セルレイン達の常識 2
話題に出したジェスティエンについて、セルレインもウィルザイアも噂程度の話は知っている事が分かったので、本質についての話に迫る事も可能だとエリスリーンは考えたようだ。
「そうね。前回のジェスティエンの火薬と銃は、とんでも無い破壊力を持っているわ。ジェスティエンについては、ギルド本部に保護されてた形で活動しているのよ。そのおかげで、今度のジューネスティーン達が現れると、他国の活動も活発になっているわ」
セルレインは、そこまで聞くと何やら考えるような表情をしたが、ウィルザイアは何の事なのかと、まだ、話が繋がらず不安そにセルレインを見た。
エリスリーンは、2人の認識のレベルを合わせる必要があると思ったのか、そのまま、話しを続けるのだった。
「ジェスティエンの後の転移者なので、どうも、他国も自分達のテリトリーに確保しておきたいと考えているようなのよ。だから、2人だけだと誘拐される可能性が考えられるわ」
そこまでエリスリーンが説明すると、ウィルザイアも様子が理解してきたようだ。
火薬と銃の武器としての性能を考えると、どの国も欲しいと考えるだろうが、銃が広まってしまうと戦争のあり方が変わってしまう事もありギルドは銃が広がることを警戒していた。
場合によっては、見えない場所から狙撃されることも考慮に入れなければならない武器という事もあり、他国から、その技術が狙われている事もあり、その後に出現したジューネスティーン達の価値は、ジェスティエンの出現によって上がってしまい各国が探りを入れていた。
「なるほど、新たな何かを生み出す可能性のある転移者を、どの国も確保しておきたいというわけか」
セルレインがつぶやくと、それを聞いていたウィルザイアも、何だか嬉しくないような表情をした。
各国が、新たな転移者を自分の国で軟禁でもして新たな技術を確保しておきたい。
火薬のような画期的な発明でなくても、ギルドから販売される新製品だけを考えても、転移者の発明品は大きな利益もだが科学的な発展も考えられる。
ギルドが、製品開発に対して優位性を持っているのは、この転移者の保護によってもたらされている事は各国も分かっている。
だが、大陸の各国としては、安易にギルドと南の王国へ、直接的な攻撃をするような敵対行為は行う事はせず、お互いに牽制しあっており、今以上に大きな変化、特に大陸全体に飛び火するような戦乱になる事を嫌っていた。
表立った戦争を仕掛けるには、南の王国との経済的な力も、戦力も大きな差が有る事から表立った敵対行為を行う事は無かった。
大陸の各国は、自国の利益を考えたら転移者は確保しておきたいと、どの国も考えているのだが、西の砂漠の横に位置する始まりの村に出先機関を出しても良いと南の王国に認められているのはギルドだけとなっており、各国は、この始まりの村で表立って活動はできずにた。
その事もあって、各国は非合法要員を冒険者として潜り込ませる程度しか方法は無くなっている。
ここは南の王国の領土内であり、ギルドが始まりの村にも王国にも大きく貢献している事から南の王国もギルドを保護するように動いていた。
そんな事もあって、陰で暗躍する集団を使い誘拐を企てようと考えられていた。
軍隊を動かすより遥かに経済的だということを、それぞれの国も理解している事から、そのような方法を取るようにしていた。
その事に対応するため、ギルド本部としても転移者に対しては護衛を影から行うようにした。
お互いに表立った行動を見せずにはいるが、それぞれの国もギルドも互いの動きを把握するようにしていた。
互いが余計な動きをする事を牽制する中でも、自国の優位性を確保するために計画されており実行する機会を伺っている。
そんな中、ジューネスティーン達が冒険者として自立することで、始まりの村のギルド支部としても対応策を考えていた。
「今までの、あなた方の成績も確認させておりますから、ジューネスティーンとシュレイノリアを、あなた方のパーティーに預けたいのです」
セルレインとウィルザイアは、ギルドが提示してきた金額について理解できてきたのか表情が険しくなっていた。
報酬が高額なのは、2人の護衛も兼ねている事もあり、対人戦が考えられる事からリスクが高いと判断されたからだと、セルレインもウィルザイアも理解した。
魔物は、どちらかというと動物のような動きをするので、攻撃パターンは単純であるが、対人戦闘となったら人の知恵・技術・能力等、考慮する内容が多い。
報酬の高さは、リスクの高さに比例していると理解すると、2人は悩んだ。
いくらお金を持っていたとしても、リスクの高い代償を払う必要に迫られ、その金額では足りなかったり命を落とす可能性も考えなければならないと思うと、2人は依頼を安易に受けて良いのか考えてしまった。
2人だけの判断で、そのようなリスクも含めたメンバーを入れても良いのかと考えていた。