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アメルーミラの葛藤


 ジューネスティーンは、盗賊と聞いて、逆上して殴りつけたアメルーミラを説得する。


 アメルーミラは、このゲートに現れた盗賊と、自分が襲われた盗賊が、重なって見えていたのだ。


 アメルーミラは、逆上して、盗賊団を殺すつもりで、盗賊の頭と思われる人物にマウントを取って、殴り殺そうとした。




 裁かれた後、未来に犯罪を犯す可能性があるから殺すと言うのは、許される事ではない。


 犯しても居ない犯罪、可能性があるだけで、裁かれるなんて事は、あってはならない事なのだ。




 ジューネスティーンは、少し寂しい顔をアメルーミラに向ける。


「そうか。 なら、1年後か10年後か分からないが、俺が君を殺す可能性があるから、ここの、盗賊の前に俺を裁いてくれないか? 」


 アメルーミラは、それを聞いて驚く。


 そして、今の話を聞いていた、周りも驚いていた。


「そんな事ありません。 だって、ジュネスさんは、私を助けてくれました。 そんな人が。」


「殺さないと、どうして言い切れるんだ? 」


「だって、それは、・・・。」


 アメルーミラは、それ以上の言葉が無く、俯いてしまった。


「アメルーミラ、君は今まで、俺たちと一緒に居て、未来を作ろとしているんだ。 君の明日はどうなるかは、まだ、決まってないんだよ。 それと同じように誰の未来も決まってない。 未来は、自分自身で勝ち取るものなんだよ。」


 アメルーミラは、俯いたままでいる。


「過去を見て、未来に起きるかもしれないからといって、今から未来についての事で裁くことはできないんだよ。 この人が、今の罪を償った後に改心して、人を救う事になるかもしれない。 だから、未来の罪を考えて、今、裁くことなんてできないんだ。」


 アメルーミラは、涙を流し出した。


 過去に自分に起こった事と、今、ジューネスティーンが言った事を、天秤にかけると、自分の気持ちをどうやって持っていって良いのか分からなくなってしまったのだろう。


 ジューネスティーンの話が理解できるのだが、それ以上に、アメルーミラは、自分の感情を抑えられないようだ。


「でも、彼らは盗賊です。 私達には失敗しましたが、昨日までは、成功して罪の無い人達を殺していたかもしれません。」


 これだけの事をしてあるのだから、昨日まで、この盗賊団は、仕事に成功していた可能性がある。


「ああ、だからといっても、それを調べる事も裁くことも、冒険者には認められていない事なんだ。」


 最もな話なのだ。


 冒険者は、取り調べをしたり、刑を決めたりすることはない。


 警察機構は、帝国の警備隊にあり、自分達には、そのような権限は無く、もし、今、ここで、感情に任せて刑を執行するようなことがあれば、その事を罪に問われることは分かっている。


 アメルーミラは、ジューネスティーンの話を聞くことによって、わずかながら、感情を抑え始めていた。


「・・・。」


 その言葉が、痛いほど分かっているので、ジューネスティーンの言葉を黙って聞くしかないのだ。


「もし、ルーミラが、彼らを裁きたいなら、冒険者を辞めて裁判官になることだ。」


 アメルーミラは、黙ったまま、ジューネスティーンの話を聞いている。




 アメルーミラを宥めているジューネスティーンに、シュレイノリアが、慌ただしく声をかけてきた。


「ジュネス。 新手だ。 今度は、100人近く。 速度から、馬か地竜で迫ってきている。」


 メンバー達に緊張が走ると、アリアリーシャ、レィオーンパード、フィルルカーシャが、索敵に入った。


 新手の話を聞いたユーリカリアが、近くに居た盗賊にきく。


「お前達の仲間は、まだ、100人近くいるのか? 」


 盗賊は、何を聞いているのか、分からないといった顔をする。


「お前達に、仲間はいるのか? 」


「い、いや、俺たちは、これで全部だ。」


 ユーリカリアは、盗賊の話を聞いて舌打ちをした。




 この連中の仲間ならば、交渉の余地はあっただろうが、新手の盗賊だったとすると、最悪の場合、捕まえた盗賊を守りながら戦う事になる。


 100人近くの盗賊相手に、捕まえた27人の盗賊を守りつつ戦うなんて事は不可能に近い。


(こいつらの手錠を外して、逃げさせるか? いや、まだ、雷魔法の影響でフラついた状況では、今、こいつらを逃しても、馬か地竜に乗った100人近くの盗賊の格好の餌にしかならない。)


 ユーリカリアは苦虫を噛んだような顔をする。




 何の大軍なのか分からないが、備える必要がある。


 今の話を聞いて、ジューネスティーンは、指示を出す。


「レオン、カミュー、パワードスーツに乗れ! 何の大軍なのか分からないが、敵か味方か、判断するまで攻撃は無しだ。 シュレ、ルーミラを頼む。 俺もパワードスーツで迎える。」


「分かった。」


「ユーリカリアさんは、残ったメンバーと、いつでも迎撃できるようにしてください。 攻撃は敵と判断してからです。 ギリギリまで待ってください。 それと、ここに捕まっている盗賊の人達はまともに歩く事もできませんから、守ってあげてください。」


「ああ。」


 ユーリカリアは、捕まっている盗賊を守れと言われて、少し驚いているが、指示に従う。


「フェイルカミラさん。 その重傷者を守ってください。」


「わかりました。」


 ジューネスティーンは、指示を出しながら、パワードスーツに向かう。




 レィオーンパードとカミュルイアンは、直ぐにパワードスーツに乗り込んだので、次の指示を待っていた。


「俺たちは、前衛だ。 あの大軍の前に出て、攻撃を引き受ける。 だが、それは、相手が敵だと分かってからだからな。 決して先走って攻撃するなよ。」


 ジューネスティーンは、2人に指示を出すと、パワードスーツに乗り込んで、向かってくる大軍を迎え撃てるように前に出る。




 街道の先の方に土煙が見えてくる。


 盗賊の大軍との対峙、100人もの数になってしまったら、さっきのように、ほとんど無傷で仕留めることは難しい。


 ある程度の犠牲を考えなければ、自分達とユーリカリア達、そして、まともに動けない盗賊達を守り切る事はできないのだ。


(今度は、人を殺さなければならないかもしれない。)


 ジューネスティーンは、嬉しくない方向に思考を巡らせていると思ったようだ。


 パワードスーツの中で、苦虫を噛んだような顔をしていた。




 そんなジューネスティーンの思いに関係なく土埃が、大きくなり、街道を走ってくる。


 近くに視界を遮るような崖が聳え立っていた。


 その向こうを走ってくる乗り物の動物の足音が、どんどん大きくなってくる。


 かなり近づいてきた。


 そう思うと、先頭がその崖から顔を出す。




 同じ色の制服を着て、走ってくる地竜に使っている装備も同じ色とデザイン。


 隊列も乱さすに走ってくるのは、ツカ辺境伯領で、良く見た駐留軍の軍服だった。


 ジューネスティーンは、パワードスーツの中でホッとする。


「駐留軍の人達だ。 警戒は最低ラインにして良いだろう。」


 パワードスーツの通信機で、カミュルイアンとレィオーンパードに声をかける。


 ただ、警戒を最低ラインと言ったのは、目で確認しただけなので、これから先、どうなるかによるので、2人には、一応、警戒させておく。


 ジューネスティーンは、外部スピーカーを使って、ユーリカリア達に報告する。


「駐留軍の人たちみたいです。 警戒は解いてください。」


 ユーリカリア達には警戒を解かせると、ジューネスティーンは、駐留軍を迎える準備をしなけれならないと思うのだが、パワードスーツから降りた方が良いのか、万一に備えてパワードスーツに乗ったままの方が良いのか悩んでいた。


(あれが、本当に駐留軍なのか? それとも、軍服を着ただけの盗賊なのか見極める必要があるのか。 パワードスーツを降りるのは、見極めてからにしよう。)


 ジューネスティーンは、パワードスーツに乗ったまま、駐留軍と思わしき一団を待つ事にしたようだ。


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