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落とし穴の爆弾のディスカッション


 ツカ少佐は、シュレイノリアが、落とし穴の爆弾の実験をした方を、ジーッと、見ていた。


 ただ、その時に起こったことが、目に焼き付いて離れないといった様子で、爆発のあった方を見ていた。


 ジューネスティーンは、ツカ少佐に手を差し伸べる。


 ツカ少佐は、信じられないものを見たといった様子で、シュレイノリアが爆発を起こした穴を凝視していたが、目の前にジューネスティーンの手が差し伸べられると、ツカ少佐は、その手の持ち主を視線で追うようにジューネスティーンを見た。


「大丈夫ですか? ツカ少佐。」


 ジューネスティーンは、ツカ少佐が自分に視線を向けたところで声をかける。


「あっ、ああ、大丈夫だ。 少し驚いただけだ。」


 そう言って、差し出された手を握ると、ツカ少佐は立ち上がる。


「隊長が、爆発に驚いていたんじゃ、隊員に示しが付かないな。」


 ジューネスティーンは、シュレイノリアが、どんな魔法を使ったのかを、大凡気がついていたのだろう。


 ただ、今は、それを話すよりも、ツカ少佐の言葉に何かを返す必要がある。


「そうでしょうか? 」


 ジューネスティーンは、ツカ少佐の言葉に否定的な言葉をかけると、ツカ少佐は、ジューネスティーンが、何をいうのかといった顔をする。


「組織のトップが、恐怖を知らなければ、無謀な作戦も平気で命令を下します。 危険や危機に関して、はっきりと理解している組織のトップが居るなら、悲劇を生みません。 無謀な事を強いるのではなく、効率的な事を考えるのは、恐怖を知っている人だけです。」


 ツカ少佐は、ジューネスティーンが、若い割に深い意味の話をすると感心すると、そう言う考え方もあるのかと思ったようだ。


「そうだな。 私は、今、君達の実力の一部を見せてもらったのだな。 あんな、爆発を作れるとは思ってなかったよ。 あそこに落ちた魔物をあの爆発で倒そうというのか。 幾つもの穴に落として爆発されるなら、かなりの数を減らせそうだな。」


「いえ、罠であろうと、魔法であろうと、確実に全部を倒せるように考えてます。 確実に勝つ為、不測の事態で、失敗しましたとは言いたくありませんから、全ての戦術で全滅可能な方法を考えてます。」


 ツカ少佐は、それを聞いて、罠の穴と模型を見比べる。


「それだと、罠の穴の数が足りなくないか? 」


「ええ、1回なら、多分足りなくなるでしょう。 それに全ての罠に同じ数の魔物がハマるとは思えません。」


 その通りなのだ、たとえ相手が、魔物だったとしても、全て自分達の考えた通りにいくとは限らない。


 自分の都合の良いように考えていると、必ず、失敗する事を、ジューネスティーンもツカ少佐も、分かっているようだ。




 頭の中でイメージして考えても、具体的に図面化したり、サンプルを作成してみると、思わぬところに不具合があったりする。


 設計のイメージから、略図やポンチ絵を描いて各部の数字を計算で出す。


 イメージしたもの形から数字を入れて、それを図面化する。


 出来上がった図面から、サンプルを作成してみる。


 その工程ごとに、毎回不具合が発生し、それを対策する。


 サンプル作成後も、様々なテストをおこなって、問題があれば、さらに対策する。


 ジューネスティーンもだが、シュレイノリアも、そのため、実際に一つの爆弾を爆発させてみたのだ。


 そのために確認を怠らないようにしたので、爆破実験を行ったのだ。




 ツカ少佐も、落とし穴の問題点を指摘する。


「ああ、そんな風に、こっちの都合の良いように均等に数になるとは限らない。 これだと、中央部は、何度も通過することになるから、その穴を通過する可能性が高くなってしまうだろう。 それに、6万匹という数は、概略の数なのだよ。 実際にどれだけ居るのか、数えた訳じゃない。 と、言うか、数える術が無いのだよ。 だから、実際に戦ってみたら、10万匹を超えていましたなんて事も可能性は有るんだ。」


 ジューネスティーンは、やっぱりなといった表情をする。


 それに、細かな部分を指摘してくれる人がいると、問題点を見つけるのに都合が良い。


 色々と質問される中で、新たな発見がある。


 それは、視点の違いから、実際に仕事を目の前で行なっている者と、客観的に仕事をしているところを見ている者では、視点の違いから、自分には見えなかった部分も見えてくることがあるのだ。


「一応、倍の数になった時のことは考えております。 その為に、罠が対応できる魔物の数は同じだけの魔物に対応できるようにと思ってます。 それに、1つの穴で1回の爆発ではなく、数回は、可能なように仕掛けを作ってあります。」


(あれは、魔法による爆発だよな。 魔法によるとなったら、魔法紋を使って爆発させているのか。 そんな物を、予め用意してきたと言うのか。)


 ツカ少佐は、シュレイノリアが魔法紋んを魔法で描けることを知らないので、魔法紋を用意したのだろうと思ったようだ。


「おい、あんな爆発を起こさせたら、穴に配置した魔法紋なら、傷が入って使い物にならないだろう。」


 ツカ少佐も、先程のジューネスティーンと同じ質問をしてきた。


 ジューネスティーンは、誰もが同じ事を考えるのだと納得したような顔をする。


「穴の表面に魔法紋を描けば、一度の魔法でダメになってしまうでしょうけど、地中に配置したら、魔法紋は、最初の魔法で傷をつけられることもないでしょう。」


「そんな事が可能なのか? 」


「ええ、シュレがそう言ってましたから、対策は施してあると思います。 さっき、爆発の魔法紋は、簡単にして、それを制御する魔法紋を作ると言ってましたから、爆発の魔法は簡単な物だと思います。 あとは、そこに落ちた魔物の数が増えたら、順番に爆発させると言ってました。」


「そうなのか。」


 すると、残っていた兵士の1人が、ツカ少佐の所に来る。


「少佐、今の爆発について、駐留軍に報告に行った方が良いのでは無いでしょうか? 」


 部下の1人が気を利かせてツカ少佐に進言してきた。


「そうだな、少尉のいう通りだな。 すまないが、駐留軍もだが、もう一方にも連絡をしておいた方がいいな。」


 すると、もう1人の兵士の顔を確認する。


「伍長、駐留軍の方に今の爆発は、実験だから問題ないと報告に行ってくれ。」


 馬を見ていた伍長に報告を頼むと、進言してきた少尉に指示を出す。


「少尉は、例の3人に報告をしてきてくれ。」


「了解しました。」


 少尉は敬礼すると、自分の馬の方に行くと、手綱を外してどこかへ向かっていく。


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