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パワードスーツの剣


 5箇所の魔物の渦を破壊した4人が戻ってきた。


 ジューネスティーンは、パワードスーツの通信機を使う。


「すまないが、そっちは、シュレと合流して、魔物のコアを集めてくれ。 流石に10万個ものコアだと、人手が足りない。 それと、シュレにサーチの確認も頼んでくれ。」


「わかったわ。 でも、サーチは、シュレに頼んで無かったの? 」


「ああ、言われた時には、シュレも魔物のコアの回収に回ってた。 俺は、高台の上にいる。」


「・・・。 じゃあ、シュレと合流するわ。」


 アンジュリーンが、答えてくれた。




 そんなやりとりをしていると、アメルーミラが、ユーリカリア達の賄いの片付けが終わって戻ってきた。


「ルーミラ、悪いが、魔物のコアを集めるのを手伝ってあげてくれ。 それと、ユーリカリア達の、疲れが心配だから、シュレと相談して必要なら、休ませてあげて、何か出してあげてくれないか。」


 戦闘終結後に、軽く飲み食いさせてはいるが、大掛かりな魔法の連発を、数日の訓練で、実践に挑んだのだ。


 ジューネスティーンにしても、魔法が使えるようになって、直ぐ、これだけ大掛かりな魔法を連発したことはなかったのだ。


 ただ、アメルーミラにしたら、ついさっき、軽く飲み食いさせていたので、またなのかと思ったのか、少し不思議そうな表情をしたが、何も聞くことなく、指示を受け入れる。


「わかりました。」


 アメルーミラは、片付け物を、一旦、馬車に戻していて、終わったところで、高台に上がって来たのだが、また、高台を降りて、シュレイノリア達の手伝いに向かった。


 ユーリカリア達が、疲れた体を鞭打ってコアの回収に向かって行ったので、彼女達の様子をアメルーミラに見てもらおうと考えたのだ。


 大量の魔法を放った後は、精神的な疲れが大きい。


 体は、疲れてはいないのに、精神的に疲れた時の倦怠感は、体の動きが鈍くなるので、その時の状況を、アメルーミラにも知っておいてもらった方が、今後、アメルーミラに魔法を教えていく際、大量の魔法を放つとどうなるのかを教えることになる。


 実際に限界近くまで魔法を放った人たちを見るのも、良い勉強になるのだ。




 高台の上には、ジューネスティーンとツカ少佐とその兵士だけとなる。


「なあ、ジュネス君、そう言えば、さっき、南の王国で噂になっている剣の話が出たが、あの剣は、君が作り方を教えたのか? 」


 南の王国の剣の話は、ジューネスティーン達が、帝国に向かう前にエルメアーナが、売り出しており、その騒動をジューネスティーンは知っていて、あまり、いい思い出ではないのか、一瞬、苦い顔をする。


「多分、エルメアーナの事だと思いますけど、そのパワードスーツに付けている剣と同じです。 自分は、刺す剣は、好きじゃないので、斬る為の剣にしただけなのですけど、エルメアーナに、かなり、詳しく説明させられました。」


 そう言うと、パワードスーツの腰にある剣を鞘ごと外してツカ少佐に渡す。


「これは、パワードスーツ用なので、刃が少し太めで長いのと、持ち手の柄の部分が長かったり、太かったりしてますけど、南の王国のエルメアーナが作っている物と、ほぼ同じ原理で作ってます。」


 ツカ少佐は、渡された剣を鞘ごと持って、外観を確かめるように眺める。


(持った重さは、一般的な曲剣より、少し軽いかもしれないな。)


 長さは、少し人には長い程度なのかと感じるが、柄は、50cm程有り通常の物より長いと感じた。


 ただ、パワードスーツの手を見ると、人より少し大きいかと思えば、言われた通り、パワードスーツ用なら丁度良い長さと太さなのかと思ったようだ。


「ジュネス君、抜いてもいいか? 」


「ええ、構いません。」


 剣を見れると思った兵士たちは、ツカ少佐の周りに集まり出した。


 ジューネスティーンの了解を取った、ツカ少佐は、周りに集まり出した兵士を気にしながら、ゆっくりと剣を抜いてみる。


 抜く際に少しひっ掛かる感覚があるが、2cmほど引き抜くと後は、直ぐに引き抜けた。


 ツカ少佐は、剣を引き抜くと、隣に居た兵士に鞘を渡す。


 切先を上に掲げて、剣を側面から、刃側、峰側と角度を変えて眺める。


「なる程、綺麗な曲がりを描いている。 切先の方は、曲がりが少ないが、途中から綺麗に曲がっている。」


 切先から少しは、わずかに反っているように見えるが、他と比べると、反っているというより、ほぼ、真っ直ぐになっていた。


「ああ、一応、突く事もできるように、切先の方は、曲がりを抑えました。」


(まあ、突くなら真っ直ぐの方が都合が良いのか。)


 ツカ少佐は、そのバランスをうまく考えた形にすると、こうなるのかと、思ったようだ。


「そういえば、さっき、あの大型の魔物を斬ったのだな。」


「ええ、そうです。」


(あんな大物の魔物をこんな細身の剣で首を落としたのか。 通常なら、折れてしまうか、曲がってしまうようなところなのに、刃こぼれも無いのか。)


 ツカ少佐は、さっきの戦闘の様子を思い出した。


「ジュネス君、通常なら、あれだけ大物の魔物だと、剣が折れるか曲がるかしそうなのだが、この剣は、そんな事も無いみたいだな。」


「ああ、通常の斬る剣というのは、刃に荷重が掛かってしまいますから、その位の刃幅だと、そうなりますね。 一般的には、折れたり曲がったりしない為に刃幅を広げたり、厚みを厚くしたりしますけど、それだと重くなってしまって、剣速が落ちてしまうので、斬るというより叩くようになってしまいます。 これは、硬い材質と柔らかい材質の素材を重ねて作ったんです。 刃は硬い素材にして、剣の中心は、柔らかい素材になっているんです。 だから、当たった時の衝撃を中心の柔らかい素材が吸収してくれるので、滅多なことでは折れることはありません。 それと、斬る時に少し引くようにしてます。 それも、その程度の重さだから、自由が効くんです。」


 素材についての説明には、少し、困ったような表情をしていたツカ少佐だが、後の引きながら斬るについては、理解できたようだ。


 後半は、少しホッとしたような表情で半紙を聞いていた。


「確かに、一般的な斬る剣は、折れたり曲がったりしないために厚みを持たせるから、自由度が無いな。 だが、この剣なら、人が持っても少し重い程度だな。」


「これは、パワードスーツ用ですから、刃幅も広く、長さも少し長く作ってます。 自分がいつも使っている剣は、その剣の半分位の重さですよ。 それに斬るには、引きながらか押しながらでないと、斬れないですから、振り下ろした時に、刃が引かれるように振り下ろしてます。 パワードスーツなので、もう少し重くても取り回しに問題はないのですけど、不必要に重くしても意味が無いかと思って、そのサイズにしてます。」


「ところで、ジュネス君。 これと同じ剣が、南の王国で売られていると言ってたな。 その剣は、どんな感じなのかわかるか? 」


「ええ、多分、自分の剣とほぼ同じだと思いますから、刃幅3cm、刃渡り80cm程度だと思います。 あと、柄は、20cm前後でしょう。 重さは1.5kg前後だと思います。」


「その剣でも、魔物の首を落とせるのか? 」


 ツカ少佐は、ジューネスティーンの説明だと、レイビア程度の剣のように思えたので、思わず聞いてしまったのだ。


「帝都の周辺の魔物程度なら、それで、首を落とす程度なら問題ないですね。 それと、斬る瞬間に剣を引くようにしてますから、そのせいかもしれませんけど、問題ないですね。」


「ん。 じゃあ、君は、剣が獲物に当たった瞬間、そのまま刃を入れるのではないのか? 」


 そう言われてジューネスティーンは、少し考えるような様子を見せるが、すぐに、答える。


「そうですね。 刃が、獲物を滑るようにしてますね。 例えば、その刃の中央に魔物の首が触れたら、剣を引きますので、首を切り落とした時は、七分目か八分目のところまで、擦るようにして斬ってます。 ただ、それは心掛けで、実際には、六分目辺りまでしか擦れてないかもしれませんけど。」


「なる程、そうやって、剣を操っているのか。 それにこの剣でこの重さなら、通常の剣ならもっと軽いから、そういった微妙な調整も効くってことなのか。」


「そうとらえてもらって良いと思います。」


(折れない斬る剣なら、それも可能なのか。 兵士同士の戦争より、魔物との戦いがメインなら、その方が良いのか。)


 ジューネスティーンは冒険者なのだから、戦う相手は、常に魔物となる。


 金属の盾や、フルメタルアーマーを着込んだ兵隊を相手に戦うとなると、話は変わってくるのだろうが、ツカ少佐は、今の話を聞いて、満足したようだ。


 隣の兵士から、鞘を受け取ると、剣を鞘に収めてジューネスティーンに返した。


「面白い話を聞かせてもらったよ。 ありがとう。」


 ジューネスティーンは、剣を受け取ると、パワードスーツに戻した。


(剣については、少しは付いていけた。 南の王国のエルメアーナか。 あの国でなら、剣を購入することも可能なのか。 良い話を聞かせてもらえたな。)


 ツカ少佐は、少し安心したような顔をする。


(それに、斬る剣に付いては、面白い事を聞いた。 引くか押さなけれ斬ることはできない。 だったら、斬る剣については、兵士に対する訓練方法にも加えられるかもしれないな。 良い話を聞かせてもらえた。)


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