戦闘終結 2
ツノネズミリスの討伐が終了すると、ジューネスティーン達もユーリカリア達も宿に戻った。
戻る途中の馬車の中でもユーリカリア達は、直ぐに寝込んでしまった。
カミュルイアンは、ウィルリーンとシェルリーンの2人に肩を貸すような格好で両脇に座られていた。
それを、何んとも言えない顔で、2人を気遣うようにしつつ、緊張した面持ちで座っている。
カミュルイアンは、戦闘時より、今の方が緊張しているように思えるのだが、それをレィオーンパードが、少し羨ましそうにしつつも、いつものように男同士のバカ話が出来ない事が、面白くないといった感じのようだ。
ユーリカリア達は、全員寝てしまい、アンジュリーンとアリアリーシャは、いつものように女子トークをしている。
アメルーミラは、自分は、パーティーのフォローが仕事ですと言って、御者台で地竜の手綱を引き、ジューネスティーンとシュレイノリアも御者台を使っているので、レィオーンパードは、1人だけ浮いてしまうのだった。
(あーっ、失敗した。 俺、1人だけだ。)
そう思って、御者台を見る。
(そうか、にいちゃんと姉ちゃんを後ろに座らせて、俺が御者台に行けばよかったのか。 ルーミラとなら何か話す事もできたかもしれないのか。)
レィオーンパードは、1人で居る時間の過ごし方が、分からずに時間を持て余しながら、外を眺めている。
時々、すれ違う人は、ツノネズミリスの討伐前と同様で、帝国軍がほとんどだった。
その中に、女性兵士も含まれていた。
(へーっ、こんな辺境の軍の中に女性も居るのか。 帝国は亜人には厳しいけど、女性は、軍の中にも含まれているんだな。 女性が前線に出る事もあるんだ。)
レィオーンパードは、すれ違っていく軍人の中に、女性が含まれていたのを見て感心していた。
セイツ・マリン・セイツ少尉と、ワツ・コンメン・メイミン曹長は、パワードスーツが2台が移動したことで、サイツ・モンメン・ヲンムン軍曹と別れて、そちらを確認するため移動していた。
狼煙が上がったところは、誘き寄せに失敗したツノネズミリスがいる事をジューネスティーン達に知らせる為に使う事を、予め聞いていたので、個別の対応についても確認をすることになったのだ。
特に、パワードスーツについて、様々な魔法を使って駆動していることは、予想できるのだが、実際に魔物との戦闘の時に、何か、戦闘系の魔法を放つのではないかとなり、2人が対応したのだ。
途中で陣地に向かわないツノネズミリスの討伐を、ジューネスティーン達が対応する事になっていたので、狼煙を上げて場所を教えることになっている事を、予めツカ・ベンミン・モンレムン少佐から聞いていた。
その狼煙を見て、そちらの偵察を行っていた。
その後、4台のパワードスーツが2チームに分かれて対応していたが、終わった後にツノネズミリスの生息地の方に4台が向かったので、その一部始終を見届けていたのだ。
終わった後、陣地の方に帰っていくのを確認した後に、爆破した後の様子を確認して、移動中の駐留軍と一緒に陣地の方に居るツカ少佐の元に向かったのだ。
「少尉、あの前から来る馬車は、対象の馬車です。 もう、撤収なのですね。」
「ああ、そうらしいな。 それより、曹長、連中と視線を合わせないように! 」
「はい。」
セイツ少尉とメイミン曹長は、一緒の駐留軍と思われるように、平然としてジューネスティーン達等気にしてないような様子ですれ違っていく。
日はまだ高い。
ジューネスティーン達の作戦は、通常のツノネズミリスの討伐とは全く異なり、半日も掛からずに終わらせてしまったのだ。
通常では有り得ない速度での討伐なので、駐留軍の中でも、まだ、討伐が終わったと聞かされてない隊もあり、緊張を解いてない隊も、まだ、見受けられる。
セイツ少尉とメイミン曹長は、ツカ少佐が残っている陣地へと移動していたのだが、その途中で宿に戻るジューネスティーン達とすれ違ったのだ。
2人は、同行した駐留軍の分隊と同行する事で、なるべく目立たないように陣地に近づこうと考えていたのだが、途中でジューネスティーン達が移動してくれた事で、何もせずに陣地に入れることになった。
もし、陣地にジューネスティーン達が居た際、2人だけでツカ少佐の元に行くとなると、自分達が本部から遣わされた偵察とバレないとも限らないので、ツカ少佐の元に向かう分隊に同行させてもらったのだ。
陣地に着くと、直ぐに、昨日は無かった馬止めが、作られていることに気がつく。
ツノネズミリスの討伐を確認するために用意された場所からは、その馬止めの塀は確認できなかった。
陣地に着て初めて確認できたのだ。
「少尉、あれは、昨日、無かったですね。」
「ああ、曹長。 おそらく、今朝、作戦前に対応したのだろうな。 あの扉なんて、見るからに頑丈そうだな。 魔物の侵入を防ぐ為に作ったのだろうし、昨日は、空堀だったところに水がはってある。 あれも、今日来てから水をはったのだろうな。」
「ええ、とても信じられない魔法力です。」
周辺を確認すると、2人は、高台に上がっていく。
高台には、ツカ少佐と数名の兵士が残っていたので、セイツ少尉とメイミン曹長は、ツカ少佐の元に行く。
2人は敬礼すると、セイツ少尉が話しかけた。
「二手に分かれた、フルメタルアーマーの偵察から戻りました。」
「ご苦労。 丁度良かった。 戦闘の始まる前からここに居たので、君達とサイツ軍曹には、その時の話をしておこうと思っていたんだ。」
ツカ少佐は、2人にねぎらいの言葉をかける。
ただ、その高台にサイツ軍曹が居ないことに、セイツ少尉が気がつく。
「ところで、サイツ軍曹は? 」
「ああ、落とし穴の爆弾を回収を、確認に行っている。」
2人は、爆弾と聞いて、顔をしかめた。
「危なくはないのですか? 」
「ああ、あれな、シュレ君に聞いたところ、鉄球の中に入っているのは水だけなんだそうだ。」
ツカ少佐は、ジューネスティーンが来る前に、シュレイノリアから、爆弾処理の為に話を聞いていたのだ。
「鉄球に黒い棒が立っていただろう。 あの棒に雷魔法を落とすと、中の水が分解して爆発するらしい。 だから、雷があの棒に落ちなければ、安全だということなので、兵士達に回収させている。 それをサイツ軍曹が確認している。」
その説明を聞いて、セイツ少尉とメイミン曹長は、顔を見合わせる。
昨日、2人は、あの鉄球の中に爆薬が入っていると思っていたので、恐る恐る近寄って確認していたのだが、ツカ少佐はあの中にある物が水だと聞いて、驚いたようだ。
シュレイノリアが、落とし穴に設置した、爆弾の構造は、鉄球に金属の棒を立てて、棒と鉄球の隙間を、石から生成した雲母を使って絶縁物にしていた。
雷の電圧が分かれば、雲母の厚みと、棒から鉄球表面までの、絶縁物の厚みも決められ、最低沿面距離を何cmにすれば良いのか分かる。
内部の水も水魔法で集めた水は、ほぼ純水となってしまう。
純水は電気を通さないが、集めた水に、岩塩でもよいし、体の汗でも構わないので、塩分を少量混ぜてしまえば電解液となる。
雷は、上空の空気が静電気によって電気を持つ。
その電気が、限界を超えて溜まってしまった時、地面のアースとの間で放電が起こるのだが、それが、雷として現れる。
棒に雷を当てて、陰極として、鉄球表面が陽極になれば、その両極には、分解された酸素と水素が発生すると、鉄球内に分解された酸素と水素が充満する。
密閉空間で酸素と水素を一気に発生させれば、気体圧力が急激に上がって初熱する。
その温度が、水素の発火温度に達して、爆発を起こすのだ。




