ウィルリーンとシェルリーンとジューネスティーン達 2
ジューネスティーン達のテーブルは、深刻な表情をしていた。
特に、ウィルリーンとシェルリーンは、突然消えてしまったアメルーミラについて、衝撃を受けているようだった。
短い付き合いだったとしても、ツノネズミリスの討伐のために出向いた、ツカ辺境伯領での様々な出来事と重なっているようだ。
そして、沈黙を守っていたシェルリーンが、ジューネスティーンを見てから、シュレイノリアを見た。
「あのー、門の外に出て、魔物に食べられてしまったなんて事は無いのですよね。」
シェルリーンが、心配そうに、シュレイノリアに聞いた。
「それは無い。 魔物に食われたとしても、血が地面に垂れていたら、そこから、ルーミラの魔素の痕跡が分かる。 だが、そんな痕跡は、この周辺10kmには無かった。」
「そうなると、死んだというのは、かなり、可能性が低いと思われます。 何らかの理由によって、帝都を離れたのだと思うんです。」
シュレイノリアをジューネスティーンが、捕捉した。
その会話を聞いていた、ウィルリーンも自分なりに何かを考えていたようだ。
「そうですね。 帝都から、10km以上離れてから、しかも、夜の移動となると、生存率は、かなり低いのか。 ・・・。 そうだな、10kmの範囲内に、ルーミラの形跡が見当たらないなら、生きている可能性が高いのか。 ・・・。 しかし、何で、そんな事をする必要があったんだ? 」
ウィルリーンは、周りに聞こえる独り言を言っていたのだが、最後の、その疑問は、全員が感じていたものだ。
特に、ユーリカリアのメンバーである、ウィルリーンとシェルリーンには、アメルーミラが、ジューネスティーン達から、突然、離れなければいけない理由が理解できないのだ。
しかし、ジューネスティーンとしたら、シュレイノリアから聞いている、アメルーミラから出る不可解な魔素が、奴隷紋によって発生していると指摘を受けたことで、アメルーミラは、帝国軍の奴隷として、潜り込まされたと、感づいていた。
「あのー、多分、ルーミラは、金の帽子亭にいつも居る、あの帝国軍の奴隷だと思うんです。」
それを聞いて、ウィルリーンとシェルリーンは、驚いた表情でジューネスティーンを見た。
見たというより、睨んだと言っても過言ではなかった。
「お前、それを知っていて、パーティーに加えたのか! 」
ウィルリーンは、強い口調で、ジューネスティーンに迫った。
「ええ、最初から。 メンバー達は、おおよそ、何か違和感のようなものに気がついていたと思いますよ。」
ジューネスティーンは、そう言って、カミュルイアンを見た。
カミュルイアンは、自分に話を振られて、面白くなさそうにしていた。
「オイラも、なんか、変だと思った。 ・・・。 でも、1人は、気がついて無かったと思うよ。」
そう言って、隣のテーブルのレィオーンパードを見た。
「あいつは、子供だ。 ルーミラの、そんな裏の事情なんて、気がついてない。 可哀想な境遇だっただろう程度にしか認識してない。 それに、初恋だったかもしれないな。」
シュレイノリアが、カミュルイアンの話した事を捕捉したのだが、ジューネスティーンは、最後の一言を聞いて、苦笑いをしていた。
その表情には、それを言ってしまうのかといった表情をしていた。
だが、ウィルリーンとシェルリーンは、帝国軍のスパイだと聞いて、深刻そうな表情をしていた。
「しかし、何で、そんな、危ない事を、・・・。 知ってたなら、断るべきだろう。」
ウィルリーンは、最もな意見を言った。
「ええ、でも、それを断ってしまったら、今以上の厳重な監視の目がついてしまっても困るので、こちらとしても、上手く使うつもりで、入れました。」
ジューネスティーンとしたら、ルイネレーヌの意見を聞いていた、情報を操作するつもりで、アメルーミラを、パーティーに入れたのだが、ウィルリーンは、それを聞いて、何んだか、やるせない気分になったようだ。
「お前達は、全てお見通しで、ルーミラを自分の手の内で踊らせていたって事だったんだな。」
ウィルリーンは、やってられなそうな表情をした。
(全く、この連中は、どこまで、先を読んで行動しているっていうんだい。 何だか、こっちが心配していることが、損しているみたいじゃないか。)
そんなウィルリーンの様子を、ジューネスティーンは見つつ、申し訳なさそうな表情をした。
「まあ、悪く言ったら、そうなります。 ただ、こちらにも、情報戦についてアドバイスを貰っていたので、それで、何とか、今回は、上手く事が運んだと思ってます。」
ウィルリーンは、それを聞いて、1人の女性の顔を思い浮かべていたようだ。
その女性とは、ウィルリーンは、言葉を交わしたこともないが、以前、ジューネスティーン達を遠巻きに見ていた、女性1人と男性6人のパーティーを思い浮かべたのだ。
そのパーティーは、全部の男性が、1人の女性を敬うようにしていたので、ウィルリーンの記憶にも残っていたのだ。
「なるほど、それで、ルーミラを上手く使って、出ていって問題の無い情報だけを、ルーミラ経由で帝国軍に渡したってことか。」
ウィルリーンは、渋々ではあるが、納得するような表情をした。
「しかし、何で、突然、消えるようにルーミラを、どこかへ逃亡するような事をさせなければならなかったのでしょうか。」
シェルリーンは、気になったことを、考えもせずに言ったようだ。
「ああ、きっと、帝国軍にも、何か、理由が有ったと思いますよ。 でも、案外、しょうもない理由だったかもしれません。」
「・・・。 そうですか。」
シェルリーンは、しょうもない理由と聞いて、そんな事で、人が1人消えてしまうのかと思っだようだが、ジューネスティーンの答えに対して、それ以上、答えることができなかった。
「そういえば、向かいの帝国軍の監視者は、今日もいつも通りにラウンジで、こっちを監視しているみたいです。 ルーミラは、彼の元でスパイ活動をしていたでしょうから、その彼が、今日も同じようにしているなら、きっと、ルーミラは、大丈夫だと思います。」
「それは、どういうことなのですか? 」
シェルリーンは、ジューネスティーンに食ってかかるように聞いた。
「彼が、いつも通りだということは、きっと、彼が、夜のうちに逃したんだと思います。 だから、ひょっとすると、ルーミラが、帝都を出た記録も残ってないかもしれませんね。」
ジューネスティーンは、最後の方は、考えるような仕草をしていたので、話をしているうちに、気がついたようだ。
さっきの、しょうもない理由の事や、今の、帝都を出た記録も無いと言われて、シェルリーンは、何で、そんなことになるのかと思ったようだが、話を思い直していたようだが、その話を精査していて、徐々にイラついてきたようだ。
「何で、そう言い切れるんですか? 」
シェルリーンの話に、ジューネスティーンは、やっぱりといった表情をした。
ジューネスティーンは、聞かれるだろうと思っていたようだ。
「もし、ルーミラが、自分の意思で逃げたのなら、向かいの監視者は、ルーミラを追いかけるはずです。 それに今日も向かいのラウンジに座っているということは、この宿にアメルーミラはいない事を知っている可能性があることになります。 今日、この後、自分達が何のアクションもなく、いつも通りの行動をしたら、きっと、彼が、ルーミラを逃したんでしょう。」
シェルリーンは、向かいの監視者の態度で確定できると思うと、この後にギルドに向かう時に、その監視者が、どんな行動をするのかで、アメルーミラの様子について、方向性が分かると思ったようだ。
そして、少し、安心したようだった。




