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剣 〜鞘の完成〜


 道具屋を出た後、シュレイノリアは道具屋の店員の態度が気に食わなかった事を大声で2人に訴えていたところ、メイリルダの叔母さんに声を掛けられると人見知りをしたように隠れてしまった。


 その事が、メイリルダは少し気になったが、洋品店に行くとシュレイノリアの様子が一転し、自分の服を決めると店員にその服の作り方について根掘り葉掘り聞いていた。


 シュレイノリアは、縫製工房で自分やジューネスティーンの服を作っており、主に魔物との対戦する時の戦闘用に魔法紋を施す事を考えていた。


 これから冒険者として生きていくとなったら魔物との戦闘を意識して着る物も備えていたが、縫製の基本を理解していた訳ではなく、支給された服を確認しつつ見様見真似で作っていた。


 魔法紋を用意することは可能だったのだが、衣類の基本的な部分について知らなかった事もあり、選んだ服の装いが、今まで自身が見た事も無かった物だったこともあって、表の生地や裏地の選び方についてから、採寸、そして、各部分の裁断方法についてだけでなく、縫い方において方法まで順番に確認するように聞いていた。


 そして、説明されてない部分も細かく聞いてくるので、店員は少し辟易したような表情をしつつ質問に答えていた。


 店員は、時々、シュレイノリアの質問の内容が支離滅裂になってしまい、理解できないような表情をしていると、ジューネスティーンが横から解説していた。


 その様子を見ていたメイリルダは、さっきの叔母さんとの話しをした時のシュレイノリアの様子が、何だったのかとは思ったような表情をして見ていたが、今の様子を見て気のせい程度に思ったようだ。


 ジューネスティーンが付き添いシュレイノリアの話をフォローして、店員と話しをしている姿を、メイリルダは、自分の弟と妹が仲良く自分達の服を選んでいるように思えていた。




 2人とも、少し背が伸びており最初に支給された服の丈が短くなっていた事から、メイリルダが、ギルドマスターであるエリスリーンの許可を得て2人の服を新しく購入するようにした。


 そして、その際にシュレイノリアは、服の作り方について話を聞けた事で機嫌を良くしていた。


 縫製の基本的な事を知らないシュレイノリアにとって、作業が行き詰まっていたが周囲には黙っていた。


 シュレイノリアとしたら、魔法職用の服もだが、フルプレートアーマーの支給をギルドから断られたジューネスティーンがフルプレートアーマーを購入可能になるまでの繋ぎに使う防具、そして、それを補うための服を、シュレイノリアは用意してあげようと考えていた。


 メイリルダの連れて行った洋品店は、仕立ても行っていたのでシュレイノリアには都合が良かったようだ。




 ギルドに戻ると、ジューネスティーンは1人で鍛治工房に行き、鞘を仕上げる事にした。


 鎬側の広い面、刃側の面を普通のカンナで綺麗にしあったので、峰側を新たに購入したカンナで、逆目にならないように切先側から中間までと、鍔側から中間までを方向を変えて削っていった。


 表面にノコギリで落とした時の凸凹が無くなり、木目が綺麗に見えるようになるが、鞘の角は4角とも直角になっていた。


 鞘を握ると角を親指で擦ると面白くなさそうな表情をすると、カンナを手に取って鞘の角に当てた。


(とりあえず、四角を落としてみるか。それと、まず、刃側の2箇所からだな)


 そして、鞘の中央から切先に向かって当てると、ゆっくりと軽く引きながら角を落とした。


 削ってできた面を確認すると、カンナを中央に戻してもう一方の角にカンナを当てて反対側の角を落とし始めた。


 中央から切先までの角を一度落とすと、ひっくり返して中央から鞘側の角を落とした。


 一度、全部の角を落とし、削り具合を見てから同じようにカンナで削り、角の削った面と刃側の細くなった面が、ほぼ、同じ幅になると、鞘の峰側も同じように3面が同じ幅になるように角を落とし、鞘の断面が細長い八角形になるように削ると握り具合を確認した。


(やっぱり、八角形にしても握った時に角が気になるのか)


 すると、更に8箇所の角を軽く削り、棚からヤスリを持ってくるとカンナで削りきれなかった角を落とし、今、削っていた部分を丸くしていった。


 そして、ジューネスティーンは、時々、気になるような表情をしていた。


 それは、鞘を仕上げると板を合わせた部分に線が一本入っていることだ。


 内側の剣を収める部分を削る時に位置決めの為に塗った部分が線となって残っていたのを確認すると、その時に塗った墨を持ってきて鞘の外側に塗っていった。


(木目も綺麗だけど、実用性を考えたら黒の方が良いのかな)


 色を塗り終えた鞘を見て、納得するような表情をした。


 今、1本の剣を完成まで作る事によって、残りの焼き入れ前で作業を止めている剣について、作業の時に不足する道具も無くなり、一旦、作業を止めて買い物にでるような事も無くなる。


 作業を始めてから完成まで、途中で道具不足で作業を止める事も無くなった。


 作業を行う際、初めから終わりまでを続けて行えないのは、作る人からしたらストレスになる。


 ジューネスティーンは最初の1本を仕上げる事によって、不足する道具の購入を済ませ、作業工程の順番や段取りを確認する事ができていた。


 1本を完成させた事によって、全ての剣を完成させるまでの工程を頭に描く事ができるようになったので、これから後は剣の仕上げる事にだけ集中できるようになった。


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