帰路 〜2人のエルフの我儘〜
その後、帝都に帰るまでの間にアメルーミラに魔法を教えつつ帰るのだったが、アメルーミラへの魔法を教えているのをウィルリーンが覗きにきては、ジューネスティーンの教えるところをジーッと見つめていた。
時々、アメルーミラを覗き込んでは、アメルーミラが魔法に失敗していると、ユーリカリアが、ウィルリーンを引っ張っていった。
ウィルリーンにジーッと見られる事で、上手く魔法が発動できなかったので、それを察したユーリカリアがウィルリーンが邪魔だと判断して、連れ帰っていたのだ。
アメルーミラが魔法を教えてもらっているのを見た、ヴィラレットが、アメルーミラと一緒に魔法の復習をしていると、シェルリーンも一緒に魔法の復習を始めた。
すると、何故か、ウィルリーンも一緒に始めるようになった。
その後、フィルルカーシャ、フェイルカミラも一緒に復習を始め、最後には、ユーリカリアも復習がてら、一緒になって休憩中に練習するようになっていた。
その為、休憩時間が長くなってしまい、当初の予定より、かなり遅れて帝都に戻ることになった。
その旅の日程が伸びている事に喜んだのは、ウィルリーンとシェルリーンだった。
2人は、往路は我慢したのだから、帰路においては、常にカミュルイアンと一緒の部屋に泊まる事となったのだ。
だが、最初は、ユーリカリアも仕方が無いと思っていたのだが、徐々に日程が遅れてくると、魔法の練習に熱を入れているのが、ウィルリーンとシェルリーンだったのだ。
2人は、旅の日程を遅らせるために魔法の練習に熱を入れていたと分かると、以後のユーリカリア達の宿代はウィルリーンとシェルリーンが持つ事になった。
ウィルリーンとシェルリーンは、一度、2人だけで何か相談していたのを、ユーリカリアが何かと思って聞いていると、2人の持ち金から何日まで旅を続けられるかと相談をしていた。
そこまでして、カミュルイアンと一緒の部屋で過ごしたいのかとユーリカリアは呆れてしまう。
「お前達、そんなにカミューと一緒に居たいのか? 」
ユーリカリアがイラッとして聞くと、シェルリーンが答えた。
「はい。 3日くらい一緒のベットで可愛がってもらいたいと思います。 ご飯もトイレもシェルねえと交代で取りたいくらいです。」
「ああ、その手があったわね。 それなら、ずーっと相手をしてもらえるわ。」
シェルリーンの話にウィルリーンが乗ってきたのだが、それを聞いたユーリカリアは、イラッといていた。
「なあ、それだと、お前達は順番で、食事もトイレも行けるかもしれないが、カミューはどうするんだ? 」
「「あっ! 」」
カミュルイアンの食事やトイレは眼中に無かったのだ。
「全くぅ! 少しは、カミューの事も考えてやれ! 」
ユーリカリアが、参ったといったように言うと、少し膨れたようにシェルリーンが反論する。
「ちゃんと考えてます。 今は、毎日だから、1人2回で抑えてますから。」
ユーリカリアは、苦虫を噛み潰したような顔をする。
「それでか! 討伐が終わって、最近、カミューの頬が少しこけたような気がしたんだ。」
すると、後ろから、フェイルカミラが、声をかけた。
「さっき、カミューさんの髪の毛に白髪がありました。 彼は、金髪だからわかりにくいけど、その原因は、2人にあったのでしょうね。」
「ああ、カミューさんって、頼まれたら断れない性格みたいですからね。 ウィルリーンもシェルリーンも年上だから、どんなに疲れていても断れそうもなさそうですよね。」
いつの間にか、フィルルカーシャも話に加わり出した。
「そういえば、昔、酒場の話ですけど、隣のテーブルで飲んでいた男の人が、付き合った女が、好きもので、一日に何度も求められるからって、別れたとか。 周りの男達は、羨ましい話だと言ってましたが、それを語っていた男は、真剣に嫌がってました。」
「私も、似たような話を聞いた事があります。 魔物を倒しに行く前日に恋人と夜を共にしてから向かった人が、魔物の攻撃を受けて、受けきれずに死んでしまったと、その男の人を偲んで飲んでいるパーティーとかありました。」
ウィルリーンとシェルリーンは、顔を引き攣らせていた。
「それに、女が強すぎると、子宝に恵まれないと噂に聞きました。 それに子宝は、女が求める時より、男が求めるときの方が授かりやすいとか。」
「カーシャ、それ、私も聞いた事があります。 受胎はデリケートなものだから、激しい動きをすると、ダメだとか、聞きました。 女が激しすぎるのはダメなんじゃないのか? 」
フィルルカーシャとフェイルカミラが話をしているのだが、迷信じみた内容まで飛び出してきた。
エルフの2人が恵まれた環境にある事から、どうも怪し過ぎる噂話まで飛び出し始めたのを聞き、横からユーリカリアが2人の話に入ってきた。
「フェイルカミラもフィルルカーシャも、その辺にしておけ。」
そう言って、ウィルリーンとシェルリーンの方にユーリカリアはアゴをしゃくった。
フェイルカミラとフィルルカーシャが、2人を見ると、どちらも凹んだ様子になっていたのを見て、薬が効き過ぎたと感じたようだ。
「まあ、何にしても、過ぎるというのは体に良くない。 食べ過ぎもそうだろ。」
「そうです。 飲み過ぎも良くありません。」
ユーリカリアの話にフェイルカミラが、乗っかってきた。
ただ、飲み過ぎと言われて、ユーリカリアが苦い顔をして、一度咳払いをする。
「何にしても、お前達は自分達が楽しんでいるだけだ。 カミューをもう少し労ってやれ。」
「そうです。 ジュネスさんとシュレさんなんて、ただ抱き合って寝てるだけじゃないですか。 たまには、そうやって労ってあげた方がいいと思いますよ。」
「ああ、あの2人も異常ですね。 でも、2人は、1人の男を相手にしているだから、カミューの負担は、他の男の2倍です。 何も無い日があった方が良いと思います。」
3人のメンバーから責められて、シェルリーンとウィルリーンは、借りてきた猫のようになっている。
少しは反省したと思ったユーリカリアが話をまとめに入った。
「まあ、何事も程々が肝心だ。 カミューに無理はさせないようにな。」
すると、ヴィラレットが5人の会話が気になって声をかけてきた。
「どうかしましたか? 」
不思議そうな顔で、ヴィラレットが聞いてくると、ユーリカリアとフェイルカミラ、そして、フィルルカーシャが、困ったような顔をする。
「いや、何でもない。」
「そうです。 大した話はしてない。」
「あー、程々にする話をしてたんだ。 食べ過ぎは良くないって話だ。」
ヴィラレットは、2人のエルフを見て、今、答えてくれた3人を見るのだが、どうも腑に落ちないといった顔をする。
「じゃあ、この話は、これで終わりな。」
ユーリカリアが、そう言って、ジューネスティーンの方に行く。
「あー、魔法の練習をしよう。」
フェイルカミラが、そう言って、その場を離れようとする。
「私も付き合います。」
フィルルカーシャがフェイルカミラの後を追っていってしまった。
残されたヴィラレットは、黙って俯いているシェルリーンとウィルリーンを見る。
「あのー。 何かあったのですか? 」
恐る恐る、ヴィラっレットは、2人に聞くと、2人は、すっとヴィラレットの顔を見る。
「「何でもない! 」」
そう言って、2人も立ち去ってしまった。
取り残されたヴィラレットは、仕方なさそうに、アメルーミラのところに向かった。




