アメルーミラの報告と個人的な方針
ヲンムン軍曹は、報告のために帝国軍本部に行ったのだが、ヲルンジョン少尉が捕まらず、報告はできなかった。
帝国軍本部も職員達が、帰宅を始めると、ヲンムン軍曹も帰るのだった。
(あの少尉の、いい加減さは、全く、やってられないな。 まあ、いい。 俺が、報告のために訪れたことは、周囲の人間にも、受付にも印象付けたから、俺が、仕事をしていることは、周りが保証してくれる。)
帝国軍本部を出ると、金の帽子亭に戻りつつ、ヲンムン軍曹は、イラついた表情をしていた。
そして、夜になると、アメルーミラから、報告を受けた。
ユーリカリア達の魔力量を増やすために、回数を打たせていたこと、そして、フィルルカーシャが、大きな爆発する魔法を放ったことで、ユーリカリア達の魔力量が増えている事を証明したこと。
動く目標に向かって、魔法を使うなど、具体的な戦闘を意識した魔法の使い方を訓練していたのだ。
ツノネズミリスの攻略における攻撃陣地については、ジューネスティーンが、中心になって、あの形にしたこと、模型を地面に描いて全員にイメージさせると、目的の場所で錬成魔法を使って、作ったのだ。
落とし穴と、落とし穴の中の爆弾は、シュレイノリアが作ったことを伝えた。
陣地は、基本は、ジューネスティーンによって、考えられたのだが、周囲の意見を取り入れて、あの形になったのだ。
馬止めについては、陣地を作った翌日に行ったのは、後から足りないといって、作ったことを伝えた。
そして、アメルーミラは、支援として、主に食事の準備をしていたこと、そして、甘いものを中心に食べさせた事を伝えた。
ただ、ヲンムン軍曹には、食べるものについては、聞いても聞き流していた。
そして、アメルーミラが、魔法を使えるようになったことについては、アメルーミラが話す事もなく、ヲンムン軍曹が聞くことも無かったので、ヲンムン軍曹に伝わる事は無かった。
また、帰り道において、盗賊を捕らえた時には、女子が魔法で盗賊団に攻撃を加えて倒した事、ジューネスティーン達、男子が、パワードスーツを使っていたが、ほぼ、女子の魔法で倒してしまった。
ただ、アメルーミラは、水魔法で1人に重傷を負わせていたのだが、ヲンムン軍曹は、アメルーミラが、魔法を使えるとは思っていなかったことで、アメルーミラに魔法についての追及は行わなかったことで、ヲンムン軍曹が、その事に気付く事はなかった。
毎夜、アメルーミラから、ヲンムン軍曹は、話を聞いていたことで、ツカラ平原、ツノネズミリスの討伐、ゲートにおける盗賊団の逮捕について、話を聞くことができた。
ジューネスティーン達が、ギルドに魔物のコアを届け終える頃には、ヲンムン軍曹も、話を聞き終わった。
もし、これがヲンムン軍曹ではなかったら、アメルーミラが魔法を使えるようになったことに気がついたと思われるが、長年、ヲルンジョン少尉の元で、不貞腐れて仕事をしていたヲンムン軍曹だったので、繊細な感性は、持ち合わせてなかったようだ。
アメルーミラは、南門の前での魔法訓練について、アメルーミラ自身から、錬成魔法や付与魔法を極めたいと言われた。
ジューネスティーンもだが、レィオーンパードも、その話には、驚いたようだ。
「私は、このスリングショットが、気に入っています。 一番最初に自分の命を守ってくれた武器でしたから、これからも使っていきたいんです。」
それは、悪くは無いとは思うのだが、火魔法や雷魔法の方が、直接的な攻撃の方が、これから先、冒険者として生きていくなら、そっちを覚えて、極めた方が有効だと、ジューネスティーンたちは考えたのだが、アメルーミラは、譲らなかった。
(今、私が、魔法を使える事を、私の主人であるヲンムンに知られては不味いわ。 この仕事が終わった後、解放してもらう時、私が魔法を使えるとなったら、奴隷紋の解放はせずに、自分のものにする可能性があるわ。)
魔法を使える人は、貴重であって、自分の奴隷が魔法を使えるとなったら、ヲンムン軍曹は、奴隷から解放してくれない可能性が高いのだ。
アメルーミラは、この帝都に戻って、ヲンムン軍曹に呼び出されて、その事に気がついたのだ。
だから、アメルーミラは、遠くからでも見たら分かるような大掛かりな魔法を覚えるのをやめたのだ。
そして、錬成魔法によって、スリングショットの弾丸を作り、その弾丸に付与魔法をかけて、命中率を上げる方法を考えたのだ。
それなら、訓練をしているのは、遠巻きには、スリングショットの訓練に見えるようにと考えたのだ。
「以前、ジュネスさんが、スリングショットに専用の弾丸があったら、命中精度が上がると言ってました。 こうやって、進む方向に対して回転しながら飛ばしたら真っ直ぐ飛ぶと言っていました。」
そう言いつつ、アメルーミラは、ジャイロ回転を指で描いて見せた。
それをジューネスティーンが、面白そうに聞いていた。
「そうだな。 それ、案外面白いかもしれないな。」
ジューネスティーンは、アメルーミラの提案を聞いて、面白がっていた。
「多分、色々、実験する必要があるが、ギルドにコアを届けている間なら、その実験をしておいて損はないと思う。 レオンは、アメルーミラと一緒に、それを、色々と試して、一番良い方法を見つけてくれないか? 」
レィオーンパードは、困ったような表情をした。
「うん。 それは、分かるんだけど、・・・。」
レィオーンパードが、いまいち、ピンと来てない表情で答えた。
「ああ、そうか。 じゃあ、こんな感じで。」
ジューネスティーンは、地面に弾丸の形を描いて、その表面に銃口を通った時にできるライフリングマークを描いた。
「弾丸に螺旋を描くようにするんだ。 これが飛び出すと、風圧によって、螺旋の方向に回転すると思うから、螺旋の角度や、螺旋の数とかを変更して、距離とか、精度とかを確認しておいてもらいたいんだ。」
レィオーンパードは、ジューネスティーンの描いた弾丸の絵を見つつ、説明を聞いていた。
それを興味深そうにして聞いていた。
「ふーん。 なるほどね。 ・・・。 うん、やってみるよ。」
レィオーンパードは、何やら、色々と考えを巡らせていたようなので、ジューネスティーンを見ずに答えた。
その様子をジューネスティーンは、興味深そうに見ていた。
「そうか、それじゃあ、よろしく頼むよ。」
「うん。」
レィオーンパードは、返事をすると、アメルーミラを連れて、その場から離れていった。




