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帰路 〜ゲートの歴史〜


 ジューネスティーンが、ゲートに続く、切り立った崖を、面白そうに眺めていると、その姿を見て、レィオーンパードが、不思議そうに見ていた。


 ジューネスティーンが、馬車から、体を乗り出すようにして外を見るなんてことが珍しいかったのだ。


「にいちゃん。 崖なんて眺めて面白いの? 」


 レィオーンパードが、崖を眺めているジューネスティーンに声をかけてきた。


「ああ、歴史を感じるものは面白いよ。 ここで昔、何があったのかとか、その時にどんな事を考えていたのだろうかとか、周辺を眺めていると色々な発見があるんだよ。 止まって、細かく調べてみると、些細な物からでも、それが存在する意義を考えていくと、当時の人が何を考えていたかが見えてくるんだよ。」


「ふーん。」


「今回のツノネズミリスの討伐の時に陣地と落とし穴を作っただろ。 あれだって、100年後1000年後には、遺跡になってしまうだろう。 未来の人は、その残ったものを見て、俺たちが何を考えて作ったのかとか考える事も有るんだよ。」


「でも、それって、何かに書き留めておけば、それで済むんじゃないの? 」


 アンジュリーンが、話に入ってきた。


「ああ、書き留めておくものにもよるんだ。 今の技術で書き留めておく素材は、羊皮紙か布に書き留めることになるだろう。 だけど、その媒体がどれだけ保存できるのかによるんだ。」


「書き留めてしまえばぁ、蔵に保存しておけば良いじゃないですかぁ。」


 アリアリーシャも話に入ってきた。


「まあ、そうなんだが、10年20年と時間が経つと、羊皮紙とかだと腐食してしまったりするんだ。 100年とか時間が経ってしまうと、ボロボロになってしまって書いてあることが読めなくなってしまう事も有るんだ。 そうなると、残っている遺跡の方が、腐食する事もなく残っているから、書物より遺跡の方を見た方が分かる事もあるんだよ。」


「ふーん。 じゃあ、にいちゃん。 書き留めるものを羊皮紙とかじゃなくて、石板に刻んでおけば、数千年単位で、保存できるんじゃないの? 」


「うーん。 レオンの言う通り、石に文字を刻んで残した方が、長く残るだろうね。 だけど、石板の厚みを考えると、その石板を保管するスペースが問題になるし、文字を刻む時間とかを考えると、情報量はかなり制約されると思う。」


「うん、そうだね。 石板に文字を刻んだら、長く保てるだろうけど、沢山の石板を置く場所を考えたら、実用的じゃないのかもしれないね。」


 ちょっと、がっかりしたような表情を見せるレィオーンパードだった。


「レオン、発想は良かったんだ。 石板に書いた書物なら、数千年単位で残るだろうけど、全ての情報を石板に残す必要は無いんだ。 文明を持つ者は、常に技術的な進歩をしているから、残す期間を考えるんだ。 10年残せば良い物と、100年残さなければいけない物と、その情報の価値を考えるんだ。 その価値によって、媒体を何にするか考えるんだ。」


「でも、情報を書いた時は、10年でいいかと思ったけど、10年後にそれがとても重要なことだと分かったら、どうするんだよ。」


「そういったものは、国が管理している場合が多いと思うけど、媒体の耐用年数になった時に、その書かれている内容を確認するんだよ。 その時に、これは重要だからとなったら、その時、石板に移せばいいだろ。 もうこの情報は不要だと判断すれば、そのまま保管しておくだけにする。 どうしようか困ったと思ったら、同じ媒体に移して、もう10年待ってから判断すれば良い。」


「じゃあ、10年後にもう要らないと思われてしまったけど、100年後に、その重要性が理解されたけど、90年前に処分されてしまってましたなんて事にもなっちゃうじゃん。」


「ああ、そんな事もよく有るだろうね。 盗賊がどんな事をしたかなんて、犯罪の内容は残っているかもしれないけど、細かな事は残って無い可能性が高いんだ。 保管する場所と、それを管理して残す事、保全しておく為に、その内容を管理しておく必要もある。 歴史的な内容を残すって事は、大変な作業なんだよ。 でも、こういった自然に出来た物は、そう簡単に作り直すことなんて出来ないから、実際にその場所に行った方がわかる事が多いんだよ。」


「ふーん。」


「新興国の帝国といっても364年の歴史がある。 初代国王ツ・エイワン・クインクヲンが、この地で魔物の脅威から東街道を守れるようにして、国を興して農業生産が出来るようにして、大陸で一番の力を持つ国になったんだ。 そんな繁栄を遂げた国なのだから、そんな国に悪党どもが黙って見ている訳が無いだろう。 この辺りを根城にして活動していた大きな盗賊団だったというだけで、それ以外にも、そういった組織は沢山あっただろうね。 その連中が、ここでどんな方法で、隊商を襲っていたのかなんて、俺たちのような冒険者には、当時の資料なんて絶対に見せてはくれないだろうから、こうやって、実際の場所で見てみるのが一番なんだよ。」


「そうよね。 冒険者が、盗賊の事を調べていたら、その盗賊と同じ事をすると考えるかもしれないわね。」


「いや、アンジュ。 犯罪の経過資料なんて絶対に見せてくれないって。 俺なら、農民だろうが、一般市民であろうが、犯罪資料なんて見せないと思うよ。」


 そんな話をしていると、馬車が止まった。


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