攻撃陣地の錬成
ツカ少佐が、戻った後、ジューネスティーン達の作業も進み、対ツノネズミリス用の罠を完成させると、その中央に迎撃用の足場を完成させる。
背後の切り立った崖の手前に高さ3mの高台を作るのだ。
その作業に入る前に、一旦休憩に入ると、休憩中に高台の説明を全員に行う。
アメルーミラが、休憩のお茶やら、食べ物やらを忙しく渡していた。
その休憩には、残った3人の兵士達も聞いているのだが、作業には錬成魔法が必要となるので、兵士達は、作業には参加できないので、邪魔にならない場所で見学となる。
最初は、12人で崖の前に等間隔で半円を描くように並ぶと、足元の土地を錬成して、円の内側に押し出すように盛り上げる。
ただ、中央部だけは、錬成を行わずに残しておいたので、4分の1の円が二つ崖の前に隙間を開けて置かれたようになる。
それぞれの足元の土地は盛り上げられ、内側に向かって半円状に崖の前に盛り上がっていくと、錬成前より、1m程高くなる。
そして、高くなった分だけ、その周辺は窪地となるので、半円状の高台は窪地の底から2m程程の高低差ができる。
高台ができたところで、作業を止めると休憩を挟む。
また、アメルーミラが、休憩の用意してくれた。
何度も行っていると、周りも慣れた手つきで、順番にアメルーミラから、お茶やら食べ物やらを貰っては、思い思いに寛いでいる。
軽い休憩が終わると、12人は、高台の上に移動する為に中央の溝に集まると、ジューネスティーンが、高台に上がるためその溝の奥、崖に向かうように階段を錬成していく。
ジューネスティーンの錬成した階段を利用して高台に上がると、崖を錬成して削り出していくと、削り取った土砂を高台に錬成で平らにならしていく。
崖の土砂を利用して、さらに高台を高くしていく。
崖を削る者と、削った土砂を平にならしていくものと、分かれて錬成を行なって、高台を3mまで高くする。
崖を削り取ったので、崖が奥に窪んでしまっているが、崖が窪んだ事で最初に作った階段を奥に伸ばすように作る事で、上り下りも出来るようになると、半円の中央の溝の上部だけを左右から押し出すようにして半円状に変化させる。
その下は、通用門のようになり、その奥に階段が作られているので、そこから、高台に上がれるようになる。
階段周辺と半円の縁に簡単な壁を錬成して、攻撃用の櫓を完成させる。
櫓が形になったのを確認するために、一旦、外に出て、外観を確認していく。
下から見た時の状況を確認していると、アメルーミラの準備が整うので、休憩に入る。
その後は、二手に分かれて作業が始まる事になる。
ジューネスティーンとシュレイノリアが、高台の櫓の入り口付近に2人だけのこり、残り10人は、崖に移動した。
10人は、崖の凹凸を錬成して平面にならしていく。
人が登れないような崖でも、獣道というものが存在する。
山羊のような動物が切り立った崖をその、僅かな凹凸に爪を掛けて移動する例もあるので、その移動を阻害するために、崖の凹凸を錬成して滑らかにして、側面を登る事を阻止するのだ。
突破してきたツノネズミリスが、崖を利用して櫓の上に上がってこないとも限らないので、背後の憂いを立つためにも必要な作業となる。
10人に、その作業を行わせている間に、ジューネスティーンとシュレイノリアは、2人で別の作業を行う。
錬成魔法を行うのだが、高台を作るように、ただ、地面の土を魔法で動かして形を作り、固めて石のように硬くするのではなく、2人は、地中の成分の抽出を行い始めたのだ。
土地の土というのは、様々な成分が含まれているので、その中から、必要な成分だけを抽出するのだ。
ジューネスティーンとシュレイノリアは、錬成魔法を駆使して地中から金属の成分だけを抽出していく。
抽出した成分を錬成して、大きな板を形成していくのだ。
その大きな板は2枚あり、二つの大きさを合わせると、高台の入り口の大きさと同じサイズになる。
板の形成を行うと、さらに何か別のパーツを作り始めていった。
2人は完成させると、その金属の板やパーツを入り口に移動させる。
大きさから相当な重さになるのだろうが、シュレイノリアの魔法紋によって、簡単に移動させてしまうと、高台の櫓の入り口に頑丈そうな金属の門が設置された。
観音開きの門が完成する。
二手に分かれて、崖の凹凸を滑らかにする錬成と、高台の櫓の入り口の門を形成したのだ。
これで、当初の計画通り、周辺の落とし穴と、落とし穴を通過してしまった魔物への魔法攻撃の場所の設置が完了した。
12人がそれぞれの作業を行うにあたり、その一部始終を見ていた3人の兵士は、その都度、口を開けて、その光景を眺めているだけとなってしまった。
ただ、休憩は一緒に行ったので、その都度、ジューネスティーンとユーリカリアに、駐留軍本隊に伝える内容が有るか話を聞いてきた。
だが、現状では、作業が順調に進んでいることだけだった事もあり、3人の兵士も初めて見る大規模な錬成魔法による櫓の形成を目の当たりにしている方を選んだのだろう、3人は報告に向かうではなく、その作業を興味津々と、ただ、眺めていた。
最後に高台の櫓の手前の窪みの所にシュレイノリアが、トコトコと向かうと、水魔法を使って窪みに水を貯めていった。
大した深さの堀にはならなかったが、今回の討伐目標であるツノネズミリスならば、この程度の深さでも問題無いだろうとなった。
崖の前に高台を作り、櫓とした事で、戦いの備えも完成した。
作戦の決行を直ぐにするか、翌日にするかとなったのだが、流石に直ぐに決行する事は、残っていた兵士から待ったが掛かった。
本隊に連絡を入れるので、待つように言われると、1人が馬を使って本隊に連絡に走る。
すると、アメルーミラが、昼食を取ってないことを告げる。
途中、作業の合間に軽食を取っていたので、全員が昼食を取ることを忘れていたのだ。
その提案を受けて、かなり遅くなってしまったが、全員で昼食を取る事にした。
魔法を使うということは、自分の中でイメージを膨らませる事になるので、脳への負担が大きい。
人の脳は、体重との重量比を考えると他の臓器以上にカロリーを必要とする。
魔法のように自分のイメージを膨らませた物を具現化させるためには、かなりのエネルギーが必要となると、ジューネスティーンは、考えていたため、こまめに栄養補給をした事で、食事を取ることを忘れてしまっていたのだ。




