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ヲンムン軍曹の報告を受けるメイカリア中佐


 メイカリア中佐は、ヲルンジョン少尉が、出勤は、しているのだが、隠れて、酔いを覚ましている報告を受けた。


 本来なら、軍の粛清の対象なのだが、ヲルンジョン少尉は、下級貴族ではあるが、国務大臣の、ソツ・キンクン・コルモン伯爵の後ろ盾がある。


 よって、不用意に制裁を加えて、その反撃を、コルモン伯爵から、国務大臣の名の元に、メイカリア中佐自身に降り掛かる可能性があるのだ。


「困った問題だ。 あの男を押し付けられた時から、やむを得ないのか。 ・・・。 本当なら、東の森の防衛隊に回して、さっさと、戦死して貰えば、よかったのだが、無理矢理、情報部に押し込まれたのだから、無闇に移動もできないのか。」


 メイカリア中佐は、執務室で、1人で席に座ったまま、苦虫を噛むような表情をした。


 状況を知っていて、自分で処罰できないもどかしさを感じ、対応策を検討しているのだが、良い案が思い浮かばないのだ。


(このまま、ヲルンジョン少尉を、野放しにしておいて、ジューネスティーンの報告が、滞ってしまったら、どうすると言うのだ。 ・・・。 ん? )


 メイカリア中佐は、何かを思いついたようだ。


(そう言えば、ジューネスティーン達は、もう、帝都に戻ってきているはずじゃ無いのか? 奴隷からの報告がもたらされているはずだが、・・・。 ヲルンジョン少尉が、この状態だと、ヲンムン軍曹は、・・・。 報告できてないのか。)


 メイカリア中佐は、立ち上がると、執務室を出て行った。



 メイカリア中佐は、ヲルンジョン少尉の合同の執務室の扉を開くと、入口付近のテーブルにヲンムン軍曹が座っていた。


「ヲンムン軍曹。 ここで、何をしている? 」


 合同の執務室の扉が開くと、すぐに、メイカリア中佐は、ヲンムン軍曹に声をかけた。


 その声に、くつろいで座っていたヲンムン軍曹は、慌てて立ち上がり、声のした方向に向くと、敬礼をした。


 声音が女性だったこと、そして、聞き覚えのある声だったこともあり、また、最近、階級が上の女性とツカ辺境伯領まで、行ってきたので、一瞬のうちに、仕事モードに切り替わった。


「はっ! ヲルンジョン少尉に報告に来ました。 しかし、席に居られませんので、戻るまで、待っておりました。」


 ヲンムン軍曹の言葉を聞いて、メイカリア中佐は、やっぱりといった表情をし、視線をヲンムン軍曹から逸らした。


(やっぱり、ヲルンジョン少尉のお陰で、報告が滞ったか。)


 そして、もどかしいような表情をすると、視線をヲンムン軍曹に戻す。


「ヲルンジョン少尉への報告は、私が聞こう。 私の執務室に来い。」


 自分の言いたい事だけ言うと、メイカリア中佐は、合同の執務室を出ていくと、ヲンムン軍曹は、慌てて、その後を追っていく。


 その光景を周囲は、見ていたが、ヲンムン軍曹が、扉を閉めると、周囲は、視線で2人の様子を追いかけていたが、その視線を戻して、いつも通り、自分の仕事に戻っていった。




 メイカリア中佐とヲンムン軍曹は、廊下を移動して、メイカリア中佐の執務室に戻っていった。


 メイカリア中佐は、扉を開ける時に、ヲンムン軍曹に視線を送ると、その視線は、中に入れと言うように向けられていた。


 メイカリア中佐は、執務室に入ると、一番奥にある自分の執務机の前に立つと、自分の机のかどに寄りかかり、両手を机についた。


 何か、誘うような表情ではあるが、ヲンムン軍曹を、どうこうするつもりは無く、ただ、この、ヲルンジョン少尉を介さず、ヲンムン軍曹の報告を聞くとこで、ヲルンジョン少尉を処断するための証拠集めとしての事実として、扱えると思ったのだ。


「ヲンムン軍曹。 それで、ジューネスティーン達の様子は、どうなんだ。 奴隷からの報告は聞けたのか。」


「はっ! 我々が、ツカラ平原に到着前の、サーベルタイガーの討伐と、魔法の訓練、帰路での盗賊の逮捕について、こちらが持ってない情報を持っていました。」


 メイカリア中佐は、ヲンムン軍曹の言葉を聞いて、何を当たり前の事を言っていると思ったようだ。


 ヲンムン軍曹が、外から監視するだけでは、分からないから、奴隷をパーティーに潜り込ませたのだから、そうあって、当たり前の事なのだ。


 当たり前の事を聞いたのでメイカリア中佐は、苦笑いをしたようだ。


 そして、ヲンムン軍曹から、アメルーミラの報告を聞いた。




 報告を聞き終わると、メイカリア中佐は、困ったような表情をした。


「どうしたものだろうな。」


 パワードスーツという、フルメタルアーマーを遥かに凌駕する防具が、発明されて、その性能が、圧倒的だと噂が流れ、それを持つ冒険者が、自分達のテリトリーの中に入ってきたのだ。


 その調査をしている間に、ホバーボードのような新たな移動手段、そして、魔法を使えない人にも魔法を使えるようにしてしまう。


 ジューネスティーン達を調べていたら、次から次へと、自分達の知らない新技術が出てきて、常識まで覆させられているのだ。


「これは、非常に大きな問題なのか? それに、今、報告を受けただけなのか? いや、もっと、隠されている何かが有ると、思っていた方がいいのか。」


 メイカリア中佐は、報告の内容を聞いて、驚異を感じていたようだ。


「だが、彼らを味方にしたら、これ程、心強いものはないな。」


 そして、メイカリア中佐は、考えるように顎に手を当てた。


(これが、もし、敵対関係になったとしたら、どうなってしまうんだ? ・・・。 いや、今、彼らの秘密が、全て理解できているわけではない。 ・・・。 我々が知らない何かを、まだ、持っていたとしたら、・・・。 それに、今の戦力だけでも、帝国軍を遥かに凌ぐはずだ。)


 ジューネスティーン達は、帝都に来る前に、東の森の魔物を倒しているのだ。


 今まで、人類が、倒したことのない魔物を、ジューネスティーン達は、倒していた。


 帝国軍は、東の森の魔物を、森に帰したことはあるが、倒した事はない。


 それだけでも、帝国軍とジューネスティーン達とでは、戦力に大きな差があるのだ。


 それを考えると、メイカリア中佐は、自分の立場では判断できない可能性があると、考えたようだ。


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