アメルーミラと盗賊団
一通り盗賊達の処理が終わると、その後の事が気になり出した。
盗賊を捕まえたまでは良かったのだが、27人もの盗賊をどうやって引き渡すのか気になり出した。
街道の途中で、警備隊も駐留軍も居ない状況だと、自分達で一番近い詰所に連れていかなければならないのだ。
特に雷魔法で攻撃を行ったことで、全身が麻痺してしまった事で、自由が効かない状況だと、乗り物を用意する必要がありそうなのだ。
今後の事を考えるとユーリカリアは憂鬱になったようだ。
「なあ、こいつらどうする? 」
ユーリカリアが、ジューネスティーンに聞くが、ジュネスティーンも困ってしまっている。
すると、ヴィラレットが、2人に声を掛けてきた。
「あのー。 ルーミラは、どうしましょうか? 」
ジューネスティーンは、何の事だと思っていると、シュレイノリアが、アメルーミラを魔法で眠らせていた事に気がついた。
「忘れてた。」
そう言って、御者台の上に寝かされていたアメルーミラの方に行くと、ヴィラレットもそれにつられて付いていった。
御者台の椅子に寝かせておいたアメルーミラは、御者台の足元に落ちていた。
恐らく、寝返りをして椅子から落ちたのだろうが、狭い足元なので、片足と片腕が、椅子の上に残った状態で寝ていた。
「だらしない格好になっている。」
シュレイノリアは、ボソリと呟くと、アメルーミラの頭に手をかざす。
アメルーミラが、目を覚ます。
寝ぼけたようにして御者台の足元から這いずり、椅子に座る。
「シュレさん。 すみません。 寝てしまいました。」
「気にするな。 私の魔法で眠らせただけだ。」
「ああ、そうでしたね。 盗賊達に襲われて、みんなでやっつけたんですよね。」
眠そうな目を擦りながら、アメルーミラが、寝てしまう前の記憶を整理していっているのだろうが、直ぐに真顔に戻る。
「あの盗賊達! 」
そう言って、立ち上がると、シュレイノリアとヴィラレットを飛び越えるようにして御者台から飛び降りると、周りを見回して、盗賊の頭と思わしき男が1人だけ、一番近いところにいるのを見つけると、アメルーミラはその男に遅い掛かった。
まだ、雷魔法の影響で体に麻痺があり、しかも、手錠をはめられているので、走ってきたアメルーミラの蹴りが胸にヒットして地面に仰向けになるように叩きつけられた。
かなり鍛えられている体だったので、辛うじて顔面で蹴りを受けなかったが、その蹴りを胸で受けてしまったのだ。
その男に、アメルーミラはまたがると、顔面目掛けて殴りかかるが、男は、手錠を掛けられた腕で、辛うじてガードをするが、何発か顔面に食らっていた。
ただ、アメルーミラもガードした腕の手錠を撃っていたので、拳から血が迸っていた。
その様子を見た、レィオーンパードとカミュルイアンが、引き離すのだが、アメルーミラは、暴れて言う事を聞いてくれない。
「やめろ、ルーミラ。 相手は捕まっているし、麻痺していてよく動けないんだ。」
「ルーミラ、手から血が出てるから、もうやめて。」
2人がアメルーミラを宥めながら、盗賊の頭から引き離す。
「盗賊なんか、全員死んでしまえ。 お前達のような連中が、お父さんを殺したんだ。 私にもひどい事をして、今度は、ここの人たちにまで、同じ事をしようとしたんだ。 殺されたって文句は言えない! 」
「待て、ルーミラ。」
「落ち着いて、ルーミラ。」
2人は、必死にアメルーミラを抑えているが、アメルーミラは、必死に、抑える2人から離れて、盗賊の頭を殴ろうとする。
だが、2人の男子の力に贖うことはできずに抑えられている。
そんな中、シュレイノリアは、盗賊の頭の怪我の状況を確認するが、鍛え上げられた肉体は、最近、冒険者になったばかりのアメルーミラの力程度では、大した怪我もしていなかった。
その確認が終わると、シュレイノリアは、アメルーミラの拳の怪我を見ようと近寄るが、興奮したアメルーミラの拳を確認する事はできなかった。
「はなして、2人とも。 動けなくなった今なら、この男を殺す事だってできる。 だから、離して! 」
「「ダメ! 」」
騒ぎを聞きつけて、ジューネスティーンとユーリカリアが、アメルーミラの所に来る。
「ルーミラ、どうしたって言うんだ。 お前らしくない。」
「盗賊は、全員殺します。 お父さんの仇です。」
アメルーミラの答えに、ジューネスティーンは、困った様子を見せる。
「ルーミラ、ここに、お父さんを殺した盗賊が居るのか? 」
アメルーミラは、ハッとする。
盗賊といっても、ここは、帝都から西に400km前後ある場所だ。
アメルーミラが盗賊に襲われた場所は、帝都から北の王国へ向かう街道沿いだったのだ。
距離的に同じ盗賊団ということは、あり得ない。
「ルーミラ、お父さんを殺した盗賊が、ここに居るの? 居るなら、教えてくれないか? 」
アメルーミラは、周りの盗賊を見るが、どの盗賊の顔も初めて見る顔、着ている服も北の方の服でも無いのだ。
顔の作りも髪の毛の色も、何もかも、自分が弄ばれた男達のものとは違っていた。
「盗賊は、人を殺します。 女は、・・・。」
アメルーミラは、少し冷静になって、俯いて、ジューネスティーンに答えた。
そんなアメルーミラにジューネスティーンは、優しく諭すように話しかける。
「俺たちは、冒険者だ。 冒険者は、魔物を狩るが、人は狩らないんだ。」
「この男達は、悪い事をしました。」
「俺たちは、脅されたかもしれないが、危害を加えられてはいない。」
「・・・。」
ジューネスティーンの言う通りなので、アメルーミラは、返す言葉が無く、黙り込んでしまった。
「俺たち冒険者に、人を裁く権利も義務も無い。 冒険者だからといって、盗賊を殺してしまったら、犯罪者になってしまうんだ。」
「でも、こいつらは、裁かれたとして、牢屋に入れられても、しばらくすれば出てきて、また、盗賊をするに決まってます。 だったら、今、ここで、殺してしまった方が、悲しむ人が減ります。」
アメルーミラは、訴えるようにジューネスティーンに答えた。
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