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ヲンムンの見たもの


 コリン少尉は、ユーリカリア達が魔法を使えた話については、極めて重要度が高いと判断したので、持ち帰って、相談しようと思っていた案件なのだ。


 魔法職の立場的に、簡単に魔法が使えるようになってしまったら、今まで、エリートとして扱われていた魔法士なのに、誰もが使えるものになってしまったら、自分の優位性が失われてしまう。


 そう思ったから、報告は控えていたが、この報告会では、話をする必要があると判断したようだ。


 特に、今回のツノネズミリスの討伐の監視については、メイカリア中佐が責任者でもあるので、対面で、盗聴防止が行われている場所での報告が必要と判断していたのだ。


「あの時、陣地から魔法の攻撃を加えていたのは、ユーリカリア達パーティーとシュレイノリアの7人でした。 それは、ツカ少佐に手配してもらいました偵察用の場所から、陣地のの内部がよく見れたので、確認しております。」


 メイカリア中佐は、そんなに簡単に魔法が使えるようになってしまうのかと思ったようだが、常識的にあり得ないので、最初は、報告を鵜呑みにしようとしていたが、すぐに、その異常さに気が付いたようだ。


 それと、ギルドから、往路における移動速度と到着時間のずれについて、思い至ったようだ。


 そして、何か思いついた様子をする。


「そうか、そのために、ツカラ平原で魔法を使えるように訓練したのか。」


 その発言にコリン少尉は、少し寂しそうな表情をした。


 しかし、自分が、魔法による通信を意図的に控えさせていたこともあり、メイカリア中佐が、少しズレた思考をしても仕方がないのかと、思い直したようだ。


「あの、これは、ヲンムン軍曹の話なのですが、対象の偵察をしていた時に、ユーリカリア達と合同の狩をした話を聞きました。 その時に、魔法をジューネスティーン達から教わったようです。 それで、彼女達は、魔法を使えるようになったようです。 ですので、ツカラ平原での訓練は、魔法力を、より強力にするための訓練だったようです。」


 コリン少尉達は、ジューネスティーン達の魔法訓練を見たのは、最終日の前日からなので、その前の訓練の状況は見ていない。


 魔力の底上げをおこなった訓練等は、何も見ていないのだ。


 ただ、ヲンムン軍曹の話から、南の山脈の麓でユーリカリア達が、魔法を使えるように訓練していたことは、コリン少尉も聞いている。


 コリン少尉は、その話も含めて、総合的に判断したのだ。


「ヲンムン軍曹、ユーリカリア達とジュネスティーン達が、南の山脈の麓で魔法を行ってた時の話をするように。」


 コリン少尉は、ヲンムン軍曹に、話をするように言った。


 その一言を聞くと、メイカリア中佐は、鋭い目をして、ヲンムン軍曹を見る。


 そして、ヲンムン軍曹は、その時の話を伝えると、メイカリア中佐の表情は、さらに、険しいものとなっていた。


 ただ、南の山脈の麓でユーリカリア達と合同の狩を行った話は、報告として聞いていたので、メイカリア中佐は、その時のジューネスティーン達の事は、知っていた。


 話を聞き終わると、メイカリア中佐は、ヲンムン軍曹に話しかけた。


「ヲンムン軍曹。 その話を、なんで、今頃の報告になるのだ。」


 メイカリア中佐は、言葉を押し殺したように言う。


「そうだ。 お前が、その日に報告していたら、対応も変わってきたぞ。」


 フォツ・リンイン・ヲルンジョン少尉が、ここぞとばかりに、ヲンムン軍曹に行ってきた。


 だが、ヲンムン軍曹は、何を言っているのか分からないといった表情で、2人の話を聞いていた。


「はい。 私は、ジューネスティーン達の監視役であって、ユーリカリア達の監視ではありません。 ユーリカリア達は、魔法を使っておりましたが、それは、その時、ジューネスティーン達から教わっていたのかは、遠目から見た限りでは、良く分かりませんでした。 ですので、その時に魔法をジューネスティーン達がユーリカリア達に教えたかどうかは、不鮮明な情報でしたので、情報の混乱を防ぐためにも、その事は、報告から外しました。」


 ユーリカリア達の監視は、ヲンムン軍曹の仕事ではない。


 監視対象に接触した事は、報告に上げたとしても、ユーリカリア達を監視しているわけではないので、ヲンムン軍曹の主張は正しい。


 だが、帝国軍としたら、それはマイナス要因になる。


 そのような状況になるのは、上司と部下の信頼関係が無い場合が多い。


 もし、上司と部下に信頼関係があれば、余計な情報だったとしても、その話を相談するはずだが、ヲンムン軍曹には、ヲルンジョン少尉に対して、全く、信頼を寄せてないから起こったのだ。


 その原因を作ったのは、常に上司の側にある。


 権限を与えられたことで、その権限を使う事で優越感を得るので、その優越感を得たいがために、その命令は、多少の逸脱でも許されると思い込み、徐々に部下に対する業務命令から逸脱していく。


 それは、稚拙な精神しか持ち合わせない人だからこそ、このような事になる。


 本来の組織であれば、最初から、自制心についても叩き込み、人を使う方法を徹底して叩き込む。


 だが、ヲルンジョン少尉においては、爵位の無い貴族の出身なのだが、有力貴族の推薦もあって、突然、軍の士官として入隊してきた。


 その組織の悪い部分が、出たようだとメイカリア中佐は、思い出したようだ。


 メイカリア中佐は、ヲルンジョン少尉をチラリと見た。


 ヲルンジョン少尉は、悔しそうな様子でヲンムン軍曹を睨むように見ていたが、ヲンムン軍曹は、何食わぬ顔で、お前など眼中にないといった態度を示していた。


(やはりな、こんな情報も引き出せないヲルンジョン少尉には、問題がありすぎるな。)


 メイカリア中佐は、2人の様子を確認していた。


「そうか、ヲンムン軍曹。 次からは、気がついたことは、早めに報告するようにしてくれ。 だが、今回の君の情報には、助かったよ。 感謝している。」


 メイカリア中佐は、ヲンムン軍曹にねぎらいの言葉をかけた。


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