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剣 〜シュレイノリア 2〜


 シュレイノリアとジューネスティーンは、寮の前でメイリルダを待っている時も手を繋いでいた。


 ジューネスティーンは兄が妹を守るために繋いだようだが、シュレイノリアは顔を赤くして少しはにかんだ様子で立っていた。


 2人の思いには温度差があるように見えるが、寮の前に立つ2人を見る者は誰も居ない。


 2人が待っていると直ぐにメイリルダもギルド支部から出てくると、寮の前に立つ2人の様子を見て面白そうな表情をした。


 メイリルダは、受付嬢の制服から通勤用に使う普段着に着替えていた。


「お待たせ。ごめんね、ちょっと、遅くなってしまったわ」


 メイリルダは、そう言うと一緒にいるシュレイノリアが恥ずかしそうに歯に噛んでいる姿を見ると鼻をヒクヒクさせた。


 表情には少しいやらしそうな笑いを浮かべると、ジューネスティーンに聞かれないように配慮しながら顔をシュレイノリアの耳元に近づけた。


「ふ、ふーん。ジュネスは、妹と手を繋いでいるだけみたいだけど、シュレは、ちょっと違うのかなぁ?」


 それを聞いてシュレイノリアは肩をビクリと動かしたので、メイリルダは更に面白そうな表情をした。


「何だか、恋人同士みたいね」


 メイリルダによって、揶揄からかわれたシュレイノリアは恥ずかしくなり顔を更に赤くして、繋いでいる手を振り解こうとすると、ジューネスティーンは慌てて繋いだ手の力を強くして手を離すのを拒んだ。


 ジューネスティーンは、メイリルダがシュレイノリアを揶揄った内容聞こえなかったので、何でシュレイノリアが手を解こうとしたのかわからないといった様子で、しっかりと離されないように握った。


「ダメだよ。お前、外に出たら、何処かに行ってしまいそうだから、今日は、絶対に一緒だからね! 絶対に、この手は離さないよ」


 そう言って、ジューネスティーンはシュレイノリアの手を離そうとしない。


 シュレイノリアは、何度か手を振り解こう試みるが、それをジューネスティーンが許そうとしないので、結局、シュレイノリアは諦めてしまったようだ。


 その様子を、メイリルダは嬉しそうに眺めていた。


 メイリルダとしたら、2人は弟と妹といった立ち位置なので、2人が仲の良いのは嬉しい事なのだ。


「やっぱり、2人は本当に仲良しね」


 メイリルダは、ポロリと言った。


 それを聞いて、ジューネスティーンは、何を当たり前の事を言っているというような表情をしていたが、シュレイノリアは恥ずかしさが増してしまったようだ。


「バカ!」


 小さな声で、一言言うだけだった。


 そんなシュレイノリアを、メイリルダは可愛いペットでも見るような目で見つめていた。


(これだと、私が、2人の間に入って手を繋いだら、シュレがヤキモチを妬くかもね)


 恥ずかしそうにしているシュレイノリアを、メイリルダは擽ったそうな表情で見ていた。


 そして、シュレイノリアの空いている方の手を握ったので、3人は、シュレイノリアを中心に手を繋いだ。


「じゃあ、お買い物に行きましょう。それに、あなたたち背が伸びたでしょ。ギルドマスターが、2人に新しい服を買ってあげなさいって言ってたから、ジュネスの買い物をしたら洋服店にも行ってみましょう」


 メイリルダの話にジューネスティーンは、そうなのかと思った程度だったが、シュレイノリアの様子は違っていた。


 メイリルダは、動き出そうとすると、ジューネスティーンも動き出そうとするのだが、シュレイノリアの動きが鈍く動こうとしなかった。


 2人は、どうかしたのかというようにシュレイノリアを見ると、そこにはニヤニヤしたシュレイノリアがいた。


「ふ、ふ、ふ。そうか、そうだったのか! 今日は、服も買いに行けるのか!」


 シュレイノリアは、先程とは全く違う表情になっていた。


 ジューネスティーンとメイリルダは、シュレイノリアを見て、さっきまでの表情と変わっていた事に驚いていた。


 そして、両脇に居る2人は、シュレイノリアのその様子に何だか不気味なものを感じたようだ。


「よーし、ジュネスの買い物を、さっさと終わらせるぞ!」


 シュレイノリアは、一変して洋服を買うと聞いて積極的になった。


「そうか、服を買ってくれるのか。それは、ありがたい」


 その様子をメイリルダは、小さくても女の子なのだと思ったようだが、ジューネスティーンは何か違うように思ったのか考えるような表情でシュレイノリアの表情を窺うように見ていた。


 そんな2人の様子を気にする事なく、シュレイノリアは、2人を引っ張るように動き出したので、両脇の2人は呆気に取られていた。


 今まで、はにかんだような表情から一転して買い物に向かうと聞くと、その表情の豹変に驚いていた。


 小さなシュレイノリアが、ジューネスティーンとメイリルダを引っ張るようにしてギルド支部の門に向かって行くが、少し歩くと2人がシュレイノリアのスピードについて来ないので、なかなか前に進むことができないというように不満そうな表情をしてメイリルダを見た。


「メイ、お前は大人なのだから、私が引っ張るには重すぎるんだ。さっさと、ジュネスの買い物を済ませて服を買いに行こう。うん、そうだ、販売だけでなく仕立ても行っている店が良い。製造工程を見せてもらえたら、なお、ありがたい」


 ジューネスティーンは、シュレイノリアの思惑が何となく分かったようだと表情に出していたが、メイリルダは、仕立てる洋品店といったら一点物の受注生産をする貴族や金持ちのためのお店だと思うと金額が心配になったようだ。


 シュレイノリアの思惑に、両脇の2人の考えている事に少し違いがあった。


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