パワードスーツとオプションパーツ
アリアリーシャとレィオーンパードが、ジューネスティーンの所に戻ると、アンジュリーンとカミュルイアンが、ジューネスティーンのパワードスーツから、大砲のようなライフル銃を外すのを手伝っていた。
砲身が2メートルと長く、狙撃用の大型のライフル銃を背中に付けたアタッチメントと右腕の通常は盾を装備する場所に取り付けて、固定してあるのだ。
しかし、通常の接近戦には使えない装備ではあるが、今回のような長距離狙撃が必要な場合は、有効な武器である。
ただ、試作品のため、実戦には不向きの部分があったようだ。
「にいちゃん。 そのライフル銃だけど、取り外しがもっと簡単じゃないと、実戦配備は無理じゃないかなぁ」
レィオーンパードが、10メートル級の魔物を一撃で倒した、試作品のライフル銃を見て、2人掛かりで外しているのを評した。
「ああ、確かにその通りなんだけどね。 とりあえず、威力だけは、確認できたから、今は、それで良しとしよう。 お前が指摘した部分については、これから研究していけば良いんだよ。 銃を開発するより、取り外しの開発の方が、簡単だからね」
「ふーん。 そんなもんなのかなぁ」
「これは、ニードルガンとは違って、銃口の中にライフリングが施してあるから、中の銃弾がジャイロ回転しながら進むんだよ。 だから直進する。 それに今回は、銃弾にも工夫を凝らしてあったからね。 あの大きさの魔物でも、一撃で倒せたのは収穫だよ」
ジューネスティーンは、アリアリーシャを追いかけていた魔物を、長距離狙撃で撃ち倒していたのだ。
音速をはるかに超える速度で、弾丸を撃ち出したので、着弾より後に銃声が聞こえてきていた。
そんなレィオーンパードとジューネスティーンのやり取りを面白くなさそうに聞いていた、アリアリーシャが、ジューネスティーンをジト目で見ていた。
「ジュネス。 話に聞いていた魔物と大きさが違ってましたぁ。 5メートル程度のはずだったのにぃ、実際には、10メートルはありましたぁ」
「ああ、そうらしいね。 でも、無事で良かったよ」
ジューネスティーンは、平然と答えた。
ただ、その答え方にアリアリーシャは、面白く無かったようだ。
明らかにイライラした表情をした。
「ジュネス。 情報は正しく無ければ、無いのと一緒ですぅ。 5メートルが10メートルでしたぁでは、こっちの身が持ちません」
アリアリーシャは、レィオーンパードど2人で囮役として、魔物を引く事が多く、パーティーとして攻撃しやすい場所まで連れてきて、攻撃が一番強い場所に引き込むようにしている。
そして、レィオーンパードと2人で、魔物をつりに行ったとしても常に追いかけられるのは、アリアリーシャだったのだ。
「ああ、そうだね。 じゃあ、今度、黒竜さん達に注意しておくよ。 それより、アリーシャ姉さんと、レオンは、パワードスーツから降りてもいいよ。 もう、この辺りに、さっきの大きさの魔物は居ないから、パワードスーツを着ている必要は無いよ」
アリアリーシャは、ジューネスティーンにはぐらかされてしまう。
ただ、パワードスーツの中に居るのも面倒そうなので、脱ぐことにしたようだ。
「わかりました。 じゃあ、パワードスーツから出ます」
「ああ、ついでにお茶の準備をお願いします。 姉さんの淹れてくれるお茶は最高なんで、仕事の終わった後の一杯が飲みたいなぁ」
ジューネスティーンは、アリアリーシャに甘えるように、お茶のおねだりをする。
「もうぅ」
答えると、アリアリーシャはパワードスーツの前に、収納魔法を展開する。
魔法紋の光の中から、パワードスーツのハンガーが浮き上がってきた。
ハンガーは、口の字型をした固定装置で、口の字の中にパワードスーツが入って、パワードスーツから人の出入りを助けてくれるものだ。
アリアリーシャが、パワードスーツのハンガーを出すと、少し離れた所にレィオーンパードも魔法紋を展開してハンガーを出していた。
前衛のこの2人は、ホバーボードを使って移動しているので、2人のハンガーには、ホバーボードを固定する場所が用意されている。
アリアリーシャは、そこにホバーボードを取り付けると、ハンガーの口の字型の中に入る。
ハンガーの中央に来ると、両脇からシリンダーが伸びてきて、パワードスーツの腰を固定した。
すると、パワードスーツから空気の抜けるような音がすると、腰が折れて前屈みになる。
腰の後ろ半分が開いて、中の人の姿が僅かに見えている。
すると、背中が中央から観音開きをすると、ふくらはぎの部分に取り付けられていた第二装甲が跳ね上がって、地面と平行になった。
背中が完全に開くと、中に入っていたアリアリーシャは、両腕を引き抜きつつ、自分の体を直立に戻すと、上からワイヤーに吊るされた取っ手が降りてきた。
両手をパワードスーツから引き抜くと、上から降りてきた取っ手を両手で握った。
今度は、ワイヤーに吊り上げられて、アリアリーシャは、パワードスーツの腰から引き抜かれた。
足が、曲げられるような位置まで引き上げられると、両足をパワードスーツの腰から引き抜いて、縁に足をかけてから、ふくらはぎの第二装甲に降り、地面に降りた。
アリアリーシャは、視線をパワードスーツの背中に向けると、視線で自分の魔力を送ると、それに反応するようにパワードスーツの背中が閉まって、前屈みだった体が元に戻って、直立姿勢に戻った。
パワードスーツから出てきたアリアリーシャは、体に完全フィットする全身型の水着のような、インナースーツを着ている。
首から、足首まで、そして、手首までを完全に覆われており、薄手の生地が体の線に合わせて作られていた。
そのインナースーツに手袋と靴、そして、胸には、前びらきの小さなベストと、腰には、短めのスカートを履いていた。
アリアリーシャは、その大きな胸の膨らみを隠す程度の前開きのベストと、腰には、股間がぎりぎり隠れる程度のミニスカートをつけているのだ。
ただ、胸のベストは、Hカップの胸の形に沿ったように作られており、胸の形が崩れないように、形に合わせて作られてあるようだ。
また、体にフィットしているインナースーツのおかげで、ウエストのくびれも膨よかな腰もしっかりと描かれているのだが、身長は、130センチと小柄である。
だが、アリアリーシャの耳は、位置は一般の人の位置に有るのだが、その耳の長さは長く、20センチ程あり、そして、後ろに回ると、僅かにスカートの裾から尻尾がはみ出すように覗いていた。
パワードスーツから出たアリアリーシャは、直ぐに収納魔法を展開すると、ハンガーに固定されたパワードスーツを、その中に収納した。
その収納される様子は、ゆっくりと、沈むように下に降りていった。