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ツカラ平原のサーベルタイガー


 ジューネスティーンは、ツカ少佐と兵士達が、パワードスーツの周りに集まっているのをみて、どうしようかと考えている様子だった。


 流石に触れる範囲までは近付いてないのは、ツノネズミリスの討伐を行ってくれた事で、それなりに礼を尽くしているのだろう。


(あまり秘密にしていても、仕方がないか。)


 ジューネスティーンは、ある程度の情報は、ツカ少佐に話す事にした方が良いと判断したのか、ツカ少佐に近寄っていく。


「すまない、これ、なんで立ってられるんだ? 」


「ああ、体に合わせて、骨格を用意しているんです。 その背中にブロックのようになっているのは、背骨のつもりです。 足も外側に骨格になるものが、用意されていますので、その外装骨格に装甲を取り付けてあります。 だから、人が入ってなくても立ってられます。 そうする事で、乗り降りも簡単に出来るようになってます。」


 ジューネスティーンは、外装骨格について、簡単に説明すると、人が立っていられる事、動物も人も骨に筋肉があり、立っていられると思ったのだ。


「ああ、普通のフルメタルアーマーじゃあ、こうは行かないな。」


 フルメタルアーマーには、そんな骨格になるようなものは無く、パーツを人の体に取り付けていくので、人が居なければ、崩れてしまう。


 パワードスーツには、そんなことはなく、中から人が出ても立っていられるのだ。


「ええ、あれは、人の体に実装してますから、こう簡単にはいきませんね。」


「しかし、すごいな。 これだと、奇襲を受けても直ぐに、これで戦いに出れるな。」


 ツカ少佐は、感心したようにいう。


 フルメタルアーマーを実装するには、一つ一つのパーツを体に取り付けていく必要があり、そして、装備する人だけで取り付けることはできず、数名の補助によって取り付けられるが、パワードスーツは、背中から入れば、直ぐに装備できたのだ。


 ジューネスティーンとツカ少佐の話を、周りに居る兵士たちも興味津々と聞いていた。


「先日、ツカラ平原でキャンプをしていた時、夜中に魔物の奇襲を受けましたけど、何とか対応できました。」


 それを聞いて、ツカ少佐は、表情を曇らせた。


「あそこの魔物は、サーベルタイガーの魔物じゃなかったか? 」


「ああ、牙の有る虎といった感じでした。 結構、強い魔物でしたね。 確か、5匹だったと思います。 どうも一度受けた攻撃は、直ぐに覚えてしまう様で、アイスランスの攻撃を何度も躱されました。」


 ジューネスティーンが、大したこともなかったように言うが、それを聞いて、ツカ少佐は、目を白黒させている。


「それで、その5匹の魔物は、どうなった? 」


 ジューネスティーンは、何を聞いてくるのかと、少し不思議そうな顔をする。


「全部、倒しました。」


 ツカ少佐の顔から、血の気が引いていた。


(本部の指示で送った偵察隊が無傷だったのは、ジュネス達が魔物を駆逐していたからだったのか。 どうりで被害がなかったわけだ。)


 駐留軍からも、偵察としてツカラ平原に偵察を出していた。


 ツカ少佐は、魔物の被害を気にしていたようだったのだが、無事に偵察隊が帰れたのは、運が良かっただけかと思っていたのだが、今の話で、一番危険な魔物をジューネスティーン達が駆逐していたと理解した。


「なあ、その魔物なんだが、Bランクと言っても、限りなくAランクに近い魔物だと言われている魔物だったんだが・・・。」


 それを聞いてジューネスティーンは、なるほどといったような表情を見せた。


「なるほど、意外に手強いと思ったのは、そのせいだったんですね。」


 それを聞いて、ツカ少佐は、どうしたものかと思ったようだ。


(あのサーベルタイガーは、東の森の魔物の次に危険だとされている魔物だぞ。 それを5匹とも倒したと言うのか! )


 そして、周りの兵士達もサーベルタイガーの魔物を倒したと聞いて、少しざわつき出した。


「なあ、ジュネス君、その時は、どうやって対応したのだ。」


「ああ、自分ともう2台のパワードスーツを出して、対応しました。 流石に、生身では対応できそうも無かったので、仕方なく使いました。」


「それで、被害はあったのか? 」


 ツカ少佐は、恐る恐る聞いた。


「いえ、怪我とかはなかったですよ。」


(あのサーベルタイガーの魔物を無傷で、しかも、5匹を葬ったのか。)


 ツカ少佐は、引き攣ったような顔をする。




 周りの兵士もサーベルタイガーの魔物の強さは知っている。


 ツノネズミリスの発生が無ければ、サーベルタイガーの魔物の討伐軍が組織されて戦う事になっただろうが、強力な魔物なので、多くの戦死者が出てもおかしくは無い討伐なのだ。


 もし、駐留軍が、ジューネスティーン達と同じ13人で対応したなら、数分で、確実に、駐留軍が全滅する魔物なので、最低でも100人規模の中隊が出動する話が上がっていた。


 ただ、中隊で、5匹のサーベルタイガーと戦ったすれば、無傷で帰れる兵士は居ないだろうと噂されていたのだ。


 誰もが、その貧乏くじを引かないことを願っていたのだ。




 今回のツノネズミリスの討伐が終わった後は、そのサーベルタイガーの魔物の討伐が組織されると思っていたところ、それが、今、ジューネスティーンの口から、討伐が終わっていると聞かされたのだ。


 兵士達の中には、ホッとする者と、その危険なサーベルタイガーを倒してしまったと聞いて、ジューネスティーン達の強さに圧倒される者に分かれたようだ。


「ジュネス君。 このツカ辺境伯領には、ツノネズミリスの発生もだが、そのサーベルタイガーの発生についても、ツノネズミリスと同様か、それ以上の問題として捉えていたのだよ。 幸い、サーベルタイガーの発生した場所が、ツカラ平原だったので、ツノネズミリスを優先したのだが、発生場所があそこではなく、村や町の近くだったら、そっちを最優先で討伐しなければならなかったのだよ。」


 そこまで言うと、ツカ少佐は、ジューネスティーン達が、ツノネズミリスの討伐に赴いてくれた事で、ツカ辺境伯領の二つの問題が片付いてしまったのだと認識した。


「君のお陰で、二つの問題が解決してしまった。 本当に、君達の力は計り知れないよ。」


 そう言うと、自分達がかなりの幸運に恵まれたと実感したように、顔を綻ばせる。


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