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ツカ少佐がまとめる報告書について

 

 ツカ少佐は、ツノネズミリス討伐について、軍本部への報告書をまとめていた。


 過去のツノネズミリスの討伐報告書を確認すると、今回のツノネズミリス討伐は、過去に全く例が無いのだ。


 今までの魔物の討伐を考えたら、全く戦い方も違い、魔法能力も圧倒的に高かった。




 ツカ辺境伯領は、大ツ・バール帝国の穀倉地帯という事もあり、経済的にも安定しており、帝都とまではいかなくとも、地方の中心都市としての機能も有った。


 周辺の農機具関連の鍛冶屋もだが、穀物の出荷量の多さから、領地の臣民の生活も安定していた。


 隣国との交易も盛んで、国同士の対立も無く、駐留軍の仕事といえば、領地内に発生した魔物の討伐が主な仕事になっている。


 ただ、今回のようなツノネズミリスの発生のような稀な魔物の討伐は少ない。


 特に、サーベルタイガーの魔物の発生とツノネズミリスの発生が同時に起こったような事は、過去に経験の無いことと、帝都の東にある東の森の魔物の活性化によって、帝国軍だけで国内の魔物の討伐が進まず、苦戦しているのが、実情である。




 大陸の各国についても、大ツ・バール帝国の穀物輸出に頼った国政をする必要が有るので、周辺諸国も大国になってしまった大ツ・バール帝国と事を構えるだけの戦力も今は無い。


 また、同等の兵力を持って、大ツ・バール帝国と対峙した際、帝国では、魔物討伐の為の職業軍人が多いが、周辺諸国は、戦争の為に募集をかけて集める。


 圧倒的に職業軍人の数が異なってしまう為、同数の兵士では、圧倒的に大ツ・バール帝国が有利になる。


 ただ、大ツ・バール帝国においては、東の森の魔物や、時々、発生するツノネズミリスのような魔物の対応に追われる国政を強いられるので、財政状況としては、他国と戦争をするような余力は残ってないのが実情である。




 だからといって、世界情勢を確認せずに、気がついた時には国を蹂躙されていたでは困る。


 その為の情報機関として、兎機関が大ツ・バール帝国には密かに存在し、国内の貴族の動きや国外の情勢を常に確認している。


 現在の、第21代皇帝であるツ・リンクン・エイクオンにおいては、自分の子供達を政略結婚の道具として近隣諸国や国内の有力貴族と血縁を結ぶ事で、情勢の安定化を図っているのだ。


 詳しい話は表に出る事はないが、送り込んだ子供とその側近を使い、内情を掴ませると、兎機関を通じて帝都の皇城に情報がもたらされる。




 ツカ辺境伯領においても、兎機関は、活動をしている。


 特に、大ツ・バール帝国内で最大の領土を持つ、ツカ辺境伯が反乱を起こしたとなっては、帝国の屋台骨を揺るがす事になるのだ。


 ツ・バール国開闢以来の大物貴族であって、364年の歴史の中で、皇室にも影響力のあるツカ辺境伯領の動きは、帝国軍にも皇室にも、帝国の中央にとっては重要になる。




 ツカ・ベンミン・モンレムン少佐は、現在の辺境伯の長男として育ち、駐留軍を指揮しているが、それは、辺境伯領において、代々、受け継がれてきた風習であり、駐留軍司令官が退役して辺境伯を引き継ぐとされていた。


 過去に大きなトラブルも無く引き継がれていた風習なのだが、兎機関の報告によっては、大きなトラブルになりかねない。




 今回のツノネズミリスの討伐については、ツカ少佐から帝国軍本部に救援要請を行ったところ、ユーリカリアのパーティーが依頼を引き受け、ジューネスティーンのパーティーもサブパーティーとして参加した。


 通常であれば、2パーティー程度の冒険者では、対応できない程、大量のツノネズミリスの発生だったのだが、ジューネスティーンとシュレイノリアの考えた戦略と戦略兵器によって、ツノネズミリスの討伐に成功した。


 その結果が、兎機関にどのように写ったのかは、ツカ少佐には分からない。




 ただ、この辺境伯領は、帝国の一部なのだから、帝国の不利益になるような方針は立てるわけにはいかないのだ。


 ツカ少佐は、今回の討伐の報告書をまとめるに当たり、ユーリカリア達の魔法と、ジューネスティーン達が考えた罠と、その罠に使った爆弾によって倒す事ができた。


 防衛用の落とし穴を突破したツノネズミリスは、ごく僅かだったが、それは、ユーリカリア達の魔法攻撃チームが、落とし穴の前に魔法を放つ事で、防衛用の落とし穴へ来る前に大半を殲滅してたからで、当初の高台陣地の前に来た所を魔法で攻撃した場合は、もっと苦戦を強いた可能性は高い。


 それを落とし穴の爆弾が無くなる寸前に、シュレイノリアがアイスランスを落とし穴の前に放った事で、ユーリカリア達もそれに続いたのだ。


 当初の作戦とは異なるが、状況に応じて、シュレイノリアがアイスランスを放った事で、ユーリカリア達が、より良い作戦に修正したと言って良い。


(今回の討伐には、兎機関もだが、情報部も動いている。 下手な隠し事をした場合、痛くも無い腹を探られる可能性があるな。)


 ツカ少佐は、報告書にまとめる内容を拾い出していると、新たな報告がきた。




「報告します。 ジューネスティーン達の剣についいて地元の鍛冶屋が宿に押しかけた様です。 その対応の為に、競技場を使用して作り方の説明をすると、カエカ・カンモン・レイミン様から報告がありました。」


 その報告を聞いて、ツカ少佐は、少し困ったような顔をする。


(ジュネス君は、好意での事だろうが、それを兎機関がどう見るかだな。)


「わかった。 レイミンに伝えて、ジュネス君がどんな話をしたのか、こっちにも報告を回すようにと伝えておいてくれ。」


 報告をした兵士は、直ぐに退出する。


 ツカ少佐は、かなり細かな報告書をまとめる必要に迫られた。




 ツカ少佐は、軍本部の最高司令官であり、次期皇帝の指名を受けている、第一皇子である、ツ・リンケン・クンエイに対する報告書をまとめていた。


(こんなところか。)


 ツカ少佐は、報告書を羊皮紙にまとめると、一度読み返してから、丸めて蝋で封印すると、箱に収める。


 箱を紐で縛ると、付き人の軍人を呼ぶ。


「これを、帝国軍本部のツ・リンケン・クンエイ殿下に届けてほしい。 可能な限り早急にな。」


「はっ! 手配いたします。」


 兵士は手紙を受け取ると、執務室を出ていく。


(これによって、殿下は、どんな判断を下すのか。 兎機関、情報部、全ての情報を持って判断してもらうしかないな。)


 ツカ少佐は、考えている。


(だが、彼らを敵に回さない事、下手なちょっかいを出さないように願うしかないな。)


 ジューネスティーン達の戦力を考えたら、敵対関係になってしまうのは、非常に危険な状況になってしまう。


 魔法における攻撃力は、ユーリカリア達以上の力を持っていると考えられるのだ。


 ユーリカリア達の1人でも、大変な魔法力だったのだから、ジューネスティーン達の魔法力はそれ以上と考えられる。


 その中でも、シュレイノリアの魔法力は、かなり強いのなら、触らぬ神に祟りなしといったところなのだ。


 そんな思いをツカ少佐は思っていた。


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