ツノネズミリス討伐作戦の説明
馬を2頭ずつ持った、3人の兵士達を、アメルーミラの居る、自分達の地竜の馬車の方に誘導すると、馬用の水飲み場になりそうな、細長い水桶を二つ錬成魔法で作り、そこに水を貯める。
その先に馬留め用の棒を錬成して立てる。
馬を連れてきた兵士は、ジューネスティーンが錬成魔法で馬止めや水飲み場を作って、水まで貼ってしまったのを見て、呆気に取られている。
「馬はこちらを使って止めておいて下さい。 走らせてきたのですから、馬も水が飲みたいでしょう。 この水を飲ませてあげてください。」
「あ、ありがとうございます。」
兵士の1人が答えると、馬の手綱を錬成した柱に巻きつける。
それを見るとアメルーミラに指示を出す。
「ルーミラ、兵隊さん達の馬も世話してあげておいてくれ。 地竜も馬も草食だから、世話はそれほど変わらないから。」
「はい。」
アメルーミラは、オドオドしながら、水を飲み始めた馬の方に行く。
言われた通り、馬の世話をと思うと、少しコミュニケーションを取ろうと思ったようだ。
「兵隊さん、馬に飼馬は必要でしょうか? 」
ジューネスティーンは、兵士に聞く。
「ああ、朝には食べさせてあるから大丈夫だ。 ありがとうよ。」
兵士の1人が、ジューネスティーンが気を遣ってくれた事に感謝をしてくれた。
兵士の3人とジューネスティーンは、ツカ少佐の元に行く。
ツカ少佐は、ジューネスティーンの錬成魔法を行うところも水魔法で水をためるところも一通りの作業を見ていた。
そのジューネスティーンの魔法について、何も言う事なく、ただ見ていただけで、馬のことが終わると、兵士に指示を出した。
「お前達3人は、陣地の作業をするメンバーの方を手伝ってこい。 何か言われたら、その通りにするんだ。」
ジューネスティーンは、随分と丁寧な命令を出すと思ったようだ。
本来なら、冒険者であるジューネスティーン達を手伝うような事を兵士に指示を出すような隊長は居ないのだが、この、ツカ少佐は、違ったのだ。
「了解しました。」
馬を持っていた3人は、ツカ少佐に敬礼すると、作業の為に移動して行ったアンジュリーン達を追いかけていった。
ジュネースティーンが、ツカ少佐の元に、戻ってくるとツカ少佐が話しかけてきた。
「君は、錬成魔法も水魔法も使えるのか? 」
「ええ、魔法は一通り使えます。」
ツカ少佐は、一瞬、言葉に詰まるが、直ぐに答える。
「そうなのか。 すごいな。」
ツカ少佐は、何気に魔法を使ったジューネスティーンに驚いていた。
ただ、その驚きは、前情報があったから、それ程、大袈裟な驚きではなかったのだ。
「それじゃあ、自分達の作戦を説明しまします。」
3人の軍人は、その模型を覗き込んできたので、ジューネスティーンは、説明を始めた。
説明が終わると、作戦として成立している事を、ツカ少佐も一緒に居る兵士も思ったようだが、実行可能な作戦なのか、実力的に可能なのか気になったようだ。
「すまない。 作戦としては、非常に有効な作戦だと思う。 だが、そんな作戦を実行できるのか? 」
ツカ少佐は、疑問をそのままジューネスティーンにぶつけてきた。
「はい、それについては、ここに来る前、ツカラ高原で、個々の、魔力量も威力も上げております。 50〜100匹を一度に倒せる範囲攻撃魔法を、連続して200回は撃てます。」
(200回の範囲攻撃魔法か。 1人17・8回の連続攻撃か。 確かに一般的な魔導士の撃てる数より多いな。)
ツカ少佐は、少し考えると、直ぐに質問してきた。
「100匹を200回では、2万匹にしかならないが、残りの4万匹は、この落とし穴で対処するには、少し苦しくないか? 」
ジューネスティーンの説明にツカ少佐が気になる部分を聞いてきた。
「ああ、すみません。 連続して魔法を200回と言いましたが、1人200回なので、12人で2400回連続で撃てる事になりますから、単純に50匹ずつ倒したとして、12万匹に対応可能です。」
それを聞いたツカ少佐と2人の軍人の顔色が変わる。
「ちょっと、待て! お前達は、そんな化け物じみた回数の魔法を使えるというのか! 」
「いえ、その上限200回はユーリカリアさんの所のパーティーだけです。 本格的な訓練を始めて6日目ですから、その位に抑えないと、マナぎれを起こす可能性があるからです。 自分達のメンバーなら、少なくとも400回の範囲攻撃魔法でも平気だと思います。」
ツカ少佐は、言葉を失った。
後ろの2人の軍人も、流石にそんな化け物じみた回数の魔法を撃てる魔導士なんて聞いたことがないのだ。
大掛かりな魔法で有れば、その魔法を発動させるまでの詠唱時間が長くなる。
呪文詠唱の時間は、その範囲攻撃の大きさに比例して長くなるのだから、それをカバーする為に魔導士部隊の魔法を放つ時間を調整しつつ、連続で放ったようにするのだ。
1人で200回ともなれば、詠唱の時間を考えれば、丸一日かけて魔法を詠唱し続ける事になるのだ。
「では、丸一日かけて魔法を撃ち続けるのか? 」
ツカ少佐は、ジューネスティーンに問いかけた。
「いえ、そんなに時間は掛からないと思います。 第一、そんなに時間をかけるようだと、魔物の接近を許してしまいそうなので、そんなに時間をかけるつもりはありません。」
「いや、詠唱をするにしても大掛かりな範囲攻撃魔法なら、5分は詠唱に時間が必要だろう。」
青い顔をしているツカ少佐とは裏腹に、ジューネスティーンは、ケロッとした表情で答える。
「いえ、詠唱はしませんから、魔法と魔法の間隔は、10秒もかかりません。 ここのユーリカリアさんも雷魔法も、雷魔法を1回撃って、インターバルに1秒って所です。 2秒間隔で撃てますから、最短で400秒で作戦は終ります。 ああ、落とし穴に、かかる魔物の事を考えたら、そこを通過する時間を考えたら、インターバル時間は伸びる事になりますから、もう少し時間がかかるかもしれませんね。」
ツカ少佐は、信じられないという表情を見せている。
(ちょっと待て、もう少しって、罠が無くても400秒で片付く? 7分弱でケリを付けようっていうのか! 軍の魔導士部隊に頼んだら、1ヶ月はかかりそうな討伐を、こいつらは、数分で片付けようというのか。)
流石に、自分の知識の中の魔法と、かけ離れた話なので、ツカ少佐は、確認を取るように聞く。
「あのー、ジューネスティーン君。 本当にそんな事が可能なのかな。」
流石に、ツカ少佐は、話の信憑性を疑わざるを得ない。
そんな簡単に倒せるような魔物ではないだけでなく、ジューネスティーン達が使う魔法が、今までの常識を超えてしまっているのだ。
ツカ少佐もだが、後ろに居る2人の軍人も、流石に信じられないと思っているようだ。
「ああ、ツカ少佐、自分の名前は長いですから、ジュネスと略して下さって構いませんよ。 周りは全員、ジュネスと呼びますので、そう呼んでください。」
「ああ、ありがとう。 ジュネス君。」
ツカ少佐は、ジューネスティーンの話の真意を確認するためにユーリカリアに視線を向ける。




