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メイカリア中佐とヲルンジョン少尉 2


 メイカリア中佐は、ヲルンジョン少尉が来ることを待っていたが、その日は、来ることが無かった。


 メイカリア中佐は、遅くまで待つが、ヲルンジョン少尉が訪れることは無かった。


 そして、ヲルンジョン少尉の合同執務室から、明かりが無くなった事を確認すると、その執務室に入り、魔道具を使って、執務室内に明かりをともした。


 そして、ヲルンジョン少尉の机の前に行くと、机の上を確認した。


 ヲルンジョン少尉の机の上は、早朝の状態と、ほとんど変わった様子は無かった。


「これで、私の命令を、ヲルンジョン少尉は、無視したことになったな。」


 メイカリア中佐は、ヲルンジョン少尉が、どんな、対応をするのかを確認した。


 そして、思った通りの対応を、行なってくれたのだ。


「やはり、自分の机程度の事が、整理できないと、ロクな仕事は出来ないという、典型だな。」


 そして、資料に埋もれた石板を確認する。


「変更されたり、消された形跡は無い。」


 確認が終わると、部屋の明かりを消して、ヲルンジョン少尉の机から離れ、合同執務室を出ると、自分の執務室見戻っていった。




 翌日、メイカリア中佐は、昨日と同じように、誰よりも早く出勤して、合同執務室を確認してから、自分の執務室に移動した。


 メイカリア中佐は、早めに片付けられる仕事を、先に済ませると、合同執務室に移動した。


 合同執務室には、先ほどとは違い、早く出勤する職員が、数名おり、メイカリア中佐が、合同執務室に入ってくると、合同執務室に居た数名は、挨拶の敬礼をして、すぐに自分の仕事を始めていた。


 その挨拶の敬礼を受けると、メイカリア中佐は、いつも、ヲンムン軍曹が、常に使っていた入口前のテーブルに座った。


 その後も、職員達が出勤してくるのだが、その都度、入口前のテーブルに、メイカリア中佐のような佐官が座っていることに驚きつつ、挨拶の敬礼をして、自分の席に移動していった。


 ただ、この合同執務室には、不釣り合いのメイカリア中佐なので、時々、メイカリア中佐を確認しつつ、隣と内緒話をするように、ヒソヒソと話していた。


 その中には、ヲルンジョン少尉の名前を言うものもいた。


 ヲルンジョン少尉の名前が出ると、その都度、職員達は、嫌そうな顔をしたが、なんとなく、納得したような表情をして、自分の仕事を始めた。




 合同執務室には、ほぼ、全員が出勤してきた。


 しかし、始業時間になっても、1人だけ出勤してきてない。


 メイカリア中佐は、仕方なさそうに立ち上がると、入口の扉が開き、最後の1人が、遅刻して、出勤してきた。


 ただ、その様子は、申し訳ないような表情ではなく、面倒臭そうな表情で、イラついたような様子をしつつ、頬の引っ掻き傷を痛そうに抑えていた。


 ヲルンジョン少尉は、正面を見るのではなく、メイカリア中佐の座っていたテーブルとは反対の方を向きつつ、頬を摩っていたので、メイカリア中佐には気が付かず、目の前を通り過ぎていった。


 その様子を、メイカリア中佐は、じーっと確認している。


 そして、ヲルンジョン少尉は、自分の机に座ると、引き出しから、傷を癒すための絆創膏を取り出して、傷の部分に付けると、立ち上がって、歩き出す。


 ヲルンジョン少尉は、扉の方向に歩き出すと、その先に仁王立ちしている、メイカリア中佐を視認した。


 一瞬、怯んだような様子をするが、直ぐに気を取り直し、メイカリア中佐の前に来ると、敬礼をした。


「おはようございます、中佐。 今日は、朝から、こちらにどのような、ご用件で、来られたのでしょうか? 」


 メイカリア中佐は、表情を表に出さないようにして、ヲルンジョン少尉を見ている。


 その視線は、まるで、獣が、自分の標的を見定めるようだ。


 メイカリア中佐は、黙って、ヲルンジョン少尉を見ているので、流石に、ヲルンジョン少尉も耐えきれないようだ。


 そして、周囲の人達は、2人に視線を送ることなく、聞き耳を立てるようにしていた。


「あ、あのー、中佐? 」


 ヲルンジョン少尉は、耐えきれずに、声をかけたが、メイカリア中佐は、黙ってヲルンジョン少尉を見ていた。


(さて、どうやって、切り崩してやろうか。)


 メイカリア中佐は、僅かに口の端が、上がった。


「ヲルンジョン少尉は、昨日の業務は、何をしていたのかな。」


 ヲルンジョン少尉は、一瞬、ギクリとしたようだが、業務内容を聞かれただけだったこともあり、通常の報告と思ったのか、直ぐに仕事モードの表情になった。


「はい、昨日は、資料室の整理を行なっておりました。」


 メイカリア中佐は、連絡用の石板を昨日置いておいた事は、言わず、ヲルンジョン少尉の囲い込みに入っていくつもりのようだ。


「では、こちらの執務室には、出勤してこなかったのかな。」


「いえ、こちらでも、職務はありますので、一通りの業務を終えた後に、資料室の方に行っております。」


 ヲルンジョン少尉の答えは、当たり前の事で、連絡事項を確認して、今日の自分の仕事の優先度を考えてから、今日の仕事に入る。


 当たり前の事をしたように、ヲルンジョン少尉は答えてくれた。


 それは、メイカリア中佐の術中にハマっているのだが、ヲルンジョン少尉には、そんな事は理解できてないようなので、メイカリア中佐は、不敵な笑みを浮かべた。


「ああ、そうだろうな。 連絡事項もあるだろうから、こちらの執務室も使ったというのか。」


「はい、その通りであります。 重要な連絡事項などあれば、確実に回すようにと、目を通しております。」


(引っかかった。)


 メイカリア中佐は、全て確認をしており、自分の連絡用石板を、ヲルンジョン少尉が、確認してない事を知っている。


 まともに仕事もせずに、遊び回り、そして、資料室の中で、夜の疲れを癒すために寝ていることも、メイカリア中佐は、全て知っているのだ。


 それを、全て曝け出そうとしているのだ。


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