地竜の世話をしていたアメルーミラ
ギルド出張所での騒動は、一応、終息した。
ただ、カミュルイアンは、アンジュリーンに攻められた事が心に残っているのか、かなり、疲れた様子で、シェルリーンとウィルリーンに支えられていた。
アメルーミラは、地竜の世話をしつつ、ジューネスティーンを待っていた。
ギルド出張所から出てきたメンバー達を見ると、何だか気まずそうな顔をしてたのを、アメルーミラは不思議そうに見ている。
ただ、1人だけ、アンジュリーンだけが、何やらニヤけたような顔をして、少し頬を赤らめていたので、他の人とは、対照的な表情をしていたことが、気になったようだ。
アメルーミラは、ジューネスティーンとシュレイノリアの2人が、最後に出てきたので、気になったので声をかけた。
「あのー? 何かあったんでしょうか? それにさっきまで、中が騒がしかった様ですけど? それに、カミューさん、何だかげっそりして、疲れ切った感じですけど? 」
ジューネスティーンは、あまり、説明をしたくない様子で、アメルーミラの話を聞いていたのだが、隣にいたシュレイノリアが答えてくれた。
「ああ、カミューとウィルとシェルの痴話喧嘩があった。 どっちを長く愛してくれていたかでもめてた。」
アメルーミラは、なるほどなといった顔をするのだが、まだ、少し気になっている。
「でも、あのカミューさんの様子は、痴話喧嘩って感じじゃなかったですね。」
「あれは、アンジュに叱られたからだ。 本気のアンジュの怒りを受けて、凹んでいる。」
「ああ、そうだったんですか。 でも、アンジュさんは、そんなに怒ったような感じはなかったですね。 むしろ、満たされていたような感じを受けました。」
ジューネスティーンは、困ったような顔をする。
「それは、ジュネスがアンジュを癒してやったからだ。 アンジュは、とても満たされたのだろう。 だからだ。」
「おい、誤解を招くような言い方はよせ。」
何とも言えない言い方をしたシュレイノリアを、ジューネスティーンが注意する。
「へーっ、そうだったんですか。 私もアンジュさんのような満たされた恋をしてみたいですね。」
アメルーミラは、何気なく言っただけだったのだろうが、ジューネスティーンとシュレイノリアには問題発言だっだようだ。
今のアメルーミラの発言にジューネスティーンは、青い顔をするが、シュレイノリアは、イラッとした表情をする。
シュレイノリアは、ゆっくりとシューネスティーンの方に顔を向ける。
「ジュネス、私の知らないところで、アンジュと何かあったのか? 」
ジューネスティーンは、それを聞いてゾッとする。
「い、いや、アンジュと2人だけになった事はない。 いつも、シュレと一緒の時しかアンジュとは、顔を合わせた事はない。」
それを聞いて、シュレイノリアは、ジューネスティーンとアンジュリーンの2人だけになるような事が無かった事を思い出したようだ。
「確かにそうだった。 いつも一緒だった。」
「そすだろう。 ルーミラもおかしな事を言わないで、欲しい、なぁ。」
アメルーミラは、アンジュリーンの顔を思い出しているのだろう。
「そうだったんですか。 あんな乙女のようなアンジュさんを初めて見ました。」
シュレイノリアは、じろりとジューネスティーンを見る。
ジューネスティーンは、身に覚えの無い事で、シュレイノリアに睨まれてしまい、焦っている。
「さっき、アンジュにエッチいことをしたのか? 」
ジューネスティーンは、顔を青くして首を左右に振って否定する。
「いや、ない。 絶対に無い。」
じっと見ているシュレイノリアなのだ。
「私も見ていたが、そんな事をしたようには思えなかった。 何か、あったとしても、アンジュだけが感じたことだけかもしれない。 何をどう感じるかは、人それぞれだ。 手を握る行為にしても、その人の感情によって捉えられ方が違うからな。 ルーミラには、どうでも良いことだったとしても、アンジュには、とても大事な事だったのかもしれない。」
「えっ、そこで何で私の名前が出てくるんですか? 」
「特に意味は無い。」
アメルーミラは、自分には、どうでもいいことでも、アンジュリーンには、大事に思える事と言われて、なんの事なのか理解できなかったが、そこで何で自分の名前が出てくるのか気になったようだ。
ただ、その含んだような言い方がアメルーミラには、自分の過去について、シュレイノリアが気がついたのかもしれないと、一瞬、気になったのだろう、アメルーミラは、一瞬顔を曇らせるが、すぐに、表情を戻す。
自分の過去についてと、ジューネスティーン達のパーティーに入るために行ってきた事は、メンバー達に知られてはいけない事なのだ。
アメルーミラは、自分の表情を隠すようにするために、話を変えてきた。
「それより、これからどうしましょうか? 」
「ああ、今日は、ツカディアの街まで移動しよう。」
「はい。 それで、また、来る時に泊まったあの宿屋ですか? 」
ジューネスティーンは、少し考えてから答えた。
「いや、もう、ツノネズミリスは倒したから、ツカディアの街の宿も空いてきているだろうから、適当に探そう。 毎回、あの宿というわけにもいかないだろうからな。」
馬車の方を、ジューネスティーンは、チラリと見る。
ユーリカリア達が、どう思うかは分からないが、あの時、泊まった宿は、冒険者が使うような宿とは言い難いものがあったので、今回は、別の宿に泊まろうと思っているのだ。
(でも、ユーリカリアさん達が、前に泊まった宿に泊まりたいと思うなら、泊まっても良いかもしれないな。)
「わかりました。 じゃあ、街の入り口で聞いてみますね。」
そう言うと、アメルーミラは、御者台に移動して行ったのだが、運転はアメルーミラに任せることにして、ジューネスティーンとシュレイノリアは、後ろから馬車に乗り込んでいった。
馬車は、ギルド出張所を後にして、ツカディアの街に向かうこととなった。




