ツノネズミリス討伐報告書
ツ・リンケン・クンエイ殿下
当領地に発生していた、ツノネズミリスとサーベルタイガーの魔物について、討伐が完了した。
討伐を行なったのは、冒険者ユーリカリアのパーティーと、冒険者ジューネスティーンのパーティーによって討伐がなされた。
その際に、行われた作戦について報告する。
― 記 ―
ツノネズミリス
攻撃陣地を北の山の麓に構築し、ツノネズミリスを、魔法で誘き寄せて討伐した。
ツノネズミリスの発生した西の山の麓っではなく、隣の北の山の崖を利用して高台を錬成魔法で構築、その周囲に落とし穴(5m四方)を半円状に配置していくと、それを6本帯状に構築する。
落とし穴の中には、爆弾を配置してツノネズミリスが、100匹ほど落ちた時に、一つ一つ爆弾を爆発させる。
なお、爆弾の構造については、別記する。
また、高台の陣地から魔法攻撃を加えてツノネズミリスを撃退するのだが、その場所にツノネズミリスを誘き寄せる魔法を、シュレイノリアという魔法士が使って誘き寄せた。
誘き寄せられたツノネズミリスは、一直線にシュレイノリアに向かってくる。
その魔法は、有効距離が、3km以上あり、一度に、ほぼ全部のツノネズミリスを誘き寄せていた。
ただ、途中でその誘き寄せの魔法が切れることがあり、その魔物には、駐留軍が足止めの為に、魔物の餌を与え、時間を稼いでいる間に、ジューネスティーンのパーティーから討伐隊が向かい殲滅した。
ただ、その討伐隊のパワードスーツは、通常のフルメタルアーマーとは異なり、様々な、魔法が施されていた。
見たところ、かなり強力な防御力があると思われる装甲に覆われ、関節部分においても、中に入る人の動きに連動した骨格が有るとのことだった。
特に特筆するのは、その移動速度にある。
地面を滑るように走り、その速度は、馬の足よりも早く、1kmや2km程度なら軽く移動していた。
当初ツノネズミリスは、落とし穴に落ちて、何匹も折り重なって、背中を伝って、穴を抜ける程になった時に爆発が起こった。
落とし穴の底までの確認は取れなかったが、一回の爆発で、上空に爆発で引き千切られたツノネズミリスの手足や頭や胴体が確認できたので、かなり効果が高かった。
落とし穴には、25個の爆弾があり、それが、ツノネズミリスが溜まると爆発していった。
約100匹の落とし穴に落ちたツノネズミリスを、自動で爆発する爆弾によって、かなりの数を討伐した。
落とし穴の爆発が、一部突破されそうになった時、シュレイノリアが、機転をきかせ、アイスランスによって、落とし穴の先のツノネズミリスを倒した時、それを合図のようにユーリカリアが、落とし穴の先の魔物に攻撃するように指示を出すと、パーティーメンバー全員で、落とし穴の先の魔物に攻撃を加えることとなる。
その魔法攻撃によって、落とし穴の前が防衛ラインとなり、討伐が進む。
その魔法を通り越して来たツノネズミリスは、落とし穴に落ちることとなるが、魔法攻撃を突破するツノネズミリスの数は少なく、殆どが、罠の手前で討伐され、その後は、落とし穴に魔物が落ちて、その先にある攻撃用の陣地にまで達するツノネズミリスは、陣地の手前に居たパワードスーツを纏ったジューネスティーンによって討伐された為、陣地に達するツノネズミリスはいなかった。
討伐の終了直前に、大きさが馬並みの大きさのツノネズミリスが、魔法攻撃を避けて、落とし穴の罠も避けて突入してきたが、それもジューネスティーンが対応して討伐された。
あの大きさのツノネズミリスであれば、3m程度の高台は軽く飛び乗ってしまったと推測するので、その大型のツノネズミリスを高台に乗せる前に討伐できた事は、作戦の遂行上大いに貢献できたと判断する。
パワードスーツが地面を滑るように移動して、剣によって首を落とすことで、その大型のツノネズミリスを倒したのだが、一般的なフルメタルアーマーのような装備では、機動性に問題があり、また、並んで壁を作ったとしても、人程度の高さでは、上を飛び越えられたと推測する。
ジューネスティーン達の持つパワードスーツの防御力もだが、その機動性についても、強力な武器となって、高速移動する魔物にも対応できる。
なお、今回、見れた性能は、パワードスーツの性能の一部と考えられる。
また、向かって来たツノネズミリスが無くなると、後は、落とし穴のツノネズミリスをジューネスティーンが討伐し、ツノネズミリスの討伐はほぼ終わる。
その後は、魔物の渦の破壊となるが、ジューネスティーン達のパーティーから、4人がパワードスーツで、誘き寄せに失敗したツノネズミリスの討伐の後に行われた。
その魔物の渦の破壊については、本部から来たセイツ・マリン・コリン少尉、ワツ・コンメン・メイミン曹長が確認を行なっている。
ただ、遠目に見た魔物の渦の破壊は、爆破によって行われていた。
爆弾の構造
爆弾は、中が空洞の鉄球を用意し、空洞の中に水を充填する。
地上に出ている鉄球の天辺に棒が差し込んであり、その棒に雷魔法を落とす。
内部の水が、雷によって、分解されると、極めて爆発性の高い空気に変わる。
その空気が鉄球内で一気に発生して爆発を起こす。
通常は、全く爆発することは無いが、鉄球に刺さった棒に雷が落ちると爆弾となって爆発する。
残った爆弾は、駐留軍によって回収したので、その解析を本部の技術部で行う事を希望する。
サーベルタイガー
ツカラ平原にサーベルタイガーの魔物が、ツノネズミリスと同時期に発生していた。
駐留軍は、ツノネズミリスの討伐に当たっていた為、対応に苦慮していたが、ジューネスティーン達が、ユーリカリア達との合同訓練を行った際に討伐を完了したと、彼らから報告を受けている。
そのサーベルタイガーの魔物の討伐については、当方の偵察隊が到着する前に討伐が完了してしまった為、戦闘の詳細は不明だが、魔法とパワードスーツによって、討伐を行なったと彼らから報告を受けた。
魔物のコアの確認はしなかったが、討伐した数が、目撃された数と合っていたこと、そして、派遣した偵察隊に被害が無かったことから、討伐は完了したと判断する。
彼らの剣
彼らの剣は、斬る剣を好んで使っている。
通常、斬るための剣は、刃幅を広く取り、荷重が掛かった時に折れにくくするが、彼らの剣は、剣幅がかなり細い。
パワードスーツ用の剣を確認したが、刃幅5cmと広目だったが、一般の曲剣と比べてかなり軽く作られていた。
刃もかなり斬れるように研ぎ澄まされており、振り下ろした重さで斬るのではなく、刃の斬れ味で剣を引くようにして斬るという事だった。
それも、剣の軽さによって、引く事が可能になっていると判断できる。
また、細い剣でも簡単に折れたり曲がったりしないのは、剣の刃側に硬めの素材を使い、剣の芯に柔らかめの素材を利用していることから、折れにくく、曲がり難い剣となっているとの事だった。
その製造方法については、領内の鍛冶屋の希望によって、製法をジューネスティーンから教示を受けた。
また、南の王国において、斬れ味の良い剣が販売されていると報告があったが、その製法についても、ジューネスティーンが、その鍛冶屋に製法を教示した事で、作れるようになったと彼らが話してくれた。
パワードスーツ
彼らのフルメタルアーマーを、彼らは、パワードスーツと呼んでいる。
背中が開いて出入りするので、一般的なフルメタルアーマーとは比べ物にならないほど脱着が早い。
また、人が出た後でも、パワードスーツは、自立している。
その理由は、体に合わせた骨格が有り、その骨格がパワードスーツに人が居なくても自立している。
その骨格に装甲を取り付けてある。
防御力は、かなり高いと考えられ、そして、骨格を動かす事で、一般的な付与魔法による、身体能力強化より大きな力を出していると考えられる。
特に、人体とは別にパワードスーツ用の骨格があることで、内部にいる人体への影響を抑えることが可能となる。
彼らは、剣や武器、そして魔法を使っていたので、実際には見てないが、武器無しで、殴る蹴るのような武道系でも、かなりの力を有していると考えられる。
それは、馬並みのツノネズミリスの首を一瞬で切り落としてしまったことからも考えられる。
馬ほどの大きさの動物となったら、首を切り落とすために剣を使うなんてことは無い。
大型のギロチンでなければ落とせないような首でも、簡単に切ってしまったのは、腕の力も動かす速度も、明らかに今まである付与魔法で、出来るようなものではないと判断する。
フルメタルアーマーでは出せない性能を、人の外部に人体と連動して動く骨格を持たせることで、力も速度も速くなっていると考えられる。
また、地面を滑るように走る装置について、詳しい内容は聞く事ができなかった。
しかし、地面を移動する際に、土埃が舞い上がっていることから、風を吐き出す装置が有ると考えられる。
ただ、風だけの力で浮き上がったり、移動したりできているのかは疑問が残る。
風以外に何か別の方法を用いて移動している可能性が高いが、それ以上の事は聞き出す事ができなかった。
最後に、ジューネスティーンのパーティーとユーリカリアのパーティーとは、可能な限り友好的な立場で接することが、帝国の利益につながると考えられる。
以上
ツカ辺境伯領 駐留軍 ツカ大隊
帝国軍 少佐 ツカ・ベンミン・モンレムン




