ヲンムン軍曹の考えるアメルーミラの報告
ヲンムン軍曹は、いつものように、夜遅くに呼び出したアメルーミラに、いつも通り、話を聞いていた。
最初の頃より、ヲンムン軍曹は、高圧的な態度から、一般的な人と接するような話し方になり、アメルーミラも、この仕事を始めた頃より、普通に話せるようになっていた。
ツノネズミリスの討伐にあたり、サーベルタイガーの討伐と、途中のゲートと呼ばれる場所を根城にしていた盗賊団の逮捕について、ヲンムン軍曹の見てなかった部分の、報告を聴き終わっていたので、今日は、ユーリカリア達との魔法訓練の話を聞かれていた。
アメルーミラは、自分が、魔法を使えるようになった事を、ヲンムン軍曹に話していない。
そして、アメルーミラは、その訓練の際にスリングショットを使うことで、自分の魔法の訓練は、カモフラージュしていた。
そして、アメルーミラは、聞かれた事にだけ、答えるようにしていた。
ヲンムン軍曹も、後方支援が、主な仕事のアメルーミラが、魔法を使えるとは思っていなかったので、魔法について、アメルーミラに聞く事は無かった。
そして、ここ数日のジューネスティーンとユーリカリア達の訓練を見ていると、アメルーミラだけ、スリングショットで魔物を倒していたので、ヲンムン軍曹は、アメルーミラだけは、魔法の訓練とは別に、スリングショットの訓練をしているのだと思ったようだ。
ユーリカリアとシェルリーンは、火魔法が使えないのは、過去のトラウマによって、無意識のうちに炎を嫌う傾向にあるため、使えないのだろうと、ジューネスティーン達が、話をしていたことも、そして、水・火・雷と、基本的に攻撃に使えそうな魔法は、ユーリカリアとシェルリーン以外は、使えるようになった事、ユーリカリアとシェルリーンの火魔法は、時間をかけて使えるように、ウィルリーンに話をして、今後の指導方法を伝えていた事等、アメルーミラは、聞かれるがまま、答えていた。
ヲンムン軍曹としたら、魔法は使えないが、魔法についての概念は、軍に入った時には座学で教わっており、そして、情報部に所属する時に、更に細かな話を聞いていた。
ただ、ヲンムン軍曹には、魔法適性が無かった事もあり、知識として知っていたのだが、ヲンムン軍曹の魔法に対する常識と、ジューネスティーン達の魔法に対する常識が、大きくかけ離れているように感じていた。
「連中の魔法は、なんだったんだ。 ツノネズミリスの討伐の際の魔法だって、あの火力は、6人程度の魔法力じゃなかったぞ。 ・・・。 大隊規模? ・・・。 いや、それ以上だったんじゃないか? あの時の破壊もだが、魔法と魔法の間隔も、間髪入れずに打ち出されていた。 あいつらの詠唱は、そんなに簡単なのか? 」
ヲンムン軍曹は、魔法は詠唱によって発動するという事が、大陸では当たり前の事だったので、無詠唱だった事に、思いが行きつかなかったようだ。
ヲンムン軍曹自身、ユーリカリア達の魔法を間近で見たわけではなく、遠くから監視していたので、呪文詠唱のような小声で行われる事は、自分の耳には届かなかったと思っているようだ。
(しかし、あの連中のパワードスーツとかいう、フルメタルアーマーにも、驚いたが、魔法については、それ以上かもしれないな。 ユーリカリアとシェルリーンは、火魔法は使えない。 それ以外は、火・水・雷と、攻撃性の高い魔法は、使えている。 ユーリカリアとシェルリーンが、水魔法も雷魔法も使えるだけだって、貴重な魔法士になるぞ。 ん? それに、他は、水魔法と火魔法が、使える? ・・・。 なんで、相反する魔法を、アイツらは使える? )
ヲンムン軍曹は、疑問に当たった。
一般的に、火と水のような、相反する魔法は使えないと言われていたのに、それを、使っていたと言われて、疑問に思ったようだ。
それこそが、思い込みによって、使えないものだと思うから、使えなかっただけなのだ。
魔法は、人がイメージした内容と魔素が結合して魔法となるのだが、どの時代からなのかは不明だが、相反する元素に属する魔法は、使えないという事が、常識となってしまった事によって、誰も疑うこともなかったのだ。
ただ、それだけのことで、火魔法と水魔法を使える者は居ないと、なってしまっていたのだ。
それをシュレイノリアが、調べた書物やら、自分で試してやらで、どんな魔法でもイメージと魔素を結合させれば使え、詠唱についても、イメージをしやすくするためのものだったのに、伝わっていくうちに、詠唱が大事に変わってしまい、詠唱をいかに上手に唱えるか、師匠の魔法と弟子の魔法の違いは、詠唱を如何に同じテンポで行えるかとか、詠唱の区切りの位置とか、息継ぎのタイミングとかが重要だとなっていたのだ。
それが、魔法学として、伝わってしまい、そして、誰もその事に疑問を持たなかった事が、今の魔法体系となってしまっているのだ。
なので、間近で見ていないヲンムン軍曹にとって、シュレイノリアの魔法は、全くの未知の魔法になってしまっていたのだ。




