祝勝会
ジューネスティーン達が、鍛冶屋に話をした翌日は、朝から、レイミンが待ち受けていた。
祝勝会の予定の日であったので、夕方までの時間をどうやって潰そうと思ってたが、レイミンが迎えにきていたのだ。
「祝勝会は、夕方ですが、お召し物等のご準備に伺いました。」
ジューネスティーン達は、少し気になった様子を見せる。
「全て、ご用意させていただきますので、今日は、これから出ていただけないでしょうか? 」
「あのー、私達は、冒険者なのだから、これでも構わなく無いのか? 」
ユーリカリアが面倒くさそうに言うのだが、レイミンは、譲らない。
「いえ、英雄の方々には、英雄として、冒険者であろうと、農民であろうと、英雄には英雄としての振る舞いを行なっていただきたいのです。 これから先、あなた方を目指したいと思う人たちのためもありますし、地元の英雄は、とても素敵だったと、伝えなければなりません。 お召し物をご用意してありますので、申し訳ございませんが、お着替えをしていただきたく存じます。」
仕方がなさそうにユーリカリアは、メンバー達を見るが、ユーリカリア達のメンバーも、仕方なさそうな仕草をする。
「わかった。 今日は、言われた通りにするよ。 ジュネス達もそれで構わないか? 」
「そうですね。 断ったら、レイミンさんの顔も立たないでしょうし、ここは、お願いしましょう。」
レイミンは、ホッとするとユーリカリア達2パーティーを馬車に案内した。
一方、祝勝会の準備を指示して、自分の執務をしていたツカ少佐の元に連絡が届いた。
ソツ・キンクン・コルモン伯爵の使いが、ツカ少佐の元に来たのだ。
ソツ・キンクン・コルモン伯爵といえば、国務大臣として国内の警備を担当している。
早馬でツノネズミリスの討伐完了は出ているし、それにワツ・コンメン・メイミン曹長によって、帝国軍情報部に、リアルタイムで伝わっているのだから、帝国軍本部には伝わっている。
だが、帝都から506kmも離れているのに使いが来るには、早すぎるのだ。
(どういう事なのだ? あの大臣がこれ程早く動ける理由はなんだ? )
ツカ少佐は、その使いが、あまりに早いことを胡散臭く思う。
「わかった。 通せ。」
使いの兵士に伝えると、兵士は執務室を一旦去ると、使いを連れて来た。
帝都から、ツカ辺境伯領のツカディヲまで、506km有る。
通常の移動であれば、16日かかる。
この時点で、ツカディヲに人を派遣するには、ツカ辺境伯領から、軍に依頼が有ってから、すぐに派遣しなければならない。
ジューネスティーン達の移動速度を考えれば、明らかに、ジューネスティーン達より前に派遣を開始しなければ、間に合わないのだ。
使いの話は、ツノネズミリスの発生を聞いて、伯爵は、警備担当の国務大臣として、調査団を派遣したのだ。
ただ、今回の討伐があまりに早かったので、到着した時には、すでに討伐が終わっていたので、せめて祝辞を述べに来たのだという事だった。
今までのツノネズミリスの討伐には、1ヶ月前後の期間が掛かっていた。
今回の発生数の多さと、帝国軍の状況から、討伐に半年以上の歳月がかかる可能性のあるものなのだが、1日で討伐を完了してしまった事で、討伐前に到着できなかったのだ。
警備隊としては、ツノネズミリスの討伐に住民の安全確保の為に、警備隊を派遣する予定だったのだが、自分達は先発隊として赴いたと説明された。
(あの大臣にしては、動きが早いな。 だが、こちらの危機に対応してくれた事はありがたい。 せっかく来てくれたのだからな、手ぶらで帰るわけにもいかないだろう。)
「よく来ていただきました。 せっかくですので、本日の祝勝会に出席してはいただけないでしょうか? 」
「ありがとうございます。 当方としても、大臣への報告も有りますので、討伐された冒険者の方からお話も伺いたいと思っておりました。」
「ああ、今日の夕方に行います。 例の冒険者達は、今、着る物を用意しているはずですので、それまでは、基地内でお過ごしください。」
「ご配慮感謝いたします。」
ツカ少佐は、兵士に寛げる場所を提供するように言うと、警備隊の6人に部屋をあてがう事にした。
(あの伯爵、金と女にしか興味が無いかと思っていたが、意外にしっかりした所もあるのか。)
ツカ少佐は、少し感心した様子で、警備隊の6人を見送った。
夕方、祝勝会が開かれる。
全員が、かなり着飾らされており、特に女子率が高い事もあり、会場の男子率の高さから、入場した際はとてつもない歓声が沸いた。
しばらく収集が付かない有ようになっていたが、ツカ少佐の一言で、会場が落ち着くと、表彰式が行われた。
ジューネスティーンとユーリカリアのパーティーには、ツカ辺境伯領から、徽章を与えられた。
何か事有れば、ツカ辺境伯が後ろ盾となるという証として渡された。
そのような物を渡されるとは思わなかったようなのだが、場の雰囲気が、断ることを許さないとヒシヒシと感じていたので、突然の事だが、ジューネスティーン達は、渋々受け取った。
表彰式が終わると、宴会となる。
出席した兵士や、領内の著名人からの挨拶を受けていた。
ただ、最初は、ジューネスティーンとユーリカリアに群がっていた人達だが、徐々にアンジュリーン、ウィルリーン、シェルリーンに男達が群がり出した。
ウィルリーンとシェルリーンにおいては、カミュルイアンと一緒に食事でもと思っていたのだろうが、周りがそれを許してくれなかったのだ。
また、他の女子達にも人が群がっていた。
時々、数少ない女子の参加者が、ジューネスティーン、レィオーンパード、カミュルイアンに話し掛けて来ていたのだが、特に、カミュルイアンに女性が近付くと、ウィルリーンとシェルルーンは、気が気では無いようだが、周りに居る男子の輪の中から出れずに、引き攣った笑いを浮かべながら、カミュルイアンの方を確認していた。
そんな中でも、ユーリカリアだけは、どこからともなくグラスを手に持って、周りの男達と酒を酌み交わしていた。
ただ、ヴィラレット、フィルルカーシャ、アメルーミラは、周りに囲まれた男子に話しかけられて顔を赤くしていたのだが、アリアリーシャは、嬉しそうにしつつ、自分の胸の谷間を見せつけるような仕草を周りの男子にしていた。




