りだと言わんばかりに頷いた。


「そうなのよ。魔法は、ファイヤーボールもアイスランスもウインドカッターも、一つ一つ扱うのだけど、シュレイノリアは、どの魔法も一度に複数個を発生させるらしいのよ」


 エリスリーンは、常識とは異なるシュレイノリアの魔法についての説明を困ったような表情で答えた。


「的に描かれた模様は、中心に大きな点と、その点を中心に、周りに丸い同心円が何個か描かれているでしょう。シュレイノリアは、その外側の円にそうように、小さなアイスランスを、的の手前1メートル位の所に作ると、その的の円に沿ってアイスランスを当てたのよ」


 ウィルザイアは、今の話を聞いて状況を頭に思い浮かべたような表情をすると、何だか真剣な表情で考えだしてした。


「その時の魔法は、的から1メートル位の位置に現れたアイスランスが、高速で打ち出して、外側の円に綺麗に当たったらしいのよ」


 その話を聞いていた2人の反応は違っていた。


「まあ、的の手前1メートルから当てるのなら、外れるなんて事は無いんじゃ無いですか」


 セルレインは、的から1メートルと聞いて、その程度の距離なら、剣の間合いでも有ることから、練習したら、その位の事はできると思ったようだが、その横に座っていたウィルザイアは、黙ったまま何かを考えていたので、セルレインは不思議そうに見た。


「セルレインは、魔法を使わないから分からないだろうけど、魔法というのは、一度に出せる魔法は、一つだけだと言われている。ファイヤーボールにしても、アイスランスにしても一つ出すと、それを目標にぶつけるのよ。そして、また、発現させて発射するの。だから、一度に何十個ものアイスランスを出すなんて魔法は、何処の魔法宗派にも無いのよ」


 エリスリーンの説明を聞いて、魔法が使えないセルレインは、そんなものなのかと思ったようだ。


「ありえませんよ! そんな事。魔法を詠唱して出せるのは一つだけ、攻撃用の魔法は、そうなのよ。それが、当たり前の事なのよ」


 ウィルザイアは、信じられないというように話したが、セルレインとしたら、そんなものなのかと思っただけだった。


「それとね、的の手前、1メートルと言ったけど、2人が立っていた位置は、的から、20メートルほど離れたところなのよ」


 それを、セルレインは、何となく聞いていただけだったが、ウィルザイアは信じられないというように聞いていた。


「やっぱり、魔法を扱う者にしか、この異常さは気がつかないみたいね」


 2人の反応の違いを見て、エリスリーンは呟くように言った。


 エリスリーンが、セルレインに説明をしようと思っていると、ウィルザイアが口を開いた。


「セルレイン。あのね、魔法というのは、可能な限り自分の近くに発現させて、それを的に当てるのよ」


 ウィルザイアが説明を始めるのだが、それだけでは、セルレインには理解できず、その後の言葉を待つようにウィルザイアを見た。


「魔法は、詠唱をして発動させるのよ。だから、自分の近くに魔法で出来た炎とか水とかを、的にぶつけるようにするの。魔法を発動させるなら、自分から近い方が大きなものが作れると言われているわ。だから、20メートルも離れたところにある的の1メートル手前にアイスランスを作ったなんて有り得ないのよ」


 それでも、セルレインはピンときてない様子で話を聞いていた。


「しかも、一度に数十個って、……。まあ、20メートル近く離れていたなら小さくなっても仕方がないような気もするけど、数十個のアイスランスを出したとは、……。有り得ないわ」


 魔法士であるウィルザイアからしたら、一度に複数個のアイスランスを発現させるなんて事は考えられない。


 その様子から、セルレインも、そんなものなのかと思ったようだ。


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