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剣 〜試し斬りの準備〜


 ジューネスティーンはシュレイノリアに言われて試し切りをする為中庭に移動した。


 鞘の曲面の削り出しも購入したカンナによって綺麗に削る事が出来たので、剣の完成を喜び眺めていただけだったが、剣は魔物を狩るために作った事から実際に使えるのかを確認する必要があるとシュレイノリアに指摘されたので試し斬りを行う事にした。




 ギルド支部は、各国に1支部が首都に置かれていたが、ギルド発祥の地である南の王国では、王都と始まりの村に支部が置かれている。


 それは、始まりの村付近の砂漠には、数年に一度の割合で転移者が現れる。


 その転移者の保護を目的として、始まりの村のギルドも出張所ではなく支部として活動していた。


 その為、ギルドの建物は冒険者への依頼や魔物のコアの買取を行う受付だけではなく、冒険者や住民の為の医療施設、本部で開発された魔道具や召喚獣の営業部、支部内の事務処理、銀行としての機能等がある。


 そして、ここをギルド支部として成り立たせているのは転移者の保護も含まれていた。


 転移者は、以前の記憶を完全な形で記憶してないが、断片的な記憶を辿って新たな発明を行ってくれる事があり、支部の施設内で保護し言葉や一般常識を教え話ができるようになれば興味を持った内容について可能な限り設備や道具を用意していた。


 現れた転移者の才能の開花を目的として様々な施設が用意されており、過去の転移者の為に用意した設備も道具も残っていた。


 シュレイノリアの使っている縫製工房、ジューネスティーンの使っている鍛治工房も、以前の転移者の要求に応じて建てられていたものを2人は使っていた。


 そして、中庭の1面には頑丈な壁が用意されており、その手前には的を立てる台座が用意され、弓と魔法の的として使う事が可能となっていて、特に秀でた才能の無かった転移者は、大半が冒険者として活動していた事から中庭は鍛錬を行う為に広く作られていた。




 2人は中庭に行くとジューネスティーンは鞘に入った剣を腰のベルトの間に差し込んだ。


「シュレ、試し斬りの前に剣筋を確認しておく」


「そうだな」


 ジューネスティーンは、シュレイノリアにそう言うと中庭の中央付近に向かい、シュレイノリアは的となる壁際の角にある小屋に向かった。


 的となる壁側には、壁の手前に的を差し込むための台座の石が用意されており的を立てる棒が差し込まれるように穴がついていた。


 シュレイノリアの向かった小屋は、壁の隅に建てられている柱と屋根だけの建物であり、その下に弓などの遠距離攻撃用の薄い板を取り付けた的と、ただの棒が置かれている。その中から1センチ角の角材を一本手に取った。剣の試し斬りには的の板は必要無いので、ただの棒だけのものを選択した。


「ジュネスの剣の試し斬りと言っても、この世に初めての剣だからな。最初から太い角材を斬らせてダメだと、気分を凹ませてもマズイからな。最初は細い棒で試させよう」


 手に取った棒を持つと台座の所に行き棒を差し込んだ。


 台座は、壁から2メートル程離れた地面に固定されており、奥の壁は頑丈そうに聳え立っていた。


 その頑丈そうな壁には小さな穴が開いていた。


「なんだ?」


 頑丈で大きな壁が用意されているのは、敷地の外に被害を出さない為であり、防御魔法も施されていたが、シュレイノリアは今まで何かの模様程度に考えていた壁には穴になって窪んでいることに気がついた。


 その壁を確認すると、同じような穴が幾つも開いていた。


 シュレイノリアは、試し斬りの棒を差し込むと壁の穴が気になり壁に近寄って穴を確認した。


 穴は、直径1センチ程小さしかないが、壁には何個もの同じような穴が開いて、中には穴から放射状にヒビが入っているものも見えたので、気になって穴を確認すると、奥の方には金属のような物があった。


「小さな金属が、高速で壁に当たったのか。魔法で強化されているにも関わらず、ここまで抉り込まれているなら、物凄い勢いだったんだな」


 シュレイノリアは穴の中を確認しつつ、考えていた事を呟いていた。


「この威力で金属の球を打ち出せたら、魔物も遠くからでも倒せそうだ」


 シュレイノリアは、その穴が出来た理由を考えると納得するような表情をしたが、それ以上の詮索はやめて、中庭の中央で自身の作った剣を振っているジューネスティーンに視線を向けた。


「ジュネス、準備ができた」


 シュレイノリアの声を聞くと、振っていた剣を腰の鞘におさめて近寄ってきた。


「ありがとう、シュレ。刃を擦るように斬るなんて考えてなかったからね。でも、なんとなく、刃を擦る感覚に近づけたと思うよ」


「そうか」


 ジューネスティーンは、剣の刃を滑らせるように剣を振るう方法を確かめていた事を告げたので、シュレイノリアは納得するような表情をして答え、後ろに立てた棒を指で示した。


「まずは、この棒からいってみよう」


 そこには1センチ角の角材の棒が台座から立てられていた。


「シュレ、流石にこの棒は細すぎないか?」


 ジューネスティーンは、顔を顰めながら聞いた。


「ああ」


 シュレイノリアは同意したが、表情は違っていた。


「だが、これから始めよう。この棒を綺麗に切断できたなら、太い棒にしてみようじゃないか」


 シュレイノリアの答えに、そんなものかというような表情をすると、ジューネスティーンは、試し斬りようの棒の前に立ったので、シュレイノリアは、剣の間合いから大きく離れた。


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