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派遣された警備隊のルイネレーヌ


 宴もたけなわになった頃、ジューネスティーンは、1人の女性に声をかけられる。


「今回の討伐達成、おめでとうございます。 これで、ギルドランクも一つ上がるかもしれませんね。」


 声の主を見るジューネスティーンだが、どうもその女性に違和感を感じる。


「ん? ルイネレーヌさん? 」


 着ている物は、軍服ではなく、帝都の警備隊の制服で、髪型も顔も化粧で変えられているので、一瞬見分けがつかなかったのだ。


「どうしたんですか? その格好は? 」


「ああ、今は、国務大臣であるソツ伯爵の指示で、ツノネズミリスから臣民を警備するために派遣された先遣隊なのだよ。 表向きだがな。」


「バレたら大変じゃ無いですか? 」


「いや、私の身分は、ソツ伯爵が保証するから、嘘にはならないよ。」


「はぁ。」


 ジューネスティーンは、気のない返事をしつつ、周囲を伺うと、ルイネレーヌのメンバーの顔を確認できた。

 ただ、1人だけ、エラント系亜人の姿は見えなかった。


「1人足りない様ですけど。」


「ああ、マルギーブの事か。 あいつは、ツノも有るからな。 ショクムンとジルバサルは、ドワーフだが、背の低い人属だで押し切るが、あのツノだと、周りから何を言われるか分からないからな、馬車の御者をしてもらっているよ。」


「ああ、なるほど。 それなら、フードでも被っていれば、なんとかなりそうですね。」


「そういうことだ。」


 ルイネレーヌのメンバーの話をしていると、ジューネスティーンは、話の内容を変えてきた。


「そういえば、ここには、ジュエルイアンさんの商会関係のお店はありますか? 」


「もちろんだ。 ここは、一大穀倉地帯だ。 あいつが、ここの穀物に絡まないわけがないだろ。」


「それで、お願いがあるのですけど。」


「ああ、昨日の鍛冶屋とのセッションの事だな。 また、やらかしやがったからな。」


 ジューネスティーンは、苦笑いをする。


「それで、ここの鍛冶屋の人たちなのですが、剣より包丁の方に目を向けているようなのです。 包丁は家庭でも使われますし、料理人達には、用途に応じた包丁が有ると便利なんですよ。 昨日の感じだと、剣より、そっち方面に目がいっているみたいだったので、その辺りの輸出ができるかもしれないと一報を入れておこうと思うんです。」


「ああ、後から、あの男が知る前に先手を打っておこうって事だな。 その話が出れば、アクションがありそうだな。」


「ええ、ツカ辺境伯領における剣の需要とか、計算してましたから。」


「ああ、エルメアーナの剣が有名になってしまって、カインクムも作り出しているからな。 これから剣を作っても2番手だと旨味がない事を、ここの鍛冶屋は分かっているみたいだな。 それで包丁か。 それなら、生産量は、剣の100倍、いや、種類を増やせば、1000倍はありそうだな。 ここの鍛冶屋もよく考えているな。」


「ええ、考えるから儲かる。 考えないのは、損をすることをよく分かっている様でした。」


「それなら、私の方から、こっちに居るジュエルイアンの商会に伝えておくよ。 商人目線だと、冒険者目線、鍛冶屋目線より、儲かりそうな話にまとめてくれるだろうからな。」


「助かります。」


 すると、ルイネレーヌは、鋭い視線をジューネスティーンに向ける。


「おい、お前達、落とし穴の爆弾の回収はどうしてやらなかった! 」


「ああ、あの鉄球の中身は、水ですから、見られても問題無いかと思ったんです。」


 ルイネレーヌは、苦虫を噛むような顔をする。


「あのなぁ、あの鉄球の中身はただの水かもしれないが、鉄球に刺さった棒に雷が落ちたら大爆発を起こすんじゃ無いのか? 」


「ええ、そうですね。 爆薬が無いので、ちょっと位雑に扱っても、雷さえ落ちなければ、爆発することもないので安全ですよ。」


「そうなんだよ。 あれだけ簡単な構造で爆弾が作れてしまうのだ。 雷を使える魔導士部隊に新しい武器を与えてしまったんだよ。」


 そう言われて、ジューネスティーンは、初めて気がついたような顔をする。


「そうですね。 移動中に爆発する可能性も少なくて、構造も簡単ですから、直ぐに作れてしまいますね。」


 呑気にジューネスティーンは答えた。


「あれ、かなり簡単に作れそうだからな。」


「でも、鉄球と水ですよ。 移動が問題でしょうし、それに、あれは、地面に有るから雷魔法で爆発しますけど、地面に設置すると、色々と問題が多いと思いますよ。 今回だって、爆発までに時間が掛かったのは、ツノネズミリスの大群によって、雷が電極に落ちにくかったみたいです。 簡単に作れても、電極に雷を落とすのは、それなりに考えなければ、扱い難いと思いますよ。」


「そうかもしれないが、原理を教えてしまったのは、大きな誤算だぞ。 研究というのは、時間と人をかけると案外伸びることが多いんだ。 発明より応用の方が数段簡単になる。 気を抜いていると、もっと凄い物を帝国が開発してしまうかもしれないそ。」


 ジューネスティーンは、ルイネレーヌに指摘された事に納得するような顔をする。


 過去に無い何かを作る発明には、かなりの労力が必要となるが、発明された物を応用して、使い易くするのは、比較的発明より簡単にできてしまう場合が多い。


「そうですね。 ちょっと失敗してみたいですね。」


「これは、軍事技術なのでな。 ジュエルイアンの領分を逸脱しているから、困っているんだ。 今更、全てを回収するとなると、駐留軍から盗み出す事になるので、少し困っているんだ。」


「残った爆弾は、爆発しない。」


 後ろから、声がするので見ると、シュレイノリアがいた。


「あれには、安全装置が付いている。 あのまま、雷を電極に落としても爆発はしない。」


「それは、どういう事なんだ。」


「雷が、電極→水溶液→電極、と、流れるなら、酸素と水素が発生するが、あれは、電極同士が最初はくっついている。 だから、あのまま雷を落としても、そのまま、地面に落ちるだけだ。 どんなに電極に雷を落としても爆発はしない。 あれは、落とし穴の壁の中に設置した制御用の魔法紋が無いと起動しない。」


「じゃあ、あとは、帝国軍にそれが理解できる人がいなければ、爆発させられないということか。」


「そういうことだ。」


「なるほど、そう言う事なら簡単には構造を理解できないと言うことか。」


 ルイネレーヌは考えている。


「だが、あまり、気が縮むような事はしないでくれ。」


「次から気をつけます。」


 地中に配置した爆弾については、単体では起動しないと、シュレイノリアの説明で分かったのだ。


 あとは、帝国がどれだけ自然科学に関する理解が進んでいるかによる。


 もし、原子分子に関する知識が有って分子が変化する等についての自然科学が理解されているのであれば、簡単に作られてしまうだろう。


 あとは、帝国の科学力によるところが大きい。


 すると、ルイネレーヌは、ジューネスティーン達から離れていった。


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