アメルーミラの帝都脱出 2
アメルーミラは、門の外に出ると、お辞儀をして、ヲンムン軍曹に、ありがたさを伝えた。
ただ、それは、ヲンムン軍曹には、まずかったようだ。
ヲンムン軍曹は、そんなアメルーミラを見て、慌てて、敬礼をすると、任務だということを、ひたすら強調した。
そして、扉が閉まると、アメルーミラは、気を取り直したように、街道の方を見た。
(西街道を進むのか。 門の前の道をまっすぐ進んだら、直ぐに分かれ道になるはずだから、そこを右に行くのよね。)
アメルーミラは、南の方を真っ直ぐに見ると、歩き出した。
帝都周辺は、まだ、街道は石畳で舗装されているので、街道を外れることはない。
そして、少し歩くと、門の前を照らす灯りも届かなくなり、星灯りだけになったが、しばらくは、石畳で舗装された道を歩いていく。
直ぐに、東街道と西街道の分岐路になり、アメルーミラは、右の道を進んだ。
本来なら、魔物が活発に活動する夜に、人は移動しないが、ヲンムン軍曹が、ヲルンジョン少尉の魔手から助けるために打った手なので、仕方が無いと思っているのだ。
アメルーミラ自身としても、望まない相手に体を許すことは、盗賊達に捕まった時の事があるので、もう、二度とあんな思いはしたいとは思っていないのだ。
なので、ヲンムン軍曹の考えてくれた手段を受け入れたのだ。
そして、夜の移動のために、ヲンムン軍曹は、帝国軍が使っている魔物避けの石を持たされた。
そのお陰もあり、南門の周辺の魔物に襲われることもなく、街道を進む事ができていた。
(本当だわ。 この辺りの魔物は、猛スピードで襲い掛かってくるのに、全く、そんな様子は無いわ。)
アメルーミラも、ジューネスティーン達に、冒険者として、色々、教わったので、いつでも対応できるように腰に付けた剣の柄に手を置いて、いつでも剣を抜けるようにして、街道を、早足で歩いていた。
(このまま進んで、最初の宿場は、ツテノカだったはず。 そこまでの距離は、確か50kmだったはずよ。 このまま、朝まで歩き続ければ、なんとか、到着できるはず。 ・・・。 そこで、まず、1日分の食料と水を買って、地竜を買うわ。 そして、そのまま、ツテノカを出発して、・・・。 ああ、そうか、地竜用の水と飼馬も少し用意する必要があるのか。 ・・・。 でも、それも次の宿場町のツルトガまでね。)
アメルーミラは、周囲を警戒しつつも、これからの計画を考えていたようだ。
周辺警戒しつつも、ヲンムン軍曹に指示された内容を考えているのだった。
(ツテノカから、ツルトガまでの距離は、確か、・・・。 そう、そうよ、約40kmだから、地竜の足なら、・・・。 ジュシレアじゃないから、1時間に20kmは、無理よね。 普通の地竜なら、10km位かしら。
それなら、ツルトガに4時間なら、昼頃には到着できるはずよね。 そこで、昼過ぎから寝れるわ。)
アメルーミラは、ホッとしたような表情をした。
(これで、・・・。 ああ、宿に亜人が1人でとなると、また、奴隷商に売られるかもしれないのか。 ・・・。)
アメルーミラは、困ったような表情をした。
(そうか。 フード付きのマントを買えばいいのか。 耳さえ隠せれば、・・・。 そうよね。 ヲンムンさんが、用意してくれたズボンは、尻尾が出せないから、ズボンの中に入っているから、後ろから見ても、分からないはず。 そうね。 フード付きのマントが、一番先に必要になるのね。 ツテノカで、一番最初に買うのは、フード付きのマントになるのか。)
困った表情は、直ぐに晴れた。
そして、また、周囲の警戒を行いつつ、西街道を早足で歩いていた。
アメルーミラは、星あかりの中、1人で西街道を歩いていた。
東の空が、徐々に、明るくなり始めた頃、魔物への脅威も徐々に薄れ始める時間になると、アメルーミラにも、余裕が出てきたようだ。
そして、周囲の警戒が、緩み始めると、ジューネスティーン達との思い出が、蘇ってきたようだ。
(どうしよう。 ジュネスさんにも、レオンさんにも何も言わずに出てきてしまったわ。 シュレさん、アンジュさん、アリーシャさんに、カミューさん。 皆さん、本当にすみません。)
アメルーミラは、ヲンムン軍曹に言われて、帝都を出発することになった。
それは、ヲンムン軍曹に報告をしている時に、ヲンムン軍曹の上司である、ヲルンジョン少尉が、自分の地位を利用して、自分に夜伽を命令してきたことで、ヲンムン軍曹が、アメルーミラを逃す算段をしてくれた。
ヲンムン軍曹が、助けてくれたことで、アメルーミラは、身の危険を回避したが、その結果として、ジューネスティーン達とは、別れを告げることなく、出てくることになってしまったのだ。
その思いが、徐々に込み上げてきてくるのだった。
(私は、これで、大ツ・バール帝国を出ます。 ・・・。 出たら、もう、帝国には、戻れません。 そして、帝国にジュネスさん達が、居る限り、私は、会うことができません。)
そして、アメルーミラは、悲しそうな顔をすると、頬を涙が流れ落ちた。
(さようなら、レオンさん。)
アメルーミラは、涙を拭いながら、西街道を歩いている。
そして、東から、太陽が昇ると、ツテノカの宿場町が見えてきた。




