ギルドの方針
ジューネスティーン達が、冒険者となると決めた後、ギルドは、2人の方針を考えていた。
冒険者になったとしても、2人にギルド本部から護衛は入るが、遠巻きに監視だけなので、それなら、いっその事、どこかのパーティーに入れてしまった方が良いだろうと考えられていた。
しかし、どのパーティーに入れるかが問題になった。
新人が2人では生存率も低い事もあり、そして、今までジューネスティーン達は隔離されていた事で、冒険者と話をさせてもいなかった事もあり、ギルドとしては2人をこのまま冒険者として活動させても良いのか。
職員からは、どこかの冒険者に任せて、冒険者の基本を教えた方が良いのではないかという意見が出ていた。
一部から、前回の転移者であるジェスティエンのパーティーにという話も有ったが、ジェスティエンのパーティーは、南の王国内で活動中ではあるが、始まりの村に来る事はほとんど無い。
そして、ジェスティエンは、火薬と銃の発明者と言う事もあり、ギルド本部直属となっていたので、ジェスティエンのパーティーに入れる事は無理だと誰もが思っていた。
そんな中、候補に上がったのは、ジューネスティーンとシュレイノリアを助けたセルレイン達のパーティーだった。
ジューネスティーンの武器として支給したレイビアが気に入らなかった事で、2人が狩に出るまでの時間が稼げた事もあり、ギルドとして十分な時間も用意できた事もあった。
そして、セルレイン達のパーティーに依頼を出し、ジューネスティーンとシュレイノリアを一緒のパーティーとして、冒険者の基礎を教えさせる事になっていた。
ギルドは、ジューネスティーンが作っている日本刀が全て完成する時期に合わせた形で話をさせる事にしていた。
セルレインは、ギルドからの呼び出しに応じ、受付で担当の受付嬢に要件を伝えると、直ぐにギルド支部内の小会議室に案内された。
今までにギルドから呼び出された事は無かった事もあり、少し緊張した面持ちで指示された席に座った。
その際、同伴者1人を認められていたので、魔法職のウィルザイアを連れていたので、ウィルザイアはセルレインの横に座らされた。
担当の受付嬢の様子が、いつもと違う事、そして、入った事の無い小会議室へ案内された事により2人は、その対応に戸惑っていた。
「直ぐにエリスリーンも来ますので、しばらくお待ちください」
2人は、案内してくれた受付嬢の、いつもとは違う丁寧な言葉使いとギルドマスターの名前が出てきた事に緊張した。
セルレイン達のような、ただの冒険者がギルドマスターに呼び出されるような事が思い当たらない事もあり、どんな話をされるのか、自分の行動に何か不備が無かったのではないかと気になっているようだった。
「ねえ、セルレイン。なんで、あんたが、ギルドマスターに呼ばれたのよ! 何かしたの? 1人の同伴者を認めるなんて、同伴者って、絶対に、あんたの弁護の為でしょ!」
ウィルザイアは、不安そうにセルレインに話しかけた。
「知らん! 今、色々、考えているけど、思い当たることなんて、何も無い!」
2人は、不安そうにギルドマスターに呼ばれた理由を気にしていた。
そんな事もあって、2人にとっては、とても長い時間に思えていたが、小会議室に2人が入ると、すぐに、ギルドマスターのエリスリーンは入ってきた。
「ごめんなさいね。わざわざ呼び出してしまって」
エリスリーンは、ドアを開けて、直ぐに2人に声をかけたが、その声には咎める様子はなく、何かをお願いしたいような雰囲気で接してきた。
その一言で、2人は、少し緊張が解けたようでもあるが、呼ばれた理由が、まだ、分かっていないので多少良くなった程度だった。
エリスリーンは、そんな2人の様子を見る。
「今日、呼んだのは、ギルドとして、そちらのパーティーにお願いしたい事があるからです。ほら、以前、あなた達は、転移者を2人助けてくれたでしょ。その2人が、冒険者になりたいと言っていたから、新人冒険者に狩の基本を教えてもらいたいのよ」
そのエリスリーンの言葉を聞いて2人は、自分達が何か問題を起こしたのではないと理解しホッとしたようだ。
以前よりは、緊張は解けてきたようだが、ただ、目の前に居る人が、ギルドマスターなので、冒険者でも、簡単に会える人ではない事から完全に緊張が解けることは無かった。
しかし、助けた少年と少女と聞いて、その時の事を思い出しているようだった。
「あ、あのー、俺達が助けた2人って、まだ、子供ですよ。そんな子供に冒険者としてデビューするのは、……。ちょっと、早すぎませんか?」
「そうですよ。あれから1年しか経ってないんですよ。まだ、子供すぎますよ。そんな子供が冒険者なんて、ちょっと、早すぎますよ」
セルレインとしても、ウィルザイアにしても、出会った時の事を考えたら、1年程度で新人冒険者としてやっていけるのかと思ったようだ。
そして、そんな子供の世話をする事は、面倒だとも思ったようだ。
「そうだよな。まあ、あの歳でも魔法とか使えるのだったら、後衛から魔法で援護してもらうとかだったら、いいんじゃねえか?」
セルレインは、2人の事を思い出しながら、何気なく言うのだが、この世界で魔法が使える人数の少なさから、そして、転移者が魔法を使えたなんて話を聞いたことも無かった事もあり断るつもりでポロリと漏らした。
それを聞いて、ウィルザイアも、その話に乗ろうと思ったようだ。
「そうですよ。子供のうちから魔物と対峙するなんて、武器を使ってなんて接近戦は、体力的な問題が大きいでしょう。まあ、魔法で攻撃なら、近接戦じゃなく遠距離攻撃だから、それなら、子供でも生存率は高くなるはずよね」
2人は断るつもりで魔法の話をしたのだが、エリスリーンは、2人の話を聞いて安心したような表情をした。
「そうか。だったら、問題無いわね。あの2人、魔法が使えるから」
「「えっ!」」
それを聞いて、セルレインとウィルザイアは、驚いた表情をした。
思わず声が出た2人は、お互いに顔を見合わせると、エリスリーンに食い入るような視線を送った。
「2人とも、魔法が使えるんですか!」
「ありえないわ。2人中2人が魔法を使える? そんな、2人中2人って、……。そんな、100パーセントの確率で魔法が使えるなんて、あり得ないでしょ!」
2人は、エリスリーンにくってかかった。
この世界では、魔法が使える人の割合が非常に低い事もあり田舎町である、この始まりの村程度の人口では、一度に2人も魔法が使える人が現れるとは思えないのだ。
そんな事から、2人は否定的な発言をした。




