セルレイン達の常識 8
ジューネスティーンの魔法力について、セルレインとウィルザイアは話を聞いて、自分達の魔法に対する常識を遥かに上回っていると思ったのだが、もう1人の転移者で有るシュレイノリアは、更に、それ以上のようだと匂わされた事から嫌そうな表情をした。
ウィルザイアとしたら、自分より圧倒的な魔法力を持つ2人に先輩として、どう接したら良いのか、セルレインとしたら、そんな戦闘力を持つ2人に、どんな戦略を教えればいいのかと悩んでしまった。
セルレインとしたら、そんな圧倒的な戦闘力が有ったら戦略も戦術も必要なのかと思った。
「それで、シュレイノリアなのだが、あいつは、常識外の能力だと思った方が良い」
「「……」」
セルレインとウィルザイアは、エリスリーンが何を言っているのかと思った様子で見たことから、2人が、この後どうなるのか気になった為3人は沈黙してしまったが、それをウィルザイアが破った。
「あの! さっき、スクロールの魔法紋の間違いを簡単に見つけたといってましたけど魔法力もなのですか?」
さっき、スクロールの魔法文字も文法も簡単に覚えてしまった事を聞いた事もあって、魔法もそれなりに強いだろうことは分かったのだが、ジューネスティーンの魔法力を聞いて、一般的な魔法力よりも強いのに、どうも、自分の考えている以上の力を有しているように思え、ウィルザイアは自分の魔法に自信がなくなってしまうように思えた。
そして、依頼を受けるにあたり、能力については聞いておかなければならない事も分かっているので、義務として聞いてはいけないというより、自信を無くすような気がして聞きたくないという思いもあった。
「ああ、シュレは魔法に対して探究心が非常に高い。特に魔法が何で発動するのかとか、魔法の詠唱の必要性とか、宗派による詠唱の違いとかにも疑問を持って調べていたらしい」
ウィルザイアは、魔法の詠唱は宗派によって唱える詠唱が違う事を知っている。
しかし、それは宗派が違うからだ程度にしか考えていなかった。
「シュレイノリアは、何で詠唱が必要なのかと、職員が嫌がる程質問をしていたそうよ」
ウィルザイアは、何を言っているのかと思った表情をした。
ウィルザイアにしたら、魔法を発動させるために詠唱をするものだと思っており、魔法の宗派によって違いが出るものだとだけしか認識はしていなかったので、詠唱の必要性などや詠唱の内容の違いなどと考えた事も無かった。
「何で、そんな事を言うのかしら?」
ウィルザイアとしたら当たり前の事なのに、シュレイノリアが詠唱自体に疑問を持った事が信じられないと思えたようだ。
「あの2人には、当たり前のことでも、それが何でなのかまで気にしているようなのよ。……。そうね、あの2人とって歩く事も何でなのか気になっているみたいなの」
「えっ? それって、どう言う事なんですか?」
セルレインが、話に入ってきた。
歩くなんて当たり前の事、目的の場所に行くための手段でしかない。
歩くに何が有るのか、当たり前の事だから考える必要も無い事はずなのに、2人はそんな事まで理由を考えるのか不思議に思ったようだ。
「ああ、あの2人は、歩く時に、どうして左右の足を交互に出すのかとか、最初に出す足が右なのか左なのかとかも、その理由が気になっているみたいなのよ。その時にも、腕を足と左右反対に出す事も気になっていたらしいわ」
セルレインは、何の事だと言うような表情をした。
その様子を見て、エリスリーンも同意見だと言いたそうな表情をした。
「あの2人には私達が当たり前のように思う事でも、その理由を知ろうとするのよ。だから、宗派による魔法の詠唱の違いとかも気になったらしいのよ」
それを聞いて、ウィルザイアは嫌そうな表情をした。
「な、何よ。そんな事まで聞いてくるの」
ウィルザイアは、本当に嫌そうな表情で呟いた。
そんな2人にエリスリーンは同情するような表情をした。
「ああ、あの2人、表情から心を読むわよ。だから下手な言い訳はしないようにしてね。嘘を見抜くとか簡単みたいよ。子供だと思って舐めた事をすると直ぐに見抜かれるわ」
それを聞いて、2人は更に嫌そうな表情をした。
「まあ、老齢な老舗の大商人というか、まあ、交渉毎に長けた人だと思っていた方がいいわ」
追い討ちを掛けられて、2人は面倒くさそうにした。
「「それって、本当に子供なんですか?」」
エリスリーンは、その返事に少しイラッとしたようだ。
「転移者の転移前なんて私は知らないし、今までの転移者から聞いた話でも転移前の事はあやふやなのよ。何だか、突然閃いたり無意識に使うのよ。ほら、計算なら転移者に聞けと言われるでしょ。計算方法をどうやって覚えたのかとか聞いても、全ての転移者は、こう答えるわ」
エリスリーンは、2人を一度見た。
2人にしたら、その答えは、これから先重要になると思ったようだ。
「何となく」
そのエリスリーンの答えを聞いて、2人は瞬きも忘れてエリスリーンを見るだけだった。