表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1257/1356

通信機

 

 遠くで、爆発音が聞こえる。


 サーベルタイガーの話をしていた時にも、爆発音が1回聞こえたので、これで、4回目の爆発だったのだが、今回は少し大きめの音がしたように思えた。


 すると、背中の開いているジューネスティーンのパワードスーツの中から、アンジュリーンの声が聞こえてきた。


「ジュネス。 5箇所の爆破は終わったわ。 シュレに魔物の渦の確認をしてもらえないかしら? 」


 さすが、その声を聞いて周りの兵士達は驚いたようだ。


 そこには、パワードスーツの背中が開いていて、誰も居ないのに、女子の声が聞こえてきたのだ。


 興味津々で眺めていたところに、突然の声に驚いた様子を見せていた。


 流石に、こう頻繁に声が聞こえると、ツカ少佐も、遠くの声が近くで聞こえることを聞かざるを得なかった。


「ジュネス君、今の声は、どう言う事なんだ? さっきも、聞こえたけど、なんで誰も居ないのに、声が聞こえてくるんだ? 」


 ギルドには、別の支部と話ができる魔道装置があるが、それは、簡単にも落運びができるようなものではないことは、ツカ少佐も知っている。


 だが、パワードスーツは、自由に動けるのだ。


 攻撃をする、防御をする。


 自由に動き回っていても、遠距離の周辺の状況が、リアルタイムで分かるのは、メリットが大きい。


「ああ、説明しますので、ちょっと待ってください。」


 そう言うと、パワードスーツの後ろに回って、背中の中に声をかける。


「爆発は、4回聞こえただけだったけど、5箇所の爆破が終わったのか? 」


「ちょっと声が遠いわね。 まあ、いいわ。 最後は、近かったから、同時に爆破したのよ。 ツノネズミリスも少し多かったから、一つずつ破壊したら戦闘になるかもしれなかったので、二手に分かれて同時に爆破したのよ。」


 確かに、魔物の渦が近い位置に有ったら、片方を破壊したら、もう片方のツノネズミリスが攻撃してくる可能性が有る。


 4人を二手に分けて、同時に爆破すれば、その心配も無い。


「ああ、そう言うことか。 後は、確認だけだな。 なら、シュレのサーチで確認してもらおう。 付近に何も無いようならら、戻ってきてくれ。」


「わかったわ。」


 通信が終わると、ツカ少佐達に通信機についても説明をする。




 ツカ少佐は、少し惚けたような顔をしていた。


「ツカ少佐、今のは、通信装置です。 これは、魔法で電磁波を発生させて、その電磁波に人の声を乗せているだけです。」


「でんじは? 」


 ツカ少佐の反応を見て、電磁波についての基礎知識がない事にジューネスティーンは気がついた。


「すみません。 雷の光はわかると思いますけど、あれを利用した通信装置だと思ってください。 ただ、通信に使う雷は、すごく微量なので、雷のように光ることも大きな音がする事は無いのですけど。」


 ツカ少佐は、更に困ったような顔をする。


「電気が流れると、流れた方向と垂直に磁界が発生するんです。 雷が落ちた時は、縦に光が伸びると思いますけど、その周りを渦を描くように磁界が走るんです。」


「そんなものがあるのか。 光は分かるが、その周りに渦を巻くものなんて見た事がないな。」


「ああーっ、すみません。 電磁波は目に見えるものではありません。」


 ツカ少佐も兵士たちも困ったような顔をしている。


「多分、今は、電磁波というものが有る。 その電磁波に人の声を乗せて送っているとだけ、分かってくれればいいです。 通信に使うとなると、変調とか周波数変換とか、色々な工程をたどらないと、電磁波にはなりませんし、その電磁波を受けるにしても、周波数変換して復調させないと聞くことができないんです。」


「じゃあ、その目に見えない、“でんじは” というものを使って、遠くの人と話をしていると言うのか。」


 ツカ少佐も、その話を周りで聞いていた兵士達も、ジューネスティーンの話についていけないようだ。


「でも、ギルドにも各支部を繋ぐ魔道具なら、顔を見ながら話ができるそうですから、それよりは性能が落ちると思います。 こっちは、声だけしか送れませんから。」


「うーん。 そうなのか、だが、これは、いつでも、どこでも使えるのなら、こっちの方が性能は高いようにも思えるな。」


 ツカ少佐は、パワードスーツの中から声のした方を見つめながら、つぶやいた。


(この戦闘中に話ができるのは、ありがたいな。 戦況を見て兵の投入、攻撃箇所の指示、戦況報告、偵察部隊からの情報、リアルタイムで伝えられれば、かなり大きな戦果を得る事ができる。)


 ツカ少佐は、通信機の有用性を認識していた。


(しかし、詳しい説明を聞いても、誰も理解できないだろうな。 聞いて、理解できるなら、もっと詳しいことを聞いてもいいが、俺もここの兵士達の誰もが今の話が理解できてなさそうだからな。 通信機の話は打ち切ろう。)


 作り方を聞いても原理について理解ができないなら、同じ物を作る事はできないだろう。


 設計図が有って、パーツも揃っているなら可能だろうが、概略を聞いて、設計図を作ってパーツを作るところから始めるのでは、素人では無理だとツカ少佐は判断したようだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ