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久しぶりの金糸雀亭の昼食 〜二日酔いのユーリカリアの続き〜


 ユーリカリアが示した、前の座席に座っているのは、エルフの3人だった。


 カミュルイアンを真ん中に座らせて、抱えるように、両脇に座っているウィルリーンとシェルリーンがいる。


 2人とも、カミュルイアンに甘えるような仕草で、時々、耳元で囁いては、クスクスと笑っていた。


 討伐が終わった後は、いつもベタベタしており、宿の部屋も、3人一緒の部屋を取るようにしていたのだ。


 10日以上そんな事をしていたのだから、周りとしたら、新婚旅行に同行している家族のような気分だったのだ。


 その3人の事を考えたら、ユーリカリアが、この旅の終わりに、一度だけ飲み潰れたのは、ご愛嬌のように思えたようだ。


「でも、リーダー。 これから、ジュネスさん達と一緒の時は、飲むのを控え目にしてくださいね。 私もお酒を飲みませんから、よく分かるんですけど、お酒を飲んだ翌日の人の息は、お酒の匂いが残っていますから、結構、臭いんですよ。 ジュネスさん達は、誰もお酒を飲みませんから、飲むなとは言いませんけど、控え目にしてくださいね。」


 ヴィラレットが注意すると、フィルルカーシャが、乗り込む時の事を思い出した。


「ああ、馬車に乗り込む時、ジュネス達が窓を開けてくれてたのは、それでだったのか。」


 馬車に乗り込む時、ジューネスティーン達は、何も言わずに、馬車の窓という窓を全部開けてくれたのだった。


 それを聞いたフィルルカーシャもフェイルカミラも、昨夜、ユーリカリアにつられて、少し飲んでいた事を思い出す。


「少しでも、飲んでいると、分からないと思いますけど、お酒を飲まない人には、飲んだ人の息の匂いって苦痛なんですよ。 特に、二日酔いの人の匂いは、とてもキツイんです。」


「ヴィラ。 ありがとうよ。 そこまでは、気が付かなかった。 今度から気をつけるよ。」


 後ろから座席に寝転んだまま、ユーリカリアが答えた。




 馬車は、金糸雀亭についた。


 全員を馬車から下ろすと、馬車をイドディーンに渡して、地竜の世話と馬車を車庫に置いてもらうように手配すると、金糸雀亭の食堂で昼食を取る事にした。


 金糸雀亭に戻ると、ルイセルが迎えてくれた。


「おかえりなさいませ。」


 そう言うと、ルイセルは、全員を確認する。


「みなさん、ご無事でのおかえり、お疲れ様でした。」


 そういって、1人、ユーリカリアが、具合の悪そうなのを見て、ルイセルは、失敗したような顔をする。


 それに気が付いた、ジューネスティーンは、ルイセルに話す。


「昨日、少し飲み過ぎたんです。 ツヲイルの街で宿泊したので。」


 ジューネスティーンが、申し訳なさそうに話すと、ルイセルは、ツヲイルは、酒蔵が多いことを思い出した。


 金糸雀亭もツヲイルの酒蔵が有名なこともあり、購入しているので、今までのユーリカリアの酒量の多さから、酒好きだと分かっているので、そのこともあり、飲み過ぎたのだと理解したようだ。


「そうでしたか。 それで、皆さん、お揃いでいらしたと言うことは、お食事ですか? 」


「ええ、昼には少し早いですけど、食べてから、ギルドに行こうと思ってます。」


「かしこまりました。 厨房には伝えておきます。 それと、ユーリカリアさんには二日酔いに効きそうなものを用意させますね。」


 そう言うと、食堂に案内する。




 食堂には、テーブルの用意をしていたリアミーシャが居たので、リアミーシャに案内を頼むと、ルイセルは、厨房に行く。


 リアミーシャは、掃除の終わったテーブルに案内すると、お茶を用意した。


 ユーリカリアは、出されたお茶を一気に飲み干した。


 リアミーシャは、直ぐにユーリカリアのカップにお茶を注ぐと、ルイセルに呼ばれたので、ポットをユーリカリアの前に置くと厨房に移動した。


「あー、少し落ち着いたかな。」


 ユーリカリアが、一言漏らすと、ユーリカリアのメンバー達は、一瞬、ユーリカリアを見るが、直ぐに視線を逸らした。


 エルフの2人以外の3人は、ホッとした様子をする。


 すると、ミューミラが、スープをユーリカリアに持ってきた。


「二日酔いには、このスープが効きますよ。 ゆっくり味わうように飲んでください。」


 そう言って渡してくれたので、ユーリカリアは言われた通りに飲み出す。


「これ、結構、美味いな。」


「多分、二日酔いの人には美味しく感じると思います。 でも、一気に飲むと気持ち悪くなりますから、気をつけて。」


 ユーリカリアは、出されたスープを一気に飲み干してしまった。


「ん? どうかしたのか? 」


 ミューミラは、ユーリカリアを見て、困ったような顔をする。


(この人、言ってるそばから飲んじゃったよ。 しーらない。)


 ミューミラは、半分引きつったような顔で笑顔をユーリカリアに向けた。


 すると、ユーリカリアの顔が、徐々に青くなる。


「すまない、ちょっと。」


 そう言うと、慌てて、口に手を当てて走って、洗面所の方に行ってしまった。


「あー、やっぱり。 だから、言ったのに。」


 困ったような顔でミューミラが言う。


「大丈夫です。 リーダーには、いい薬です。」


「そうです。」


「これで、お酒の匂いから解放されればいいのですけど。」


 3人は、ヤレヤレと思うのだが、ユーリカリアについては、自業自得と思ったような表情をしていた。




 しばらくして、戻ってくるユーリカリアは、スッキリしたような表情で戻ってきた。


「あーっ、胃の仲が洗われたようだ。 かなり気持ちいい。 今のスープ、効いたわぁ。」


 ユーリカリアは、使用前、使用後と、比べられる程、表情が変わっていた。


 すると、ミューミラを見る。


「あー、すまないが、酒を一杯。」


 そう言うと、フェイルカミラ、フィルルカーシャ、ヴィラレットが立ち上がる。


 ヴィラレットは、2人につられて立ち上がってしまったようなので、遠慮がちに訴えるような目で、やめてほしいという表情をするのだが、フェイルカミラとフィルルカーシャは、じろりとユーリカリアを睨んだ。


「ああ、分かったよ。 酒はやめとくよ。 お茶をくれないか。」


 ユーリカリアは、仕方無さそうに言うと、フェイルカミラとフィルルカーシャが座ると、ヴィラレットもそれにつられて座る。


 ユーリカリアも同じテーブルに座った。




 そんな4人の様子を見ていたアメルーミラが、ジューネスティーンに聞いた。


「あのー、ユーリカリアさん達は、あれでよかったのでしょうか? 」


 聞かれて、ジューネスティーンは、微妙な表情で答えに詰まっていた。


「別によかったと思うわよ。 あっちはあっちのパーティーなんだから、あっちのパーティーの事情には口は出さないものよ。」


 ジューネスティーンの様子を見た、アンジュリーンが代わりに答えた。


「そうなんですか。」


 アメルーミラが、納得したような表情をした。


「まあ、違うパーティーの問題には、あまり、口出ししない方がいいのかな。」


 ジューネスティーンは、話をまとめると、アズミーシャ達が料理を運んでくれたので、少し早い昼食になった。


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