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セルレイン達の常識 4


 ジューネスティーンとシュレイノリアを狙った誘拐については、ギルド本部が面倒を見ることで、セルレイン達には迷惑が掛からないと分かると、セルレインもウィルザイアも2人を引き受ける方向に気持ちが動き出していた。


 セルレイン達が行わなければならない事は、冒険者としての基本を教えるこが主な仕事なら、自分達パーティーには大きな問題にはならないだろうと気持ちが変わってきていた。


「ねえ、セルレイン。誘拐をしようとする人達は、ギルドが面倒を見てくれるなら、大丈夫なんじゃないかしら」


「あ、ああ」


 セルレインが何も答えなかったので、ウィルザイアがセルレインに話し掛け、セルレインもウィルザイアの意見に賛成のようだった。


「だがな、俺達はパーティーなんだ。俺とお前だけで、決めてしまったら、マズいだろう。お互いに命を預ける仲間なんだから、メンバーに話しもせずに決めて、他の4人が納得できるのか?」


 それを聞いて、ウィルザイアも確かにその通りだと納得するような表情をしたが、ウィルザイアは、テーブルに置かれた中銀貨6枚と、セルレインを見比べていた。


「ねえ、通常ならセルレインの言う通りだけど、今回は、ギルドが私達に指導料を払ってくれるのだから、要するに、これはギルドからの依頼なのよ。仕事として引き受けるかどうかを考えればいいんじゃないの」


 今回は、ギルドからの依頼としてジューネスティーンとシュレイノリアが冒険者になるための基本を覚えるため、ギルドがセルレインのパーティーに依頼をしている事を改めてセルレインに伝えた。


 そう言われると、セルレインも納得するような表情をした。


「まあ、そうでもあるな」


 答えるとテーブルの上の中銀貨6枚を見てから、ギルドマスターのエリスリーンの顔を見た。


 そして、エリスリーンと目が合った。


 エリスリーンは愛想笑いをするが、その愛想笑いを見たセルレインは、ただの愛想笑いには見えなかったようだ。


「そうですよね。これは依頼なのだから、仕事として2人の新人を育てるって事ですよね」


「ええ、これはギルドからの依頼ですし、おっしゃる通りです」


 エリスリーンは、セルレインの話を笑顔で答えた。


 エリスリーンとしたら、何気ないやり取りとして答えただけだが、セルレインには、その当たり前の様子がプレッシャーとなって感じていた。


 エリスリーンは351歳となるが、長命なエルフなのでセルレインのように歳をとるのも遅いので見た目は70歳弱となるが、人属の70歳ともなれば、31歳のセルレインからしたら、長年仕事をしている人のキャリアからくるオーラに当てられてしまったので動揺した表情を見せていた。


「ねえ、うちのメンバーが助けた2人なんだし、それに、あの子供好きのメイノーマなんて、飛び跳ねて喜ぶわよ。あの子、あれから会うことが出来ないって嘆いていたのだから、ここで断ったら、あなた首閉められるわよ」


 セルレイン達のパーティーは、ジューネスティーンの転移時に助け、その翌日、瀕死のシュレイノリアを助けているので、ジューネスティーン達にとって命の恩人とも言える人達になる。


 偶然とはいえ、セルレイン達のパーティーが、転移者の現れる場所に居合わせたことで2人の命は救われたと言っても過言ではない。


 そんな中、子供好きのメイノーマは、2人の事を常に気にしていた。


 ギルドとしては、その前に転移してきたジェスティエンの発明した火薬と銃の事もあって完全に隔離するように振る舞っていた事もあり、助けたセルレイン達のパーティーでさえ2人の転移者の様子は聞くことができなかった。


 メイノーマとしたら、時々、顔を見たいと思っていたらしく、ギルドの受付で話を聞くようにしていたが、何も教えられる事はないと突っぱねられていた事もありガッカリしていた。


 そんな事もあったので、この話を聞いてメイノーマは大喜びするであろうことは窺える。


 セルレインとしたら、残りのアジュレン、ストレイライザー、アイカペオラの3人が、どう思うかと気になったようだ。


「セルレイン。今回の依頼の報酬は、前金として1人中銀貨1枚、それに、終わった後には、金貨1枚になるのよ。冒険者の稼ぎとしたら、前金だけでも半年は楽に暮らせる金額なのよ。だったら断る必要も無いだろうし、それに、メンバーの誰かが反対だったとしても、前金の中銀貨を見せたら嫌とは言わないと思うわ」


 ウィルザイアとしたら、この高額報酬を考えたら、新人冒険者の育成の金額としては、相当に高い金額な事は理解しており、リーダーであるセルレインが引き受けると言ってくれれば終わると思っていた。


「ああ、誘拐の危険はあったとしても、それは、ギルド側が対応してくれて、俺達は2人の新人を育てていけばいいわけなんだ」


 セルレインは、そう言うと黙って考えていたが今の言葉で踏ん切りがついた様子でエリスリーンを見た。


「わかったよ。その新人は俺達のパーティーで面倒を見るよ」


 それを聞いて、エリスリーンは肩の荷が降りたように愛想笑いの笑顔から気持ちの乗った笑顔に変わった。


「ありがとう、セルレイン。よろしく頼むわ」


 そう言うと、自分の手前に置いてあった、中銀貨6枚をセルレインの前に置いて、受け取るようにと右手でどうぞとジェスチャーをした。


「わかりました。俺達のできる範囲の事は全て教えるよ」


 セルレインは、差し出された中銀貨6枚を手に取って答えた。


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